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第二十四話 消えゆく魂


「ウオォォォォォォォォーーーン!!!」



 僕とリースさんはサイクロプスがいる禁断の地にやって来た。

 一つ目、頭にツノ、緑色の巨体。ゼクトリアース物語に登場する特徴と一致してる……。

 流石の僕も圧巻だった。魔神ビブレイスを遥かに凌ぐ大きさ。凄い……。



「ゼクトリアース! 本当にあんた一人でやれるのか? 私は見ておけと? 冗談なんて言ってる場合じゃないぞ!」



 あ、僕が余りにも何もリアクションしなかったから、怖くて動けなくなったと思ったんだな。



「いえ、大丈夫ですよ! 一人でやります!」



 分析士で色々と調べたし、問題なく倒せるよ。



「グオォォ!!」



 サイクロプスの巨体が今までそこに立っていたのに、いきなり消えたと思ったら頭上にいた。

 あんなに大きな体なのに、動くスピードは相当速い。

 太陽を隠し、大きな影が隕石の様に迫ってくる。



 ズッシィィィィィィィィィィィィン!!!



「ゼクトリアース!!」



 リースさん、僕は大丈夫。ギリギリのところでちゃんと回避した。行動は全部把握済みだから、無駄のない動きが出来る。この時代の戦士はまだ魔力自体が扱えないみたいだから、サイクロプスの様な魔力を発揮できる魔物には到底敵わない。


 勇者ゼクトリアースは、光を身に纏ってサイクロプスを倒す。

 お伽話だとそう語られているんだけど、本当にお伽話の通りに進んでるんだな。



「オォォォーバァァァァードライブ!!!」



 ギュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーン!!!


 全身が光のオーラに包まれ今所有してる魔法剣士、霊神術士、分析士、次元術士のシードが光の塊となって僕の周りをグルグルと回り出した。



「はあぁぁ〜!! 直ぐに終わらせる!」



 魔力で作った剣を構え、サイクロプスを見据える。

 魔法剣士の代表的スキルは魔法剣。それは剣に属性魔力を乗せて放つ剣技。分析で弱点は火属性だと分かってる。

 レインベルが育ててくれたおかげで、魔法剣士、かなり強くなってるね。

 次元術と魔法剣の組み合わせでやってみるか。

 オーバードライブ状態になると、今所有してる全てのシードを全部宿す事が出来るんだ。


 通常は魔法剣士を宿してると他のシードの能力は使えない。一つしか宿せないから付け替える必要がある。

 だけど、オーバードライブ状態になれば魔法剣を繰り出す準備をしつつ、技の発動と共に次元術で相手の懐まで瞬間移動し、ぶっ放す。みたいな事が出来る。



「神速熱焦斬!!」



 ゴオォォォォォォォォォォォォーー!!!

 レベルが高い者同士の戦いにおいて重要になってくるのは力ではなく、スピードだ。どんなに強烈な一撃も命中しなければ意味がないし、逆にカウンターを食らって形勢逆転される事にも繋がる。


