第四話 神の祝福と女子会
「一万二千年前!?」
ど、どうしてそんな
「どうしてそんな過去にいるのかと言うとね、アストの体を支配してる者の仕業なの」
「僕の体を支配してる者?」
じゃあ、さっき見たネファーリア達は一万二千年前の幻竜神界にいたって事なのか。
それと気になるのは、僕の体を支配してる者がいるって事。
そういえばユシアは、僕は意識だけここにいるって言ってたけど、僕の肉体は何処かにあって、支配されてるって事なのか?
「うん。ゼーロットって竜族なんだけど、アストは知らないよね」
「ゼーロット? うん、知らないな」
竜族って言うと、レインベルと共生してるセレスティア様が思い浮かぶけどそれ以外の竜族は知らないし、ゼーロットなんて名前も聞いた事ないよな。
ゼーロットが竜族だったら、セレスティア様なら何か知ってるかも知れないけど。
そして今の僕は導師のスキルが使えない。どうにか体を取り戻さないと、……嫌な予感がする。
「助けに行きたい?」
「うん……嫌な予感がするんだ」
「じゃあ私が、叶えてあげようかな!」
「え?」
「あんまりこう言う事やっちゃうと、パパに怒られるんだけど、今パッとやっちゃうね!」
「大丈夫なのかい?」
「アストは良い人。それに…………だから」
え? 最後の方聞き取れなかったけど
「いいの! 大した話じゃないからね! そんな事よりネファーリア達の所に行きたいでしょ?」
「それはそうだけど……」
なんだろ……一瞬ユシアの表情が暗くなった瞬間があったけど、またニコッとした顔に戻ったな。
本当に一瞬だったけど。
「も〜気にしないでってば!」
そう言いながら背中をポンッと軽く叩かれると、直ぐに遥か遠い彼方から光った塊が僕の元にやってくる感覚がした。
何次元も超えた遥か遠い彼方の先のはずなのに、時間で言うと一瞬なんだよな。
不思議な体験って色々経験して来たけど、今回も経験した事のない感覚だった。
「はい! 出来上がり〜!」
「え? あ、じゃあさっきの不思議な感覚って」
僕は導師の能力が使えるようになっていた。
なんだか、以前よりも大きな力を感じる。
「あ、うんうん! ちょっとね、パワーアップさせといたよ!」
「え? そんな事も出来るのかい?」
「うん! ますます神様みたい? じゃあ神様の祝福かな! うふふ」
導師の能力が上がった事で、時間移動も可能になったってユシアも言ってるし、これで助けに行ける。
早速、この力を使って一万二千年前の幻竜神界へ行こう。
「また……会いたいな」
「うん、もし会えるのなら、会いに来るよ」
僕のこの言葉に目を逸らして、俯いて「うん」と一言返した。
その声は元気がなくて、悲しそうで、でも表情はニコニコしてて、正直僕はどう反応して良いか分からなかった。
僕の心を読めるからこの声も聞こえてたんだろうな。
直ぐに笑顔を見せて「いってらっしゃい」と元気にユシアは僕を送り出したんだ。
少し気になるけど、ネファーリア達の所に行かないと。
ゼーロットの存在を知った時からずっと嫌な予感がするんだよ。
僕はパワーアップした導師の能力で、時間移動を試みる。
なんとなくだけど、次元術の要領でやればなんとか出来そうだな。
よし、待っててくれ。
◆
-Nephalia Side-
セレスティア様の演説が終わり、わたくし達は周りに気をつけながら跡をつけて行きました。
慎重に宮殿の奥までやって来ると、厳重に警備されてる部屋に入っていくセレスティア様、そしてヴェルグラ、メア、アストの体を支配してるゼーロットを見つけました。
ただ、これ以上は追跡すると怪しまれそうでしたので、一旦引き返して作戦を練る事に致しました。
宮殿を出て、東へ暫く歩いて行くと「ほれ、あそこに村があるじゃろ」とセレスティア様が指を差してわたくし達に教えます。
「ヘカナと言う村じゃ。そこの宿屋で作戦会議でもするかえ」
そうしてわたくし達はヘカナへとやって来ました。
村人らしき竜族と何人かすれ違いましたけれど、わたくし達を見てもやはり特別な反応はありませんでした。
