33.デート・ア・トラクト延長戦 さあ、私たちの大喝を始めましょう編
デート・ア・トラクト延長戦
33話:前編
34話:中編
35話:後編
みたいになります。延長戦は少しギャグが少なくなります...。そのつもりで今日の更新分を読んで下さい。
そして本話は32話の続きです!
現在、僕の目の前には愛莉の知り合い?が立ちはだかっていた。
「な...なんで。あの時、騎士様によって」
「ああ、壊滅したんだ、よォ!俺が長年積み上げてきたものを嵐のようにコイツが崩し去りやがったんだ。それ以降、俺は『北中の鬼』であるお前に復讐するためにサツの元から脱走し、こうしてお前のいる高校まで嗅ぎつけたんだ。」
「んー?えっとぉ?」
す、すまぬ。話が見えてこないでござる。
「へへ、西村には感謝してもしきれないぜ。今こうして、俺の復讐の舞台を整えてくれたんだからさ。そしてお前に復讐した後で今度こそ、女神様をたっぷりと堪能してやるんだ。」
「ヒ...。」
舐め回すような視線に愛莉が怯える。
ここまで一旦、情報を整理しよう。
まず目の前のオレオレ詐欺男は前まで存在していた『八苦』の組長で、名前は馬場鹿江。なんか『馬鹿』みたいな名前だな。
次に愛莉の知り合いかと最初は思ったが、それだけでなく僕とも知り合いということが判明。僕はもうド忘れしているし、なんだか親友的な意味ではない方の知り合いらしいけれど。
そして最後。これが一番重要なことだ。
学校のセキュリティなんとかしろ。なんで警察署から脱走した奴を入学させているんだよ!?あの学校の教師陣の目は節穴なのか?それとも面接試験の時、偶々寝ぼけていた奴らか無知な奴らで構成されていたのか?
兎にも角にも、学校が脱走犯を入学させていたことが世間にバレたらそれこそ、南海高校の評判が間見ってしまう。勉強の場が本当になくなってしまう。
...西村だな。そもそもコイツが『乙女神に落とされ隊』の属している時点で上司は西村だ。それに、世間の行き届かない場所で処理してくれるのは西宮家しかいない。そうだな。西宮家に後処理は任せよう、そうしよう。
それはそれとして...。
「やっぱりすまない。私と君はいつ会ったのでしょうか?」
「えええ...。」
なんで相手じゃなくて愛莉が引くんだ!?いや、理由は分かる。十中八九、彼女にとって最悪かつ運命的な一大事を僕がド忘れしているからだろうな。うん、キレない範囲に留まってくれているだけでもありがたい。
「...そうかよ。そんなに2年前。いや、正確には1年と10ヶ月前のあれも、お前にとってはカスみたいな戦いだったか?だったら、この武器見ても同じことが言えるのかぁ!?」
そんな女神様とは違って痺れを切らした馬場が懐からなにかの武器を取り出した。その武器は8の字が特徴だった。コンセントを繋げられる携帯用バッテリーに繋がれたそれは、オレンジ色の8を空気中で描き、触れた床からジュッーと焦げたような音を鳴らしている。
僕はそれを見た瞬間、背中にズキズキした疼きが走り出すのを感じた。愛莉もそれを見ないように手で顔を隠して更に震えが増している。だが、僕はそれどころではなかった。
背中の疼きが脳へと達し、忘れていた記憶。いや、自己防衛で封じていた記憶というものを呼び覚ました。
そうだ。思い出した。僕は中学三年生の8月に、そこにいる早乙女愛莉を助けたことがある。あの馬場はその時に対峙した暴力団の頭で、幹部全員の手にはあの武器を持っていた。そして背中についた傷は、愛莉を庇った際に出来た、
『8』の字の火傷の跡。一生消えることのない傷と医者に告げられた時の親の顔は、今でも忘れられない。
「ヘヘヘ。言葉も出ないかぁ!そうだよなぁ!お前の背中にはそこの女神様を庇ったためについた傷があるんだよなぁ!?」
「...やめて。」
「サンタクロース色に染めた背中を女神様に向けながらお前は立ち上がったんだよなぁ!?」
「...やめて。」
「挙げ句の果てには苦痛の表情を浮かべながらも、俺に最後の一撃を喰らわたんだよなぁ!?」
「やめてぇぇぇぇ。」
馬場の口が動く度に、愛莉は過去を蘇らせているのか。頭を抱えて絶叫をした。正直に言って、これは僕でさえも見ていられない光景だ。
「...言い過ぎだ。カラス男!」主人公にあるまじき底冷えする程の低い声
