第十八話 世界七大国サミット -Julius Side-
ゼノス、クウォン、ヴァール、そしてリミア。
アストの力を無力化し、今のこいつらはただの人間だ。
俺の騎士達にも敵わない。くっくっく。
だが力が無くなったからと言って、こいつらが簡単に屈する事はない。
レベルゼロになったと言っても、俺といた時とまるっきり違い、それでも命を懸けて戦いを挑んで来やがる。
今のゼノス達は、俺の騎士よりも遥かに弱い。
闇雲に騎士達を攻撃しているのが俺にも分かるぐらい、レベルゼロのこいつらは弱かった。
さあ、そろそろ仕上げと行こうか。こいつらをただ力で捩じ伏せる為にここに来た訳じゃないんだ。
「くそぉ……! 全然効いちゃいねぇ!」
「魔力が使えない以上、魔術も使えないですし……歯が立ちませんねぇ」
「ぬぅ……! あの剣を何とか出来れば……或いは……」
「ダメ……アストのシードだけじゃなく、自力で身につけた治癒術も使えないわ……本当に私達の能力全てを無力化してるのね」
「遊びはここまでだ。よし、拘束しろ!」
俺の一言に騎士達は手早くゼノス達を拘束する。
勿論、魔力を用いた拘束術でな。魔力が使えない貴様らは絶対に解けない。くっくっく。
魔力の縄で手足を縛り、地面に膝をつかせて座らせる。
この支配感、実に心地が良い。アストの力を持つこいつらを屈服させた時、それこそが俺がアストよりも上である証明となるのだ。
「ちっ、こうなったらもうどうしようもねぇ。殺すなら早く殺せよ」
「ん? 何を勘違いしてるんだ貴様は。貴様らを殺す訳ないだろう」
「なにぃ? そらどう言う意味だよ」
「貴様らをエスハイムに連れて行って、色々教育してやるんだよ」
「教育? 何ですかその教育と言うのは」
「まあ、楽しみにしているんだな」
俺はそう言いながら、顎で騎士達に指示を送った。
ゼノス達を気絶させエスハイムに連れて帰るんだ。
俺が殺すだと? くっくっく、そんな事はしないさ。
〝教育〟してやるんだよ。
世界で唯一アストの味方のこいつらが、まもなく俺色に染まる。アストめ、早く戻って来い。
貴様の引きつった顔を見るのが楽しみで仕方ないぜ。
これでもう完全にアスト、貴様はこの世界で孤独だ。
◆
エスハイム城のある一室、俺はその部屋を〝勉強部屋〟と呼んでいる。
この部屋にこいつらを連れて来た理由は〝教育〟する為。
ユリウスは偉大なる存在、ユリウスこそ世界を救った救世主、アストは敵、アストは世界のゴミ、邪悪なる存在、そんな事を延々と繰り返し頭に擦り込ませる。
そう、教育とは〝洗脳〟の事なのだ。
俺が世界中から英雄王ユリウスと崇められている理由、それはこの洗脳のおかげでもある。
各国に勉強部屋を設置するまでには時間がかかったが、エスハイムから洗脳の枠を拡大して行った俺の策は、まさに完璧だったと言えるだろう。
勉強部屋にはいくつかの個室が設けられていて、中にあるのは椅子だけ。その個室にゼノス達を座らせた。
あとは幻術士で幻術をかけさせる。
幻術士、これも実はアーキノフが所有してた〝恵みの大地〟で見つけたものだった。
この幻術士と呼ばれる存在は、魔素から生み出した人工生物。簡単に言うと魔物に近い存在だな。
魔界に住む魔族から魔力を抽出し、恵みの大地に供給される。
この魔力を使ってアーキノフは様々な研究をしていたんだ。
今じゃ、俺がその所有者という訳なんだがな。
「おい! ユリウス! こんな部屋に連れて来て何しやがるつもりなんだ!! おい!! 聞いてんのか!!」
「ったく、うるさい奴だな。他の仲間はみんな静かにしてるだろ? 貴様が一番のお荷物か? くっくっく」
