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27 新しい仲間

27 新しい仲間


 バーリスは、笑顔で頭を下げると、二人を2階へと案内した。ウィリアムの執務室、寝室、そしてその隣にジュディスの寝室と執務室が並んでいる。二人の寝室の間は、ドアで行き来できる仕組みだ。廊下をはさんだ向かい側には客室と広く設えたベランダがあった。


「こちらでも植物を育てていただけます。もちろん、テーブルと椅子をご用意いたしますので、ゆっくり星空を眺めることもできますよ。そうそう、王宮の文官殿から、必要なら畑も用意する様に言われておりますが、どの辺りがよろしいでしょうか?」

「お、おい、畑仕事までするのか?」

「ええ、植物の育ち具合で染色にも影響が出るんです。おばあさまが差した刺繍絵がいつまでもお客様の心に残る輝きを保つためにも、出来ることはなんでもやってみたいんです。」


 瞳をキラキラさせて熱弁するジュディスを、とろけそうな笑顔で見つめて、ウィリアムははぁっとため息をこぼす。


「明日からまた王宮に通わないといけないのかと思うと、少し億劫だな。」

「ウィリアム様、お仕事を終えられたらウィリアム様の好きなお料理を作って待っています。どんな料理がお好きですか?」

「う~ん、そうだなぁ…。」


 真剣に考え込むウィリアムに、一つ咳払いをしてバーリスが忠告する。


「ウィリアム様、大変申し上げにくいのですが、ジュディス様はしばらく仕事と並行して王宮にてお勉強が待っております故、お手製のお料理はしばらく先になろうかと。」

「だそうだ。ジュディス嬢、両立は大変だろうが、頑張ってくれ。手料理は後々の楽しみにとっておく。」

「ふぅ、そうでした。新しい生活に慣れるまで、少しの間、待っていてくださいね。」


二人のやりとりを見届けて、バーリスが新たに雇い入れた使用人を紹介した。 ジュディスが先に依頼していたことだ。


「こちらは執事見習いのカールです。 若いですが、大変優秀な青年です。」

「不束者ですが、よろしくお願いします。」


 ジュディスと同世代のひょろりとした青年が、ぺこりと頭を下げた。


「カールには私から執事としての矜持をしっかりと叩きこみます。そしてこちらがチャド。ちょっと短気なところがありますが、彼の料理の腕は補償いたします。 そして助手のトムです。トムはチャドの息子です。」


 カールとは正反対に、鍛え上げられた体躯がコックっコートの上からでも分かる。以前も貴族の厨房を任されていたチャドは余裕の笑顔を見せて会釈した。


「よろしくお願いしまッス。さっき厨房をみせてもれーやしたが、最新の機器が揃ってますね。腕が鳴ります。せがれ共々よろしくお願いしまッス。」

「あの、私も時々は厨房を使わせてくださいね。」


 ジュディスが言うと、チャドは目を見開いて驚いた。


「ええ!奥様が料理をされるんですかい?」

「私は、一般人ですから、少しはお料理もいたします。その時は、ご指導くださいね。」

「ふ~ん、まぁ、いいっスよ。」


 胡散臭そうな眼付で返事をする父親を、トムがハラハラしながら見つめている。きっと以前からこういうやり取りがあって、何かしらのトラブルに発展したのだろう。ジュディスはトムに優しい視線を送って、大丈夫だと伝えてみた。


「コホン。それでは、こちらの侍女も紹介しましょう。こちらが侍女のエミー、ジャネット、モニカです。今回の募集では貴族令嬢の応募も多数ありましたが、ちゃんと働いてくれる人物を選ぶことにいたしました。」

「エミーです。貴族のお屋敷で働けるなんて夢見たいです。一生懸命頑張ります!」

「ジャ、ジャネットです。よろしく…。」

「ジャネットさん、最後まできちんとお話しないと奥様に聞こえませんよ。失礼いたしました。私は、モニカと申します。以前はとある伯爵家にお仕えしておりましたの。」

「ありがとうございます。皆さん、私は仕事をしながら王宮にも通うことになりましたので、留守がちになってしまいます。元々一般人ですから、いたらないところもあるかもしれませんが、よろしくお願いします。」

 

 ジュディスは頭を下げようとして、寸でのところで思いとどまった。バーリスが満足げに頷いている。


「そしてご存知かもしれませんが、シェリダン家の侍女ダーラが指導役としてしばらくこちらに伺います。」

「ジュディス様、お久しぶりです。どうぞ、よろしくお願いします。ウィリアム様の情報などいろいろお手伝いできるかと存じます。」

「ダーラ!それはどういうことだ?」


 ウィリアムが焦った様子で口をはさむが、バーリスとダーラは楽し気に微笑んでいるだけだ。


「あら。幼いころからお傍仕えしておりますが、ウィリアム様は本心を伝えるのがほんとーに苦手でいらっしゃいますでしょ?ジュディス様がその表情を読み解けるようになるまでのお手伝いですわ。」

「ダーラさんがいてくださったら心強いです。」


 笑顔の女性たちの前では、反論もできないまま、そっぽを向くウィリアムだった。


「と、とにかく。みんなよろしく頼む。俺は、騎士爵だが、ジュディス嬢は染色爵という工芸爵をもっている。気さくに話してくれるが、そのことは忘れないように。バーリス、もういいだろう?ジュディス嬢が疲れてしまう。」

「これはこれは、失礼いたしました。では、お茶の準備を。」


 バーリスの目配せで、使用人たちはそれぞれの持ち場へと移動し、ウィリアムとジュディスはウィリアムの執務室へと向かった。


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