第五話 未来から来た災厄 -Rainbell Side-
ちょっと……あたしもメルトナでアストさんと結ばれた女なんだけど。
今セレスティア様が体を支配してて、あたしの事忘れられてるみたいなんだよなー。
ネファーリアが一番アストさんと過ごした時間が長いって自慢げに話してたけど、あたしなんかネファーリアよりも前に知り合ってるんだからね?
しかもさ〜しかもさ〜あたしに魔法剣士の才能を与えてくれたのもアストさんだし、ずっと気にかけてくれたのもアストさん。
そりゃ……女として見られてるかって言われたら……だけど。
でもまだ気持ち伝えてないし、そもそもアストさんってそう言うのが鈍感だって事、あたししか知らない事じゃない?
「レインベルが、ちと五月蝿いのう」
セレスティア様、そろそろ代わって下さいよ〜。
あたしもちゃんとこの二人に言っておきたいんです。
「待て……波動を感じる」
セレスティア様がそう口に出した直後、部屋の天井から炎の塊が数え切れないくらい、まるで豪雨の様に降り注いで来たの。
流石のあたし達も不意打ち過ぎる状況に反応する事が出来なかったんだけど、セレスティア様だけは違ったんだ。
「ドゥノケムノリムス」
〝翼の盾〟と言う意味の竜言語呪文だった。
あたし達は青い光で出来た巨大なドラゴンの翼によって守られたの。村全部を包み込んだから被害も全く無し。
でもあと数秒遅れていたら、ここら辺一帯が蒸発していたと思う。
あたしがもし、この体を支配してたらと思うとゾッとしたよほんとに……。
やっぱ当分……支配権はセレスティア様でいいかな。
特に幻竜神界には一番詳しいしね。
「あ、あっぶねぇ……。助かったぜ婆ちゃん」
「今の攻撃は、竜言語呪文じゃった。この波動は……。まさか……」
竜言語呪文が使えるのって竜騎士クラスなんだけど、ここまでの強い波動はセレスティア様の他に誰かいるの? ってぐらいいないと思う。
ただ一人だけ、今目の前にいる竜族を除いては。
そうなの。いつの間にか静かに、あたし達の目の前に現れたのよ。
「な!? せん……じゃない、こいつはゼーロットって奴だな!」
「い、一瞬で……一体何処から……」
驚く二人の前に立ち、セレスティア様は目の前のゼーロットを睨みつけて静かに呟いた。
「ゼーロット……」
「よう、セレスティア」
姿はアストさんなんだけど、全くの別人って言うのがすぐに分かるぐらい、表情から声のトーンから全然違った。
〝アストさん〟と言う衣服を纏った何かだった。
演説の時は遠すぎてクリスタルに映った姿しか見えてなかったけど、こうして実際に見ると全然違うよ。
あの優しい、ここにいる誰もが好きだった顔がそこにはなかった。
セレスティア様の弟って事だけど、どうして襲って来たんだろう。
その理由を分かってるみたい。セレスティア様は……。
「復讐に来たか。しかし何故じゃ? この手で完璧に封印したはずじゃがのう」
「姿が変わったな。共生か? 女王とあろうものが、よりにもよってそんな低次元のゴミに気高き竜族の魂を差し出すとは、やはりこの世界の支配者には相応しくないな」
「わたくしが言えた義理ではないですが、貴方はセレスティア様とご姉弟のはず。なのに何故……」
「今さっきこいつが言っただろう? 俺を封印したからだ」
「力に魅了され、同胞を殺し、その魂を喰らう愚かなる竜族は封印する他ないじゃろう」
セレスティア様は睨みつけながら、ゼーロットの事を語り始めた。
ゼーロットはただ強くなりたいが為に次々と同胞を殺し、竜魂を奪って信じられないぐらい強大になって、それでセレスティア様が女王即位した次の日からゼーロットの討伐作戦が行われたんだって。
討伐隊が組まれたけど誰も敵わなくて、結局セレスティア様一人でゼーロットと戦ったんだ
でも、ゼーロットの圧倒的な力を前にして力で打ち勝つ事は出来なかったらしいの。
そこで昇華の秘術を編み出し、肉体から意識だけの存在に変えて遥か遠くの次元の彼方に封印した。
アストさんの体を支配出来ているのは、意識体だからって事なんだけど、って事はつまり、この時代のゼーロットには出来ないって事だね。
「故にお主も、未来から来たんじゃろう」
どうやってかゼーロットは封印を破って、次元を超えてこの時代にやって来た。その途中でアストさんの体を手に入れる機会があり、肉体を支配したんだってセレスティア様が推理したんだ。
「とてつもない魔力を持った魔族によって、俺は解放された。そしてそのまま時間移動でこの時代までやって来たんだ。お前達を連れて来たのは俺だ。意図的ではなかったがな」
「お、お前が!?」
「とてつもない魔力を持った魔族……」
