第五十五話 導師パーティー結成!
こう言う展開ベタですが自分は好きです。
僕達は今エスハイム城下町の中央広場にいた。
ラムリース城が黒い渦と共に消滅したけど、住人のみんなは無事に一人残らず助ける事が出来て良かったよ。
それで人々は僕の事を救世主だと言って讃えたんだ。最初はゴミだなんだ言われて非難されたけど、誤解が解けたようで素直に嬉しかった。
そんな喜びも束の間、エスハイムの方向からとんでもなく大量のシャドウの反応を分析士のスキルが知らせてくれたんだ。
その時分かった数だけでも一万六千体いて、さらに増えていく様子だった。
こんな数いくら優秀な騎士やギルドの戦士でも防ぎ切れない。
そう思った僕はついさっき生み出した新たなシードでまずはトリークへとワープする。
新たなシードは空間と空間を切り取って繋ぎ合わせる事ができて、文字通りワープする事が出来る。
このシードのおかげで大きく拡がった巨大な黒い渦を空間ごと誰もいない地点へワープさせたんだ。
僕は【次元術士】と名付けた。
レインベルにはヴェルグラと、避難した住人を見てもらってる。
ネファーリアと共に次元術を使ってトリークまでワープし、そこからエスハイムに向けてワープして行った。
到着するとすぐにシャドウの被害に遭ってる事に気づき、ネファーリアに頼んで霊神術でエスハイム一帯を浄化してもらってる間、僕はある人物の所へ駆けつけた。
ゼノス、クウォン、そしてヴァールだ。
僕のかつての仲間、生きていたんだ。
でもシャドウにやられ瀕死状態になっていた。
「アノ・アルース・マティレム・ダミレウス。霊神ミレイネスの名の下に、穢れた御霊を還るべき黄泉へと誘い給え。昇天閃光柱!!」
空中に止まり、霊神術を放ったネファーリア。
シャドウ達はみんな苦しみ悶え出した。憑依していたシャドウは耐え切れずに浄化される。
でもこいつらはまた復活するから今の内に、みんなを安全な所に。
次元術士の出番だな。僕は空間と空間を繋ぎ、この場から一歩も動かずに見えている範囲の傷ついた兵士、騎士、ギルドの戦士を僕の後方へとワープさせる。
「サモンシードで戦巫女を召喚して治療術を……」
と、その時だった。空から癒しの雨が降り注いだんだ。
これは【癒再生雨】か!? 広範囲を治療する高度な治療術だ。こんな治療術が使える者がいたのか!?
「久しぶりね。アスト」
「リミアじゃないか!? 君は無事だったんだな!」
「そっか貴方は知らないのね。私はゼノス達とは別れたの。今は一人で治療術士の勉強してるの」
「そうか! 君がさっきの術を」
僕の質問に答える間も無く、ゼノス達に近づいて容体を確かめに向かう。そうだリミア、ゼノス達を治療してくれ。
「……馬鹿ね。どうせあれからろくな修行もしてなかったのね。まったく……ボロボロじゃない」
そう言いながらも、リミアは丁寧に治療術をかけていく。
「アスト……ごめんなさい」
治療術を施しながら話す。
「あの時、私は信じてあげられなかった。一番味方になって欲しい時に私は貴方を裏切ったの。本当に後悔してるわ」
「リミア。あの時はどうしようもなかったんだ。みんなね」
「うぐ……リミアか」
「おはようゼノス、次はクウォンね」
ゼノスはリミアを見た後、僕と目が合う。
ゼノス無事で良かったよ。シャドウにも憑依されてなさそうだしな。
「アスト……私は……私はとてつもない間違いを犯してしまったのだな」
「ゼノス、その話は後にしよう。まずはシャドウを何とかしないとな」
「なに? 死んだのではなかったのか?」
やっぱり知らないんだな。シャドウは不死身なんだ。
「霧状になっただけなんだ。こんなに大勢いると憑依を見逃す可能性もあるし、だからシャドウを一つに集めようと思ってる」
「そ、そのような事が可能なのか……?」
「ふぅ……死にかけたぜ」
「おお、リミアじゃないですか。貴方が私達を治療してくれたのですか?」
クウォンにヴァールも無事に回復したな。
そして霊神術を撃ち終えたネファーリアがスッと空から降りて来た。
やっぱりみんな信じられないよな。魔族は絶対悪って教わって来たんだから。
でも、実際は全然違う。魔族にも良い魔族悪い魔族がいるんだ。考え方、家族を思う気持ち、そんな事をみんなに話した。
ネファーリアはシャドウの手から救ったのは間違いない事実。
だからみんながネファーリアを味方だと思えるまではそこまで時間はかからなかった。
さあ、そんな事よりこれからが本番だ。
霧が濃くなって来た。憑依されないようにあの霧を一か所に集めよう。
それも次元術士の出番だ。
僕は中央広場の再生するであろう地点にそれぞれ魔力を撃ってマーカーをつけた。シャドウの黒い霧が色んな場所で集まり人型に形作られていくのが見える。よし!