 僕は次元術で瞬間移動し背後から、巨体の背中に向けて魔法剣を放つ。

 その後、流れる様に霊神術で追撃を狙う。



氷姫零凍結ラスディメルダ!!」



 空中に氷の渦が発生して、どんどんと氷の塊が大きくなって行き、やがてそれは氷で出来た人魚となった。

 氷の人魚がサイクロプスの周りをグルグル泳ぐと、どんどんと巨体の動きが鈍くなり、人魚がパッと消えた瞬間サイクロプスの体は氷漬けになっていた。


 それが確認出来たと同時に大きな氷の塊と化した一つ目は、バラバラに砕け散ったのだった。


 こんな風に、通常の状態だと詠唱が必要な霊神術も魔法剣を繰り出している裏で、詠唱しておく事が出来る。


 シードのステータスが全部上乗せされるだけじゃなく、行動中に別の行動を取る事が出来るのも、オーバードライブの強みなんだよな。

 だから導師の奥義と僕は呼んでる。



 今回の戦闘にかかった時間は、大体三分……かな。



「な……なにを……したんだ…………」



 リースさんは僕に向かってそう言うんだけど、目が合わない。

 僕を通り越し、バラバラになったサイクロプスを見ている。

 そうだよな。魔力と言う概念すらまだ知らないんだもんな。逆の立場でもそうなると思う。

 さあ、これで一応リースさん達を救った事になるし、一旦村に戻ってこの辺の事を聞いてみよう。


 リースさんにそう言って、正に一歩踏み出そうとした時だった。



 ドクン。



「うっ!?」



 な、なんだ……。するとまたドクンと、体の内側から振動を感じるんだ。

 そして三度目の振動で僕は地面に立膝をついてしまう。



「ど、どうした?」


「……分からない。…………うぐ!?」



 その振動は暫く続いたんだけど、分析士を使って自分自身を調べてみたんだ。

 エネルギーの塊が、一つ、また一つと消滅してると言う事が分かった。


 それはゼーロットから取り込んだ魂達だったんだ。



「何で急に魂が……?」


「魂? ゼクトリアース、どうしたんだ? 何処か痛むのか?」


「いえ…………大丈夫です」



 そう言うしかない。申し訳ないけどリースさんに理解出来る話じゃないと思うし、益々混乱するだけだと思うから。

 今も次々と魂が消滅していってる……せっかく救ったのにこれじゃ何の意味も……。


 どうすればいいんだ。全員をサモンシードで召喚で外に出してあげれば解決するとは思うけど、流石にこれ程多くのシードを持っていない。


 前にフュリンを召喚したり、僕自身を召喚するタイプのサモンシードは、シードに意識を移すからシードの数が召喚出来る上限となる。


 ごめん。とりあえず僕はネファーリア、リラ、レインベルをサモンシードで召喚出来ないか試みる。

 魂であるなら意識体となってるはずなんだ。だからフュリンを召喚したみたいに、あの要領でやれば……。



「サモンシード!」



 パァーッと光が飛び散ると、三人の姿が現れた。

 よかった……彼女達は無事だったんだ。分かってる……喜んでいる暇はないんだ。でも僕は喜んだ。


 ごめん。ごめん。と何度も消えていった竜族達に心の中で何度も謝りながら。



「みんな無事でよかった……」


「アスト……」



 ネファーリアが目をうるうると今にも泣きそうになってるが、リラは声を出して豪快に泣いてた。

 それにつられて、レインベルも涙をポロッと零す。


 その三人の表情を見た僕自身も、泣きそうになる。


 そしてまたここで実感してしまった事があった。



〝勇者ゼクトリアースは、サイクロプスとの戦いに勝利するが呪いにかけられてしまった。

 勇者の力が使えないと魔物達とまともに戦えない。そう思ったゼクトリアースは、何処からか三人のヴァルキリーを呼び出した〟



 ゼクトリアース物語に描かれる内容に酷似していた。

 三人のヴァルキリーは、ネファーリア達の事なのか?



「じゃ、じゃあ……ゼクトリアースは……僕自身なのか!?」



 待てよ……もし、ゼクトリアース物語が事実を書いたものなら、この先の事が読めるぞ。

 そう思って僕は、周りの状況を気にせずに必死になって物語を思い出してみる。


 リースさん、ごめん。もうちょっとで答えが分かりそうなんだ。もう少しだけ待っていてくれ。


 サイクロプスを倒したゼクトリアースは呪いにかけられ、ヴァルキリー達を呼び出す。

 魂の消滅、つまりこれが呪いなんだ。呪いを解く方法は…………。



「……なんで? 何で思い出せないんだ……」



 小さな頃から何度も何度も読んできた世界中で有名なお伽話。それは大人になっても忘れはしない。

 だけど、今は何も思い出せないんだ。

 くそ、なんで覚えてないんだよ。


 すると、ネファーリアが僕に近づいて優しく微笑んだ。

 


「竜族の魂を救う方法があります!」


「ほ、本当かい?」



 魂となっていたネファーリア達だったけど、これまでの事は全部見ていたらしい。

 だから竜族の魂の事も知ってたし、魂が消滅していってるのも知っていたんだ。



「アスト、魔界に行きましょう。魔界が今どの時代なのか分かりません。移動したらまた別の時間軸に飛ばされるかも知れませんし……。ただ、魂の消滅を抑えるには、器があれば良いのです。確かわたくしの領域にあったはずです」


「よし、早速行ってその器に魂を移そう!」


「ゼクトリアース!」



 リースさんが僕を呼んだ。



「リースさん、僕は行かなければならない所があります」


「分かってる。不思議な力の事、色々聞いてみたかったが、サイクロプスの件、本当に感謝する。これで村の人間達は怯えずに済むよ。ありがとう!」



 リースさんに手で合図を送ったあと、ネファーリア、リラ、レインベルの顔を一人一人見ていく。

 ゼーロットに食べられた時、もう絶対にこうして顔を見る事はないと絶望した。心が虚無となっていたあの時の感情は思い出したくないくらい辛かった。


 みんな本当に無事で良かった。



「さあ、みんな! 魔界へ行こう!」



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