第二十話 ふたり!? -Furin Side-
何回ループしても、エルフに進化する事が出来へんねんけど……。
まず、進化プロセス完了するまでにヴェルグラに見つかって殺される。
運良く進化プロセスが完了しても、エルフに目覚める事はなく殺される。
もしかして、適合率八十六パーセントでも進化出来へんって事?
それとループは千二百を超えて、もう途中から数えるのをやめた。
ループする事が当たり前になり過ぎて、いつ時間が巻き戻るのか、どんな状況になったら巻き戻るのかも分かってきたんよ。
時間はきっちり四十三分。これを超えると時間が巻き戻る。
あと、決まった行動を取らんと巻き戻るし、あたいやタニスが死んでも巻き戻る。
せやから四十三分以内に、決まった行動を取ってエルフに覚醒してヴェルグラを倒さなあかんて事。
それを延々と繰り返してんねんけど……。
「フュリン、諦めずにやりましょうよ! でないと私達ずっとこのままなのよ!?」
《だってもう……色んな作戦考えたやん……そのどれも無理やったし、もうパターンも全部やり尽くした気がすんねんな》
って言いながらも、あたいは結局タニスと研究所へ向かうんよな。
正直もうこのループうんざりしてんねん……。
でも、ずっとこの先もループ生活続けんのはもっと嫌や。
さ、気を取り直して進化しに大部屋へ行こー。
部屋の真ん中にある床に魔力を送ったら、あたいの名前が書いてある進化モデルがスポットライトを浴びるんやけど、この進化モデルの人形の中に入って進化プロセスを進めていくねん。
タニスも一応進化プロセスのやつやってみてんけど、開始した瞬間に存在が消えてなくなって、時間が巻き戻った。
あたいがやるしかないねん。
とは言うても、八十六パーセントの適合率を持つあたいは消滅せーへんのかって言うとそうやない。
千二百回以上ループしてるけど、その内の百回ぐらいは不適合言われて消滅してるからな。
せやから、あたいだって確実に適合出来るって訳やないねん。
《ん? タニスちょっと見てこれ》
もう何回も何回もやってるから、ずっと確認してへんかったけど、たまたま今回光る窓を呼び出してあたいの適合率を確認したんやけど、数値変わってんねん。
「九十二パーセント……。適合率上がってるじゃない」
《それもおかしいけど、あたいらずっとループしてるんやで? 今回もあたいの記憶以外は全部リセットされてるはずやんか》
それやのに、適合率が変わってるってどう言う事……?
適合率なんて変わらんと思っとったし、気にせんかったからもしかしたら、毎回適合率って変わってたんかな。
でもタニスは変わらずゼロやしな。
やっぱ今回のループは今までのとはまた違うルートって事なんかも。
千何百回と繰り返してやっと〝当たり〟が来たんや。
そんな事をタニスと話してたらやる気が漲って来たわ。
さあ残り三十分や。あたいは進化出来るんやろか。
「ねぇフュリン!! ちょっと来て!!」
《なんやタニス、そんな深刻そうな声で言うて〜。ちょっとの事でもうあたいは驚かんねんでぇ〜。まあそらあんたもやろうけどな。ほんで、また何か見つけたん?》
まーたそんな悲鳴みたいな声出して〜あたいは騙されへんで。それにここにはあたいらしかおらんし、静かやねんから大声出さんでも聞こえるのに。
タニスのその声にビクッとしてそれだけで、も〜疲れたわ。ちょっとムカッとしながらタニスに近づいて行ってんけど、
ずっと下を見ながら何かを指差してるねん。
《なに? 床になんか文字が出て来たん?》
タニスが指差す床の前まで行くと、人がうつ伏せで倒れてんねん。
いや、人って言うか……え? なんで?
《フェアリーやん!? なんで!? これ誰や!?》
あたいは徐ろにそのフェアリーの体をひっくり返して起こしてみた。
その顔を見てあたいは言葉を失ってしまった……。
「どう見ても倒れてるのフュリンよね? 今回のループ、やっぱり今までとは何か違うんだわ……」
頭がパニックになった。こんなの予想外過ぎるやろ……。
時間が巻き戻るなんて非現実な事を繰り返して、もうビックリせーへんやろ思ってたけど、何であたいが?