「今だ!」
と言う僕の掛け声で、マーカーをつけた地点のシャドウが全て広場の中央の空中にパッパッパッとワープする。
とは言っても共食いだけはさせないようにしないとな。
一人食べただけであれだけパワーアップしたんだ。
「そんなに警戒しなくてもいいよアスト。ワタシのような進化はしないから」
「この声は!?」
いつの間にか、僕の前には赤いシャドウが立っていた。
魔界から戻って来たのか。前とは遥かに魔力が上がっている。
「追いかけたのにどこ行ってたんだよ」
「なあに、キミが戦獣族と遊んでいた頃、僕は別の領域の魔族達を食べていたんだよ。まあ見ての通り大したパワーアップはしてないよ。まだまだ君の方が上だ」
「何なのだあの赤い鬼のような魔物は……」
「シャドウです。通常よりも遥かに進化した者。それがあの赤いシャドウなのです」
「ネファーリア。少し見ない内に大きくレベルアップしたじゃないか。そろそろ食べ頃かな」
「おいさっきからあいつ……同族を食べるって言ってんぜ……マジかよ」
魔物は元々、魔族が魔物化したものだけど、だからと言って魔族の味方じゃないんだ。魔族も魔物と敵対してる。
その事を僕からみんなに伝えた。
僕も最初はみんなと同じ疑問があったんだ。
同じ種類なのにって……。でも違うんだよ。
猿と人間が違うように魔族と魔物も違うんだ。
「ワタシの仲間は返してもらうよ」
赤いシャドウは、僕が集めていたシャドウ達を次元術から脱出させたんだ。
「アスト! あの赤いシャドウ何しやがったんだ! 俺にはただ光ったようにしか……」
「僕の次元術から抜け出させたんだ。前より遥かに能力が増してる……」
赤いシャドウの周りに黒いシャドウが次々に形作られる。
まるで子供みたいだな……。
「それにワタシを〝赤いシャドウ〟などと呼ばないでくれるか? 〝メア〟と呼んでくれ」
「ネファーリアは遠距離で分析と霊神術を頼む」
「分かりました」
そう言って翼を広げると空に飛んで行った。
「ゼノス、クウォン、ヴァール、リミア。僕達の戦術を覚えているかい? 君達の力を借りたい」
「いや……我々は………………ち、力が……」
「おぉ!? こ、こいつは……!?」
「あの時の……賢者の力が溢れて来ました!」
「アスト……貴方はやっぱり導師なのね……! やっぱり……私は間違ってなかった……」
リミアの目に涙が溢れ出す。それをキッカケに、ゼノス、クウォン、ヴァールも感極まった表情で僕を見た。
誰にでも間違いは起こる。失敗もするし、完璧な人間なんていないんだ。
過ちは正せばいい。失敗したら次は失敗しないようにすればいい。
何度でもいつでも、そう思った日からやり直せばいいんだよ。
「へへ! 勇者パーティーの完全復活だな!」
「いえいえクウォン、導師パーティーですよ」
「うっせい! 何でもいいんだよ! これなら無敵だぜ! あのクソ野郎、よくもボコボコにしやがったな〜! やってやるぜ!」
「分かってると思うけど、シャドウは普通の魔物じゃない。油断すると憑依して操るんだ。霧になった時は気をつけてくれ」
「私はいつも通りサポート中心に」
「リミアもあまり深追いはしないで、ヒールを回してくれ。戦巫女はシャドウが接近して来た時の回避策として使って欲しい」
「分かったわアスト!」
「僕とクウォンで攻撃、ゼノスも攻撃優先で構わない。シャドウは憎度操作が効かないから、注意してくれ」
「了解した。なら私はこの体で注意を引きつけよう」
さあ、久しぶりのパーティー戦だ。
「へへへ! やっぱなんだかんだでしっくり来るな!」
「あぁ。あいつとはやはり格が違った」
「さあ、皆さん大いに暴れて来て下さいねぇ」
「よし! みんな、行くぞ!!」
僕達は勢い良く地面を蹴って、シャドウ達へと向かって行った。
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