第十話 ユリウスの秘策 -Julius Side-
気分が悪い。
英雄王の称号、そしてエスハイム国の王と言う地位、誰もが偉大なる存在として俺を崇める。
だが俺は気分が悪い。
その原因はゼノス達だ。奴らは世界各国に現れ〝ユリウスこそが偽りの存在である〟と説いて回ってるらしい。
この状況で今更奴らの言葉を信じたりはしないだろうが、イライラさせやがる。
英雄王となり、そしてエスハイム国王となった俺はかつての俺よりも遥かに出来る事が多くなり、俺自身が動かずとも良くなった事が結構ある。
俺はエスハイム城、謁見の間の王座でとある任務に就かせた部隊の帰りを待っていた。
「ユリウス様! 探索部隊が戻って参りました!」
「通せ」
「はっ!」
近衛兵が謁見の間の大扉を開け、部隊を俺の前まで連れて来ると、探索部隊長が早速任務報告で俺に丁寧に説明する。
俺が部隊まで組んで探らせていた所、そこにはゼノス達の能力を封じるものが眠っているんだ。
「ユリウス様が仰った通り、〝あれ〟を発見致しました」
「そうか! それで使えそうなのか?」
「破損箇所が多くあり、そのままでは使用できないと思われます。しかし修復すれば使用には問題ないかと!」
「よし、俺も行く。王宮守護部隊に召集しろと伝えておけ。明日向かうぞ」
「御意!」
くっくっく……。よ〜し、これでゼノス達もお終いだな。
もう二度とそんな活動が出来ないようにしてやるよ。
だがな、お前達はただでは済まさんからな。
覚悟して待ってろよ。
「くっくっくっ……くくくく……ぐははははは!」
◆
-Zenos Party Side-
そこは砂漠の国〝デルメシア〟。
砂漠の国と言うだけあって、国土のほとんどが砂漠。僅か五パーセントが貴重な水源であるオアシスだ。
ゼノス達は今、ここデルメシア国のアレミナと言う街で演説をしていた。
だが世界各国で指名手配されている身である為、ほとんどの人は耳を貸さない。
そればかりか、積極的に彼らを捕まえようと別の国から追いかけて来る者達もいる。
その殆どはギルドに所属してる冒険者達。
今日も演説を途中に、ギルドの連中に邪魔され逃げざるを得なくなったゼノス達は、街の外れにある誰も住んでない小さな小屋で身を潜める事にした。
「くそ! どの国に行ってもユリウス様じゃねぇかよ! まったく胸糞わりぃぜ……!!」
「私達の訴えも、ほとんど聞いてはもらえませんし……ねぇ。ギルドの連中には追い回されるわ、本当にノイローゼになりそうですよ」
「大罪人アストをこの世界から追放しただけじゃなく、シャドウ達も倒したって事も評価されてるし、あいつ本当に考えたわね」
「幸いな事に、アストが我々にシードを残してくれたおかげで魔物は勿論、ギルドの冒険者達からも身を守れる。アストには本当に感謝しなければな」
「ユリウスがこの世界を支配してると言っても過言じゃない世界になっちゃって、私達は世界全員が敵だもんね」
「だがよ、この活動に意味あんのか? 取り敢えず大国を回ろうって事で、ラムリース、エスハイム、イヴァーク、ヒョナイカン、そんでここだろ? 今んとこ誰一人として俺達に味方してくれる人間はいなかったんだぜ?」
「ですが、辞めて他に出来る事もありませんしねぇ」
「うむ。とりあえず世界を回りながらこの活動は続けるぞ」
「へいへい。ゼノスには従うぜ。……にしてもあっっっっちぃぜ。リミア〜暑さを弱める治癒術なんて使えねぇのか?」
「そんな都合の良いものある訳ないでしょ」
「だったらヴァールでもいいからよぉ。ほらおめぇは賢者だろ? なんかねぇか?」
「ありますよ」
「ほ、ほんとかぁ!? じゃあやってくれ! 暑くてしにそうだからよ……」
「氷結波系の魔術なんですけどね、その最上位に当たるのが……絶対零度凍結!!」
シュアァァァァァァァ!!! ピキィィィィン!!!
「うがぁぁ!?」
クウォンに向けていきなり【絶対零度凍結】を放ったヴァール。氷漬けになったクウォンを見ながら、ふっふっふっと笑う。
「ちょっ、ちょっとヴァール! こんな狭い小屋の中で戦闘魔術なんか使わないでよ!」
「ふっふっふ、ちゃんと手加減してますよ。ですが、これで少しは暑さが紛れたのでは?」
もう、と溜息を吐いたリミアは呆れて小屋の外へと出て行ってしまった。
「うぉぉぉらぁぁぁ〜!!!」
魔力で氷を溶かし、氷から出て来たクウォンはその魔力でさらに暑さを増してしまって、頭の周りをヒヨコがグルグルと回っている。
「よ……余計暑くなっちまったじゃねぇかよ。おめぇよくも戦闘魔術なんて使いやがったなぁ! もうヴァールには頼まねえ!」
◆
-Julius Side-
「ここへまたやって来る事になるとはな。やっぱり俺の記憶は間違ってなかった」
ラムリースが何故こんな事になったのかはまだハッキリと分かってはない。きっとアストがやったんだろう。
アーキノフもザングレスも消えてると言うのは、アストに殺されたのか、ただ姿を消しただけなのか。
俺はラムリース城跡に来ていた。
目的は地上ではなく地下の巨大施設。魔王ザングレスが捕えられていたあの施設だ。
俺はアーキノフに信頼され、ここに連れて来られた。
ラムリースが何故〝勇者〟の誕生に恵まれ、またフェアリーが多く棲みつく地でもあるのは、この施設〝恵みの大地〟による恩恵だったんだ。
ザングレスから抽出した魔力をラムリース国全土に供給し、魔力に満ち溢れ、凶悪な魔物が寄り付かない地、そして何十年もの間勇者を生む大国としてその名を馳せていた。
だがそのラムリースも今やただの瓦礫の山だ。
ラムリースの民はエスハイムに移ったから、この国にはもう誰一人として残ってない。
世界では大罪人アストが生まれた禁じられた地として今は人が寄り付かなくなった。
俺以外はな。
「ここがザングレスがいた部屋だな」
恵みの大地内、丁度真ん中辺りに位置する大きな建物、そこにザングレスを飼っていた部屋がある。この部屋に俺の目当ての物があるんだ。
それはザングレスの魔力を抽出していた機械。
これを改良し、もっと使いやすくして持ち運べるようにすればゼノス達の能力を封じる事が出来る。
それはアストだって例外じゃないはずだ。
勇者だろうが導師だろうが、魔王だろうが、もう俺に敵う奴はいなくなる。
「よし、早速取りかかれ」
くっくっく。これさえあれば俺はもう誰にも負けはしない。




