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第十一話 救いのチャンス


「ちっ! ネファーリアァァァァ!! リラァァァァ!!」



 ゼーロットを中心に重力が発生し、ネファーリアとリラは魂に変わって吸い込まれてしまった。

 まただ。また僕は救う事が出来なかった。

 レインベルに続いて彼女達までも……。



「ちく……しょおぉぉぉぉーーー!!!」



 こんなとんでもない力がありながら、また僕は大切な家族を守る事が出来なかった。



「何故なんだぁ!? どうしてぇぇ!?」



 そう言えば分析士のシードが機能していない。

 そればかりか、他のシードも使えない。極大励起状態だと導師の能力が封印されるのか?

 自分の魂を抉るぐらい強く自分に問いかけるが、そんな事したって三人は戻って来ないんだ。

 深く深く自分を憎む。その感情によって力がさらに増幅していくが、この重力から抜け出す事は出来なかった。

 僕に対してかかってる重力は他とは違って地面に縛り付けられるように上からのしかかって来る。



「グワアァァァァァァァァァァァァァーーーーー!!!」


「ぐぐ……くっ!」



 体が地面に引っ張られる。必死に堪えているがそれが精一杯。中々攻撃に転じられない。

 雄叫びは人と呼べるものではなく獣だった。幻竜神界中に轟き、呼応して遠くの彼方から竜族の魂がヒュンヒュンと次々集まって来る。


 こいつ、竜族全ての魂を喰らうつもりなのか。

 その魂に混ざって二つの大きな魔力を持った影が、僕とゼーロットの前に現れる。


 ヴェルグラとメアだ。

 流石の二人も僕やゼーロットのとてつもない波動や魔力に驚きを隠せないようだが、この二人にどうこう出来る力はない。



「ど、どうして貴方が!? ゼーロットさんに肉体を支配されていたはずです!?」


「アスト、キミはまたさらに強くなったんだね。これは困ったね。まさかここまで強かったなんてね」


「ヴェルグラ! メア! 巻き添えを食らいたくなければ、ここから離れるんだ! ゼーロットはもう理性を失いただの獣と化してるぞ!」



 って言って素直に退避するようなタイプじゃないか。

 きっと何か邪魔をして来るんだろう。

 言っておくが、今の僕に迂闊に近づかない方がいいぞ。

 手加減出来る状態じゃないからな。

 この重力から抜け出すにはもっと感情を爆発させないとダメだ。

 怒れ。憎め。ゼーロットを。そして自分自身を。

 僕の大切なものを奪われた。大切な仲間……いや、家族を。



「ぜ……ぜぇぇぇぇぇろっっっっとおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!!!!!!!!!」



 バチィィィィン!!!



 僕の怒りのレベルがおさえつけられてた重力のレベルを超え、纏わりつく重力を弾き飛ばす。その瞬間にずっと我慢していた怒りや憎しみが爆発しスピードを加速してゼーロットへと飛んでいく。

 そして僕は感情のまま無我夢中で殴り続ける。



「ゼーロットは我々の宝。絶対に失う訳にはいかないんですよ! 例え貴方が化け物みたいな強さをお持ちでもねぇ!」



 メアは自分の体から黒い塊を周りに出した。

 シャドウだな。暫く見ない間に一つに合わさったり分散したり出来るようになったのか。

 数え切れないシャドウが僕とゼーロットを囲った。

 ここから出さないと言わんばかりに。

 でもそんな程度じゃ僕は止められない。



「邪魔……するな……」


「く、くっふっふ。私も吸収タイプの魔族なのでね。色々スキルは使えるのですよ! 竜騎士の技、竜紋剣もお手のものですよぉ!」



 シュバァァァァン!!!


 背後からヴェルグラの竜紋剣が僕の左肩にまともに命中する。

 僕は何もしなかった。余りにも強さがかけ離れてしまうと、僕の出すオーラの薄い膜さえ破る事が出来ない。

 ヴェルグラの竜紋剣の一撃は確かに強力な一撃だった。でも今の僕には全く効かない。

 そして、この二人が何をしようが今はどうでもいいんだ。


 僕の目的はゼーロットをこの世から消す事。

 三人の仇を取ってやるんだ。



「うおぉぉぉぉぉ!!!」


「ぬぅわぁぁぁ!?」



 僕は闇のオーラを体から炎のように放出すると、背後のヴェルグラが吹き飛ぶ。気にせずゼーロットの懐に飛び込んだ。

 ダメだ。どれだけ猛攻を続けてもゼーロットには致命的なダメージは与えられていない。

 ()()()()をなんとかするしかないが、闇の力ではダメージを吸収されてしまう。


 逆にゼーロットの攻撃も僕には通用しなかった。

 あいつの力も闇に属する力なのだろう。

 どうするべきか、考えていると遠くの方で「くっふっふ」とヴェルグラの笑い声が聞こえて来た。



「人間……本当に恐ろしい生き物ですよ。アーキノフ殿もこんな悪魔みたいな竜族の何を気に入ってるのか」



 なに? アーキノフがこの件に絡んでるのか?