「んだとぉ!! おいこらぁ!! 」
こいつらは、一度はアストを恨み俺の味方になっていたところもあったが、今じゃ完全にアストについてやがる。信頼も厚いだろう。
だから洗脳と言っても一筋縄ではいかんだろうし、抵抗力もあるとみている。
通常の時間じゃ効かないなんて事もあるかも知れない。
「いつもの五倍の時間をかけろ」
幻術士にそう指示を出す。
「ご、五倍……でございますか!?」
「何だ?」
「そ、そんな長時間やると、精神が崩壊してしまいますが……」
「おい、貴様の名は?」
「はい! 二百二十七号です」
「そうだ、貴様は名もないただ番号が割り振られた俺のコマなんだよ。分かるか? 主君である俺の命令に従っておけばそれでいい」
ーーお前は儂のコマだーー
「うぐぅ!?」
なんだ……またあの……頭痛か。
「ぎょ、御意……五倍でございますね」
と、とりあえず、これで下拵えは終わった。
あいつらの洗脳が終わるまで、ゆっくり出来るかと思えばそうじゃない。今日は世界七大国サミットが開かれる日。
各国の王達が一堂に会する。
今回は俺のエスハイム王の即位で、新たな王という事で顔合わせの意味も含まれている。
サミットは決まって空中浮遊国家ハイグランドで執り行うんだが、空の国と言われているだけあってハイグランドへ行く手段は公には公表されていない。
だが七大国の王達は、ハイグランドのサミット会場まで直通のワープする術がある。玉座に座ってただハイグランドからの合図を待つだけ。
王座に腰をかけ、その時を待った。今回初めて参加するが前王のヨシア曰く〝ただ座って待ってれば良い〟らしい。
暫くすると足下に光る魔法陣が現れ、俺は玉座ごとサミット会場のエスハイム国王の席に一瞬で飛ばされる。
シュン! シュン! シュン! シュン!
他の席も光と共に国王達が現れる。
イヴァークの王〝エメリッヒ〟
ヒョナイカンの王〝アルデール〟
デルメシアの王〝コンラッド〟
ハイグランドの王〝ヨハネス〟
ウォルの女王〝ウェンディア〟
「皆、席についたな?」
サミットを仕切るのはハイグランドの王ヨハネスのようだ。まあ、実際開かれてる場所もこいつの国内だから仕方ないか。
仕切られるのは好きじゃないが、今日はエスハイムの新王ユリウスの即位を祝う席だ。俺が主役なのは間違いない。
「ユリウス殿の噂は聞いておりますぞ」
と、ヨハネスがいきなり話し出した。
「貴殿の様な者がエスハイムの王だと、さぞ前王のヨシア殿も安心であろうな」
ほう。分かってるじゃないかヨハネス。ハイグランドは閉ざされた国で、洗脳もまだまだ行き届いていない状況で、俺の噂が広まってるのは、地上の王達のおかげかもな。
「さて」と言いながら、辺りを見回すヨハネス。
「ラムリース国王、アーキノフ殿がまだ見えておらんようだが……」
「ラムリースは大罪人アストにより、崩落したと聞いたが、アーキノフ殿の生死はまだ確認されていない」
「各国の王、聞いて下さい」
アーキノフについては隣国であるエスハイムの王の俺自らが説明する。
アーキノフは、アストにより殺害された為、ラムリースの席は永遠に空席のままとなる。
そこでラムリース領もエスハイムが統治する提案をこの場を借りてする。
俺がアストや魔族、シャドウなどから守った功績は多く、誰もその提案に反論する者はいなかった。
ただ一人だけ、俺に待ったをかけた人物がいた。
そいつは意外な人物だった。
「死んだなどと、冗談はやめていただきたいですな」
「!?」
アーキノフが光と共に現れやがったんだ。
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