「魔族なんぞが、お主を封印から解き放ったのも気になるが……何故その魔族は、封印されとる場所を知っとったんじゃ?」
「そんな話をしに来たんじゃない。セレスティア、まずはお前を殺し、その後でこの時代のお前を殺す。魔族ども、邪魔をするならお前達の魂も喰らうぞ」
だから邪魔するなってゼーロットは言いたかったんだと思うんだけど、挑発と受け取って完全に戦闘モードに入るリラティナス。
戦獣族って戦闘民族だし、こう言うのは黙ってられないんだろうね。
「へん! あたしを舐めんなよ!」
あ、ちょっと……。一人で突っ込んで行っちゃったよ……。
「リラティナスさん!」
ネファーリアも魔力全開で、その後ろからついて行ってリラティナスやセレスティア様のサポートに回ろうとしてる。
「ほう。強力な魔力を発揮出来る魔族か。だが俺の前では雑魚に過ぎん」
リラティナスは特に接近戦が得意で、魔力がゼロの状態からでも破壊力抜群の威力を誇るんだけど、さらにそこに魔力で上乗せするんだから想像を絶するパワーなんだ。
もしかしたら、パワーだけならアストさんよりも強いかも……。
スピードとパワー、正直共生して竜騎士になったあたしでも目で追いかけるのがやっとって感じ。でも、残念ながらゼーロットには見えていて、リラティナスの繰り出す技の全てを見切ってる。
「アーダ・マリアーダ・ラファルジュ・リノ・アーダ・ラー!」
ネファーリアが空から霊神術の詠唱する声が聞こえて来た。リラティナスが派手な技でゼーロットに向けて放っていたのって、実はネファーリアの術の詠唱を気づかせない為だったの。
その作戦は効果的で、ゼーロットはリラティナスの攻撃を回避する事に集中してる状態。
そしてセレスティア様も竜魂の波動を高め、リラティナスを相手にしてるゼーロットの背後から、竜紋剣で斬りかかる。
セレスティア様はあたしの魔法剣士を上手く使い熟せてなかった。
竜騎士の能力と魔法剣士の能力を使い熟す事が出来るのはあたしの特権なのかもしれない。
「そのようじゃな……戦闘はレインベルの方が向いてるかも知れんな。よし、代わってやる」
「霊神ヴァルガントよ! 我の敵は汝の敵! 我が剣となりて 彼の者に裁きの炎を与え給え! 竜炎霊気砲!!!」
ネファーリアが霊神術を放った。
あたしもセレスティア様もこの瞬間を利用して交代する事にした。
燃え盛る炎で形作られた火竜が空を割ってゼーロットの頭上に向かって落ちてくる。
よし、体を動かせるぞー。
「はぁぁぁ〜!!! 魔力全開!!」
ずっとセレスティア様が使ってたから、久しぶりに体を支配出来て解放感がやばい。
あのリラティナスの攻撃が全く通用してないところを見ると、生半可な攻撃じゃダメ。やった事ないけど、魔力と竜魂をマックスで融合させての、竜紋聖炎斬しかないわ。
あたしが大技を繰り出そうとしてるのに、ゼーロットのやつが気づいて、邪魔して来そう……。
「なんだ。人格が変わったのか。人間」
「覚えときなさい! あたしの名前はレインベル! 今からあんたを倒す竜騎士よ!」
竜紋剣を両手で持って、真上に翳しながらあたしは全力でゼーロットに向けて突っ込んで行った。
リラティナスもあたしの技に合わせて、何か仕掛けようとしてるのかあたしの顔を一瞬見て頷いたんだ。
《レインベルよ、妾の弟だからと言って気にする事はないからのう。何万もの同胞を殺した悪魔じゃ。此奴なぞ、もう弟ではない。思いっきりぶちのめせ》
セレスティア様……。
「分かりました!! くらいなさい! 竜紋聖炎剣!!」
ギュオオオオオオォォォー!!!
聖なる炎と竜紋剣の斬撃が十文字に交差する、竜紋剣と魔法剣の合わせ技。あたしが今出せる最高の剣技だ。
「遅い。剣線が丸見えだぞ」
素早く放った十字の斬撃を素手で弾こうと大きく腕を振り上げた。
「させるかよ! ディストォォォションッ!!」
あまりの威力にそこの空間を歪ませてしまうと言うリラティナスの奥義。実はあの子、今まで魔力を扱えなかったし今回初めて魔力を乗せて繰り出すから、間違いなくこれが彼女史上最強の一撃になるんだ。
さらに技のタイミングもバッチリ。
前からは竜紋聖炎斬が、後ろからはリラティナスのディストーション、頭上からはネファーリアの竜炎霊気砲が一気にゼーロットに襲いかかる状況。
いくら強いって言っても、同時に三つの、それも超パワー、超魔力を誇る三人が放ったんだから、無傷じゃ済まないはず。
正直これで倒せるとは思えない。でも、かなりのダメージは与えられるはず。
いっけぇぇぇー!!
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めざせ100! 頑張ります!