 ゼーロットに強烈な一撃を放って、吹き飛ばすと僕はヴェルグラの元に飛んで行き、直ぐに問いかける。



「なんでアーキノフの名前が出て来るんだ!? アーキノフはなんでゼーロットの事を知ってる!?」


「くっふっふ。相変わらずアーキノフ殿の事となると、貴方は目の色が変わりますね。まぁ簡単ですよ、ゼーロットさんを見つけたのはあの方ですからね」



 それからもう一つ、と含み笑いを浮かべながら続ける。



「アストさん、貴方の術で幻竜神界ここにやって来たのも、アーキノフ殿の計画の内だったのですよ!」


「な……に?」



 僕が次元術を使って、幻竜神界に飛ばしたのを予測していたって事なのか? そんなのあり得ない。あの作戦は偶然出て来た案だ。

 仮にアーキノフが人間界一の切れ者だったとしても、僕の行動まで予測出来るのだろうか。

 アーキノフ……ただの人間じゃない可能性がある。

 ヴェルグラの暴露は止まらず得意げに次々とアーキノフの計画を曝け出して来る。

 ゼーロットの事を何故アーキノフが知っていたのかは、ヴェルグラも知らないみたいだが、ゼーロットの封印を解いたのはセシルだった。セシルは封印されてる場所、封印を解く術を知ってると言う事になる。


 セシル……僕の知ってる君からどんどん遠ざかっていくよ。

 それは僕も同じか。



「アストさんの肉体と意識が分離したのは、貴方の術の影響なのか何なのか、未だに謎のところなんですがね。偶然にもゼーロットさんの器となる絶妙のタイミングでしたので、過去に飛ぶ前に、ゼーロットさんに教えたんですよ」



 ゼーロットは幻竜神界を丸ごと時間を過去に戻したらしい。ネファーリア達が過去に飛ばされたのも、ゼーロットによるものだと言う事も分かった。

 ヴェルグラの話がパズルのピースのようにピタッピタッと辻褄が合ってくる。



「ゼーロットさんは、アーキノフ殿の偉大なる計画に必要な存在ですから、ここで失う訳にはいきません」



 ヴェルグラは、また独特な笑い声を発しながら倒れてるゼーロットに向かって詠唱を始める。

 すると、巨大化し魔神ビブレイスのような巨獣となった。

 もうヒトと呼べる面影はない。黒く膨れ上がった大きな獣。どんどんどんどん膨れ上がる。


 ヴェルグラの得意とする〝呪い〟だな。



「くっふっふ。せっかく肉体を手に入れたゼーロットさんには申し訳ない事をしますが、アストさんをここで殺しておかないと、やはり厄介ですからね」



 巨獣に姿を変えたと思ったらまだまだ大きく膨れ上がっていく。

 これは……まさかヴェルグラの奴、自爆させるつもりなのか。



「ほうほう。お気づきになられたようですね。くっふっふ。そうです、ゼーロットさんに自爆する呪いをかけました。ただ、自爆で消滅するのは貴方の肉体と貴方の意識体だけです。ゼーロットさんの意識体は残るんですよねぇ」



 言い忘れましたが、とヴェルグラの話はまだ続く。



「ゼーロットさんが取り込んだ数百、数千の魂、もちろんアストさんのお仲間達の魂も、全ての魂のエネルギーを爆発力に変えるのでね。くっふっふ。それはそれはもうとてつもない破壊力となるのですよ」


「ふっ、そうか……そう言う事か」



 僕はその話を聞いて思わず笑みを溢してしまった。

 それは希望だったんだ。まだ僕に救えるチャンスがある。

 今度こそ僕は彼女達を救えるんだ。



「な、何ですか! 何がそんなにおかしいのですかぁ!?」


「いや、嬉しいんだよ。魂がまだゼーロットの中に無傷であるなら、僕に救えるってな」


「な、な……何ですと!?」



 今にも爆発しそうなゼーロットを見上げながら、僕は勝利を確信した笑みを浮かべていた。




お読みいただきありがとうございます。

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