「あぁ!?」
僕は肩に掛けていた羽織を愛莉にかけて相手に向き直る。
怒りの気持ちが上がっていくのが自分でも分かる。背中の傷のせいで僕は地獄のような病院生活を送る羽目になったんだ。風呂は1ヶ月は入れないのに、夏のせいで汗臭くなるし、看護師からは露骨に鼻をつまむ素振りをしやがったんだぞ。ベッドで寝ようにも仰向けで思いっきり寝られないし、塗り薬はガチで電気を流されたかのような痛みだったんだぞ。
親にも心配をかけた自分にも改めて腹が立つ。いつも恋愛ドロップスのような親の顔を、よりにもよって息子による悲歌でグシャグシャにしなければならないのか...。
「...お前は真の痛みが何か分かるか?」
「ああ、充分に分かるぜ。他ならぬお前がそれを与えたんだからよ。」
馬場は投げ縄式ヒーターを改良したとされる武器で突っ込んでくる。
「物理的な痛みよりも居場所を奪われるのはその何倍も辛い。私も同意見だ。しかしそれをも超える痛みもまた存在する!!!」
僕はそれに合わせて、左手にここまで溜め込んだ怒りの気持ちを赤いオーラとして放出する。
「な?何だ?その技は?あの時はそんなものを出す素振りなんて...。」
それはそうだ。あの時は怒りの気持ちは湧いていなかったからな。当然、この赤いオーラの気弾も発生できない。だからこそ、今のこの技を放つことが出来る。その名は...。
「附子大喝破ァ!!」
「ぐごぉぉおおおお!?」
気弾は1つの砲弾へと変え、馬場を吹き飛ばした。そう、トイレの中で西村が言いたかったこと。それは...。
「真に痛いのは、一度治りかけた傷口を再び抉られてしまう時でしょうが!!!」
愛莉が現在進行形で受けている状態異常がこの中で一番の大怪我であることだ。彼女は羽織を手で掴み、その端を涙で濡らしている。これは早急に解除しなければマズい病だ。何処かに回復アイテムとか回復呪文の綴られたロールとかないだろうか...。
「ハァ...ハァ...。」
いや、それよりも効果的な治療法がある。そう、先月の西宮家や今日の公園で愛莉が僕に実践したあの方法である。
ダキッ!
「あ...。」
無言の抱き締め。どうやらこれは男からでも効果があり、目を皿にしつつも徐々に震えが止んでいっている。涙はもう流しきったみたいだな。自分を守るようにして張りつめた氷の網が次第に氷解し、内へと僕の温かさが浸透していく。そんな感じを愛莉は味わっているのだろうか?
「も、もっと、やって...。」
「そこまで言う余裕があるなら解除しますよ?」
「やだ...。」
「それにあなたは午後7時からプラネタリウムを彼と見て回る約束があるでしょう...。こうしていつまでも抱き合っている暇があなたにあるのですか?この場合、浮気になってしまいますよ?」
「え?どうしてそれを知っているの!?え?え?え?」
「なーんて冗談だよ!ここまで動揺できればもう解除しても大丈夫ですね!」
「い、意地悪。けちんぼ。守銭奴。」
うん。これはもう状態異常が解除されていますな。だってさっきから抱き締め返しているんですもん。それにこれでカフェと公園の借りは返しきっただろう。こんな顔なんて落とし神としてしてはいけないものだろうしな...。
後は愛莉を送り届ければ万事解決。晴れて王様から真に解放されるだろう。
「フ、ハハ。またもや背を向けやがって。」
ズリズリ!
「い...。」
この部屋を出ようとした僕達の後ろから、何かを引きずる音が聞こえる。『嫌』と叫ぼうとする愛莉の肩を僕は左手で抱く。
てめぇ、女の傷を二度も抉ろうとすんなよ!
「ハハハ。せめてお前だけでも病院にもう一度送ってやるぜぇ!」
オレンジ色の8の字が僕の背中に向かって振りかぶろうとする。残念だが、お前にはもうターンはない!!
「1つの失敗は橋がかり。されど省みぬは崩レ落ち。」
あの時、『黄金の黒騎士』からサヨナラするため、勉強以外で使わないと決めた利き腕である右手に黄金のオーラを纏う。それは1匹の龍を形作り、
「龍巻頂天破ァァァ!」
馬場を右アッパーで発生させた登り龍で吹き飛ばした。馬場による絶叫とともに、次の一言を僕は添えた。
「それを学ばぬ者こそ真なる愚か者の成れの果て。」
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