これはわたくし達も竜族とみなされてると言う事なのでしょうか。
そんな事を考えながら、村の宿屋に入りました。
お手続きはセレスティア様がなされ、問題なく宿を取ったわたくし達。
リラティナスさんは部屋に着くや否や早速食べたいと、お料理を次々注文していってますが……。
「お主……注文するのは構わんが……。本当に全部食べるのじゃろうな……」
「もちろん⭐︎ あ〜腹減ってしにそー」
暫くしてお店の方々が両手にご馳走を持ち、お部屋のテーブルに置かれて行きます。
魔界、人間界とはまた違った木の実や野菜が中心の料理にリラティナスさんはもちろん、わたくしもビックリしました。
竜族は肉食で主にお肉を好むものだと勝手にイメージしておりましたが、偏見はいけませんね。
以前、アストがわたくしに対して偏見でイメージしてたって仰ってましたけれど、あの時のアストもこの様なお気持ちだったのですね。
と、美味い美味いとパクパク食べていたリラティナスさんが急にピタっと止まり、目を細めながらじーっとわたくしの顔を見て来られたので「何か?」と尋ねました。
「……ネファーリア、今先生の事考えてただろ」
「え?」
「先生の事を考えてる時のネファーリアって、すぐに分かるぜ」
「確かに。お主がそんなにニヤニヤする時は決まってアストの事を考えてる時じゃからな」
そ、そんなにわたくしは表情に出ていたのですか。
「ほれ。顔が真っ赤になったぞい。図星じゃな」
「あ、そうだ! この際だから言っとくけどな!」
ダン! とテーブルを叩いて立ち上がったリラティナスさん。わたくし達に言っておきたい事と言うのは、一体何なのでしょう。
「先生が一番愛してくれてるのは、あたしだからな! ネファーリアやレインベルと婆ちゃんがメルトナを結んだのはパワーアップとか戦略の為だろ? あたしは違うもん!」
これだから若もんは、と溜め息を吐いたセレスティア様。
見た目ではわたくし達と変わらないのに、仰られたお言葉に少し違和感を覚えてしまいました。
「もう二度と君に辛い思いはさせないよ。って言ってくれたんだぜ? あぁ〜も〜早く抱っこされてぇーよ♡」
「〝呪いにかからないように〟と言う言葉が抜けとるぞ? お主もパワーアップの為じゃろうが」
「ち、ち違うよ!」
「そもそもメルトナと言うのは、ご主人様に忠誠を誓うと言う意味合いのものじゃ。愛は儀式などで結ばれるものではない。心で結ばれるものじゃよ小童めが」
「そ、そんなの分かってるよ! あたしと先生は心でちゃーんと結ばれてるんだよ! 姉ちゃんや、婆ちゃんよりもな!」
お二人で話し合いをしている所を、わたくしは少し離れた感じで見守ってましたが、アストと共に過ごした時間はわたくしが一番多いのです。
そしてアストへの思いは何方よりも強い事は言うまでもなく、リラティナスさんは勿論のこと、レインベルさん、セレスティア様も含めて何方よりも愛されてる自信が御座います。
ですのでわたくしは我慢できずに中に割り込み、そう言い放ちました。
「ラムリース城で、妹のセシルとの時にわたくしの事を大事な家族だと、そう仰ったのです!」
「そ、そんな事……。あ、ほほら! ネファーリアってどこか落ち着いてるし、お母さんみたいな感じじゃん?」
お、お母さん……。
「だから〝家族〟なんだよ。あたしなんて、いきなりメルトナを結ぼうって言われたんだから! あの時の先生の目は愛情たっぷりだった! 絶対そうだ!」
「愚か者が。アストはの、妾の様なセクシーな大人の女が好みなんじゃよ。リラティナスは子供過ぎるし、ネファーリアは色気が足らん。レインベルも見た目こそ共有してはいるが経験からそもそも違うからのう。全てにおいて妾が一番アストに相応しいと言う訳じゃ。あぁ……旦那様……♡」
三人共全く譲らず小さな宿の小さな部屋で暫くずっと火花を散らしておりました。
そんなわたくし達の元に迫り来る影が段々とその距離を縮めていると言う事を、ここにいる誰もが想像していなかったでしょう。
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