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第五十六話 記憶を求める者、失う者  -Julius Side-



「ゆ、ユリウス殿! アスト・ローランが戻って来たとの報告を受けました! 現在城下町中央広場にて、シャドウと戦闘中の模様です!」


「なに、アストが!?」



 俺は直ぐにバルコニーへと向かい城下町の様子を目を凝らして確かめてみた。

 確かにアストの姿を確認したが……何だ……ただ光ってるだけで何をしてるかここからじゃ分からん。

 ん? あれは……ゼノスにクウォン、ヴァール、リミアまでいやがる!?

 何故あいつらが? あんなのがまだ生き残ってたのか……。まともに戦える訳がないのに。



――アストは導師の力を得たんだと思う――



 何だよ……なんで今それを思い出すんだよ。

 アスト(あいつ)が導師だって? そんな訳がない。

 俺より全てのステータスが劣ってる奴が伝説の導師など万に一つもなれる可能性なんてない!

 ただ単に補助魔術かなんかで強化してやがるだけだろうが!

 ……って何で一々自分に言い聞かせてるんだ俺は……。

 あいつは導師じゃないんだ! ムカつくぜ……! アストの何もかもが憎たらしい!!

 分かったよ、行ってやるよ。行って俺が正しかった事を証明してやるよ!


 違う! あんなのが導師な訳はないんだ!

 あんな奴が……!




-Ast Side-

 



 シャドウとの戦いは想像通り、長期戦になればなるほど僕達は不利になっていく。粉々に吹き飛ばしても、聖なる光で浄化してもまた再生して元に戻る。



「おいゼノス、おめぇバテて来たんじゃねぇのか」


「お前こそスピードが落ちて来てるぞ」


「へへへ……こいつら倒しても倒しても復活しやがる」



 戦力自体は僕達が優勢、でもスタミナが切れてくるとすぐに劣勢へと追い込まれてしまう。

 分析士を使ったりして色々考えに考えた結果、僕の次元術士で遠くの彼方にワープさせるしかないと思ったんだ。

 だけど、ワープは僕の記憶にある場所である必要があって、見た事もない場所へワープさせる事が出来ない。

 そうみんなに話した。

 するとうえの方からネファーリアが降りて来た。



「〝記憶〟があれば、ワープさせる事が可能なのですね?」


「うん。でも残念ながら人間界ここと魔界しか行ったことがないし、どちらの世界にもシャドウを置いておくのは危険だからな」


「レインベルさんは幻竜の女王様と竜騎士の契約を行い、竜族となられました。レインベルさんには数千年生きた女王の記憶があります」


「ネファーリア、ダメなんだよ。その話をレインベルから聞いても僕の記憶にはならないんだよ」


「レインベルさんに…………その……」



 と、深く溜め息をついてから



「……メルトナ……になってもらえれば記憶が、共有できると思います」


「め、メルトナ? メルトナって確か……結婚する事だったよな……」


「はい……メルトナになった者は、そのお相手の方に様々な効果をもたらすのです。私自身の魔力が大幅に強化されるとお伝えしたと思いますが、実はアストにも影響があり魔力が強化されております」


「知らなかった。言われてみれば確かにネファーリアが強くなると僕の魔力も強くなる傾向にあったな」


「もう一つあります。メルトナになった者の記憶を共有する事ができます。これは任意にお渡しすると言う方法にはなりますが、先程の問題を解決できると思います」



 ネファーリアが言いたいのは、レインベルとメルトナを結べば記憶を共有する事が出来て次元術であいつらを飛ばしても大丈夫そうな世界にワープさせればいいって事か。



「よし! じゃあその手で……」



 と、言いかけたけどよく考えたらレインベルとメルトナを結ぶって言うのは……レインベルと結婚するって事か!

 そうだった。じゃあダメじゃないか。

 ネファーリアと僕は結婚してるって事なんだよ。

 人間界のルールとは違うかもしれないけど、こんな事許されるのか。

 ネファーリアから提案してくれた事だから、メルトナは複数人と結んでもいいって事…………ではないらしい。

 彼女の複雑な表情を浮かべ、まだ何か僕に伝えたがっている。



「本当は嫌です……わたくしだけがアストのメルトナでありたいです……。心が抉れそうで辛いですが……このままではシャドウに皆やられてしまいます……!」


「ネファーリア……」



 君は、自分よりも人間界や魔界に住む者達の平和を選択したんだな。

 まだみんなが戦っていられる内にやらないと、いくら導師の力をもってしても一万六千体以上(このかず)を一人では無理だ。



「ごめんネファーリア、僕は導師としてシャドウを放っておく訳にはいかない。君の提案で行こうと思ってる」


「勿論ですアスト。……そうして下さい」



 ネファーリア……。って僕がブレてたらダメだ!

 レインベルとメルトナを結んで今回の件で必要な記憶だけ共有させてもらう。

 それでシャドウを飛ばす。これしかもう手はない!



