34.デート・ア・トラクト延長戦 さあ、私たちの本音を始めましょう編
33話の続きです!
メインの2人を差し置いて西村だ。今俺は親友に任された後処理をしている。まぁ、いわゆる学校へバレないようにこの阿呆に制裁を加えるというわけだ。
「そういうことで、馬場。お前とその取り巻き共を『乙女神に落とされ隊』第2条により会員から外す。」
俺の目の前には制裁対象がいる。名前は馬場鹿江。俺ら西宮家すら欺くレベルの偽装をやってのけ、今日始めてその正体を明かした。その証拠に、隣にいる隠密担当の七番隊隊長も苦虫をかみつぶしたような顔をしている。
「...お前。まさか俺の素性を。」
「悔しいですが、貴様のプロフィール改竄、偽装、変装は完璧でした。この私でさえ欺くのですから。」
「しかしどうにも引っかかるんだよなぁ。俺達を欺くレベルに達するには、少なくともお前だけじゃ実力不足だ。...協力者がいるな?なぁ、ここで全部、吐いちまえよ!」
「それとも、あちらにいるお嬢のまな板の上にでも乗りましょうか?すぐに全てを話す気になりますがね。」
そんな西宮様はめぐみん先生に止められていた。凄ぇ...。真剣を振るっている相手に手刀だけで対応してやがる。
「京宮退いて。あの狐、56すのができひん!」
「待て待て待て。一姫。お前は仮にもここの生徒だろ?西宮家ならいざ知らず、ここで刀傷沙汰なんて起こしたら一発で退学だぞ。」
「構しまへん。退学するんやったら、桂馬はんを引き連れて2人だけで別の高校に転校するさかい。」
「やっぱりお前は澪五姫の娘だ。自らの身を投げ打ってでも尽くそうとするところが、な!」
トンッ!
「~~っ!!」
遂にめぐみん先生は手刀で峰打ちすることで、西宮様の意識を刈り取った。こんなことが許されるのは多分、当主かめぐみん先生か時さんか心愛さん。後は、親友くらいだろうな。
「一姫は取りあえず私が送る。南村、北七。コイツのことは任せたぞ。」
「「はい。」」
◇◇◇
僕は現在、救出したばかりの愛莉の肩を抱いてあの公園へと彼女を連れ出していた。彼女をベンチに座らせ、その隣で肩を抱き、しっかりと体の震えを沈めていく。
「...すまなかった。結果は違えど、見たくないものを見させてしまった。」
「うん。ちゃんと反省して。責任取って。」
公園には人気がない。それもそうだ。彼女が歩けるようになるまで1時間。この公園に辿り着くまでにさらに1時間は経過したから、時刻は既に午後9時くらいになっている。そんな公園の静けさが普段からつけている『落と女神』という鎧を脱ぎ捨てているのか、今の彼女は直情的になっていた。多分、これこそが本当の早乙女愛莉という人物だろうな。
だからこそ、未だに『落とす』という文字が心にこびりついていることも事実だろう。そうでなければ、今の彼女の姿を学校でもお目にかかれる筈だ。
やはり、彼女は生まれつきの『落と女神』ではない。普通に暮らして普通に恋をする人間の一人だ。本当は勉強の妨げになるから関わらないで欲しいと煙たがっている筈なのに、何故か彼女を一番理解している南海高校の生徒になりつつある。親衛隊やら周りの男共はそういう所に一欠片も気づくことがないし、西村でさえ、ここまでの彼女の本性を見たことはないだろうからな。
...いや、あの時のことを忘れてしまった時点で、僕も同じような部類だな。
「責任については承知しかねるが、反省はする。私も今日、君を思い出すことが出来たよ。忘れていてすまない。いや、申し訳ない。...ショックだったんだ、あの時の大怪我が。記憶を忘れないと耐えられないくらいに痛かったんだ...。あの傷は...。」
ああ。顔に影がさしていくのが分かる。なりふり構わずに助けたこともあるが、一番の原因はやっぱり自己防衛だったんだろうな。傷の痛みもさることながら、両親の顔を悲しみにさせた時のショックも心に重くのしかかったことでこの忘却は起こった。
つまりは逃げてしまったんだ...苦しい道から楽な道へと。そんな怠情な行いが救出した者達の感謝の念を踏みにじることになってしまった。それも一度だけじゃなく...。
「なにが『黄金の黒騎士』なものか。結局私は、最後の最後に守ったものを手放す愚者だ。例え騎士であっても、神であっても、人の身であるうちは人でしかないんだよ。」
そんな僕の懺悔に呼応して、冷たい風が吹いていく。それが背中の傷にピリッと痛みを走らせた。それにいつの間にか目の前が...。目の前が...潤いに満ちていく。
そんな僕を後ろから抱き締める者がいた。まるで背中の傷を癒やすように。そんな人物なんて一人しかいない。
「...それを言うんだったら私も愚者だよ。救出した後に気を振り絞ってでもあなたが伝えた言葉を、『あなたに遭いたい』という欲望で裏切ったんだから。」
「早乙女...。」
「...うん、やっぱり騎士様は私のことをそう呼ばなきゃ。私につく筈だった一生消えない傷を私の代わりに負った騎士様は勇敢でなきゃ。」
抱き締める力は強くなり、それに比例するように目の前が揺らいでいく。もう耐えることは出来ない。心の中のモヤモヤが雫として現れていく。
「すまない。早乙女は今の態勢をキープしてくれ。」
僕は声を漏らさないように、表情を見せないように、涙を流した。騎士様として、八番隊隊長として、一人の男として、してはならないことなのに...。
◇◇◇
僕の涙が収まって、僕達2人は重要なことに気づいた。
「ねぇ...今って何時?」
「...午後10時だな。」
「「...。」」
「「門限過ぎちゃったァァァ!!!」」
そう。僕達は学生寮で寝泊まりしている学生の身分。つまり、門限というタイムリミットが存在し、それまでに学生寮の門を潜らないとその日は一日中外で野宿する羽目になるのだ。
とどのつまり、度重なる状態異常によって、僕達の寝床はボドボドになったのだ。
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