まさか他の時間軸のあたいなんやろか? でもそれやと今まで千何百回とループを繰り返して来たのに、一回も遭遇せーへんかったのはおかしいし……。
体も温もりを感じるし生きてる。せやから今気を失ってる状態になってるんやろ。
いずれにしても、今この場に見た目そっくりなあたいが二人存在してるって言う事。
ループまでの時間残り三十分を切ってる。
残り二十三分を切るとヴェルグラが現れるんやけど、七分の間に何とかもう一人のあたいに色々聞いてみたい。
ヴェルグラがやって来たら殺されるしかあらへんからな。
他に何か今までのループと変化がないかあたいらはこの大部屋を調べてみたけど、特に何か気になるもんは見つからんかった。
ほんでまた二人で倒れてるフュリンの所に戻ってんけど、丁度そのぐらいの時にフュリンの意識が戻りそうやってん。
なんか知らんけど、めちゃ緊張してるわあたい……。
あたいがもう一人……まず第一声どんな事話すんやろ。
声も喋り方も一緒なんよな?
「う……ぅぅ」
「フュ、フュリン! 目が開いたわ!」
《お、おはよーさん! え、えとぉ……あた……ぃ?》
「……いつつ……。あたいが……って事は、無事成功したんやな」
《無事成功って……何がや?》
「後でちゃんと説明するから、次のループまであと何分か分かるか? 今何ループ目や?」
《そんなんもう数えてへんわ……確か、せん……》
「千九百二回目よ。次のループまで、あと二十六分ってとこかしらね」
なんやタニス、ちゃんと数えとったんか。
「三分ぐらいでヴェルグラが来るな……。よっしゃ! 急いで伝えるで! この世界のあたい! よう聞いときや!」
《…………な、なあタニス……あたいっていつもこんな偉そうな感じなん……?》
「何よ今更」
《あたいは今更ちゃうねん!》
「ええから聞け! 時間ないねん! エルフの進化を成功させる為にあたいは命を懸けてここに来てんねんで!」
真剣に訴えかける目の前のあたいの表情を見て、只事じゃ無い事は分かった。
「今からあたいの体をあんたに託す。今のあんたは意識体で肉体がない状態や。この体をあんたに渡したら、エルフの進化に耐えられる体となって、進化する事が出来んねん」
タニスをちらっと見たもう一人のあたい。
「タニスの肉体は不適合で、適合してんのはあんたの意識体。ただ意識体のまんまやと不適合になって消滅するから、あんたはタニスの体を借りてやってたはずや。けど、不適合やから何回進化プロセスを完了しても、なんも起こらんかったやろ? あれはそう言う事やねん」
《それで進化出来へんかったん? 確かにあたいは今意識体やけど、あたいに肉体を渡すって、そんなんしたらあんたどうなんの? あんたは意識体になるって事?》
「あたいの意識は消える。言うとくけど、同情とかそんなん余計な事考えんでええからな。覚悟を決めてここに今おるんやから。時間がないからこれで説明終わり! 準備するで」
もう一人のあたいは、目を閉じてあたいに両手を差し出した。
いくら同じあたいであったとしても、意識が消えるって言われてそんな簡単に受け入れられる訳ないやんか。
あたいは無言のまま、その手をずっと見つめたまま立ち尽くしてたら〝しっかりしろ!〟と怒鳴られてポカっと頭を殴られた。
「次はもうないんやで!! あんたがエルフになればこのループから抜け出せるし、ヴェルグラと戦える!! あんたも覚悟を決めるんやで!! もう一人のあたい!!」
〝次はもうない〟この言葉がドスッとあたいの心の中に突き刺さった。
確かに、今回のループは今までと何かが違ってるのは感じる。
次のループでもう一人のあたいが、ここに倒れてる可能性は限りなく低いと思った。
なんとなくやけど、もう一人のあたいの言ってる意味を理解出来たあたいは、今度は迷わず両手を掴んだ。
「頼むで……もう一人のあたい……!!」
光がパアッと強くなった瞬間、次々と記憶が蘇ってくる。
それはもう一人のあたいが経験した記憶やった。
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