「みんな! 少しの間だけ持ち堪えてくれ! 何とかできるかもしれない!」



 みんな僕に分かったと返事を返して来る。



「クウォン! バーサーカーのシードを与えたから、これでなんとか掻き回してくれ!」


「うぉ!? なんだよこの力はよぉ!! うっしゃあ!! こっちは任せとけよ!」



 クウォンの驚きっぷりにフッと笑みが溢れてしまった。

 さあ、気を取り直してラムリースのレインベルの所に行こう!

 僕は次元術を使ってワープした。







 ラムリースは巨大な黒い渦の件で周辺地域にまでその被害は及んでたんだ。

 ラムリース城付近は大きな穴が空いてるだけ。人々は無事で元気だけど街も村も失くし、住む所が無い状態だった。

 トンカントンカン家を建てる音が所々に散らばってる。

 こうやってみんなで協力して、毎日を暮らしてるんだよな。

 ラムリースのみんなは本当に強いよ。僕に勇気を貰ったとか言ってるけど元々あったんじゃないかって思う。

 レインベルがみんなをまとめてくれてるから、揉め事も今のところはないみたいだ。


 さて、ワープで戻ってきたけどレインベルに事情を話さないとな。まあ竜族になったレインベルなら理解してもらいやすいだろうと思ってたんだけど……。



「え、え、えぇー!? あたしとアストさんがけ、け、けけ、けけ結婚!?」


「まぁそうなるよな……」



 苦笑しか浮かばないよ。いきなりそんな事言われてもって顔に書いてあるし、まあそうだよな。



「アストさんの……奥さんに……あたしの旦那さま……♡♡♡」


「む、難しく考えなくていいんだよ。人間界のルールで結婚する訳じゃ無いから。魔界のルール、メルトナを結ぶって思ってもらえれば……はは」


「で、でで、ですよね〜! あ、あたあたしなんかがアストさんと釣り合う訳ななないもん! え? も〜セレスティア様! この際だから言えって何を言うんですか! 言える訳ないでしょ〜! あたしの何を知ってるんですか! 嫌です! 言いません〜!」



 幻竜の女王様と話してるんだな。そっか、僕もフュリンと話してる時ってこんな感じなんだな……。想像以上に不気味だ。



「レ、レインベル……みんなを救うにはこの手しかないと思う。何とか考えてもらえないか」



 男の僕と違って女性はそんな簡単には決められないか……。よし、仕方ない! 違う手を考えるか。



「あ、あたあたし! アストさんのメルトナになります!」


「ほ、ほんとに!? いいの?」


「アストさんには……その……色々と恩があるし……元々その為にラムリースに来たんです! あたしでお役に立てるなら、よろしくお願いします!!」


「レインベル……ありがとう!」



 なんとかメルトナを結べる事になった。僕も色々と罪悪感があるけど、シャドウをこのまま放っておく訳にはいかない。必ず脅威になるし僕の手に負えなくなる前に対処しておかないと。

 ネファーリア、そしてレインベルにはある意味犠牲になってもらったから、この件が終わったら何か返さないとな。




-Julius Side-




「な、なな……なんだ……」



 あのゼノス達が、ゴブリンともまともに戦えなかったあいつらが、俺の目では追えない程スピーディーな戦いを繰り広げていた。

 バルコニーから見てた景色と全く変わらなかったんだ。

 俺はそれが遠いからだと思ってた。

 だが違った。ゼノスは敵の注意を逸らし、クウォンがその敵の隙をついて技を叩き込む。ヴァールは遠距離から支援系魔術で前線の二人を強化し、リミアは回復しながら自分の間合いに入ってきた敵を攻撃。さらに上からは凄まじい破壊力の魔術を放ってる魔族の女、あれも味方なのか……。

 

 だがこれはなんとなくの憶測だ。実際は何が起こってるか特に接近戦のゼノスとクウォンの動きは早すぎて人間業ではない域にまで達している。

 これが全部アストの力だって言うのか……!

 その肝心のアストの姿が見えんぞ。早すぎるから何処かに紛れてるのか?



「フシュシュシュ……コンナトコロニイッピキカクレテヤガッタカ」


「!?」



 背筋が凍るとはまさにこの事。俺は背後に強烈な気配を感じた。だが金縛りに遭ったかのように中々振り返られない。恐怖……なのか。

 そんな事がある訳がない。勇者兼最高司令官であるユリウス様に恐れるものなど……。

 思い切って振り返ってみるがそこには何もいない。



「バカメ、ウエダ」


「な、なに!? ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁーー!!!」



 俺の体にものすごい勢いで黒い霧が溶け込んでいく。

 視界が暗い……寒い……そして心臓が握り潰されそうな程の恐怖が体を支配する。

 シャドウが何かしやがったのか……。記憶が……なんで色々思い出すんだ……。嫌だ……何も失いたくない……。

 俺の体の中にある魂と呼ばれてる光の塊が、穢れて行くのを感じる。

 

 俺が俺じゃ無くなる……。


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