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第五十三話 襲撃 -Julius Side-



「な、なんだこの地響きは!」


「や、やべえ揺れだぞ……近くじゃねぇか!?」



 俺達は今エスハイム城、客人の間でエスハイムの王とアスト捕獲の作戦を話し合っていたところだった。


「む、むぅユリウス。ここは一旦中断した方が良さそうだ。王を安全な所へ」


「ゼノス、勝手に決めるな。それは俺が決めるんだ」


「ヨシア様!」



 突然、物凄い勢いで扉が開かれ兵士が真っ青な表情で入ってきた。

 本当にエスハイムの兵士は無能ばかりだな。

 今大事な話をしているのが分からんのか? たかだか地震ぐらいで騒ぎやがって! もう揺れは収まってるじゃないか!

 


「ラムリース城が陥落!! 巨大な黒い渦の中に消えたとの報告が入りました!」


「「「なんだって!?」」」



 ら、ラムリース城が陥落……? 渦の中に消えただと!?



「ユリウス殿! 私は状況を確かめたい! 一度帰国しよう」



 俺やゼノス達に声をかけて王子が席から立ち上がると、ゼノス達が王子の後をついて行こうとしやがった。



「おい待て! 勝手に決めるんじゃない。まだ帰国はしない。アストを捕獲してから帰る。それ以外は認めんぞ」


「こ、こんな時に何を言っておるのだユリウス殿!! 民や父の事が心配だ! 城が陥落したのだぞ!?」


「どうせ兵士こいつが大袈裟に言ってるだけだろう。あんたも知ってるはずだ。城の地下に何があるのかを。それとアーキノフ様には心強い味方がいらっしゃるんだ」


「貴方って人は! 本当に自分の事だけですね!! なら私だけでも向かいます!」



 憤怒を露わにして王子は一人、この部屋から出て行った。

 あんなゴミ王子に一体何が出来るんだよ。

 戦い方も知らない、魔力も使えない。辿り着く前に魔物に食われてお仕舞いだ。

 まあお前が生きようが死のうが、こうして考えるのも無駄だと思う程どうでもいい話だ。


 それにしてもアストの奴何してやがるんだ。

 全然戻って来ないじゃないか。もしかして怖気付いて逃げ出したか? その可能性が高いな。やっぱり俺の思った通りあいつなんかに導師が務まる訳がないんだよ。


 はぁ。 またドタドタと忙しない足音が聞こえてくる。

 今度は何なんだ。エスハイムが魔物にでも襲われたか?



「はぁはぁ……ヨシア様!! 物凄い……はぁはぁ数の……」


「呼吸を整える時間はある。落ち着いて話すのだ」



 ありがとうございますと言った兵士は呼吸を整える。



「大量のシャドウが、エスハイム城を目指して向かって来てます!! 十や二十の数ではありません!!」


「なに!? シャドウが!?」



 エスハイムの王が立ち上がり、部屋を出て行こうとする。

 そういやこいつ、俺に名を名乗ってなかったな。



「ヨシア王、何処に行くんだ。まだ話は終わってないぞ」


「ユリウス殿、すまんがこの話は後にしてもらえんか。我が城にシャドウが向かってるようなのだ」



 分かってるよそんな事は。シャドウか知らんがただの魔物だろ? それに有能なギルドの戦士達がいるじゃないか。

 親が親なら子も子。エスハイムは無能集団だな。



「ユリウス、どうしますか?」


「シャドウってのがものすげー数で攻めて来てるってよ」


「そのシャドウと言うのが良くわからんが、我々も助力すべきではないだろうか」


「だな!」



 そうだ。こいつらも無能だった。

 お前達が加勢したところでゼロなんだよ。

 レインベルにも言われただろう? レベルゼロだって。



「やめとけ。ゴブリンにも勝てないお前達が行っても死体が増えるだけだぞ」


「じゃあユリウス、俺達はどうすりゃいいんだよ。このままここでアストが帰ってくるのを待つのかよ」


「ユリウス様、失礼ながら我々は加勢に向かうべきではないでしょうか?」



 ラムリースの騎士達が俺に向かって進言しやがった。

 お前達は俺の駒なんだよ。なんで他所の国の面倒を俺達が見る必要がある? エスハイムの問題だろうが。

 どいつもこいつも頭おかしいのか? 馬鹿だから一々言わないとダメなんだったら言ってやるよ。



「俺は()()司令官だ。俺の言う事はアーキノフ様のお言葉だ。俺の命令通りに従う、それだけ考えろ」


「……御意」



 アストの野郎、逃げやがったんだな。

 何が導師だ……くっくっく。

 お前には誰も救えないんだよムシケラが。



「アストも逃げたみたいだし、引き上げるぞ」



 魔物が攻めて来るって話だから、とばっちりを食らわん間に離れておくべきだな。こんな無能王国などさっさと滅びればいいんだよ。

 このユリウス様をただの客扱いしやがった無能王国はな。

 俺達は一旦ラムリースへ帰還する事にした。

 別に王子がそうしたから戻る訳じゃない。

 あくまでも俺の判断だ。


 客間を離れ、城下町へ向かう。そう言えばエスハイム城や城下町は見た目こそ違うが店の数や配置がラムリースと似てるところも気に食わなかった。

 どうせ真似したんだろうな。無能のする事だ。

 酒場で一杯飲んで帰ってやってもいいが、不味そうな上に金まで払うなんて冗談じゃない。


 城と城下町とを結ぶ橋を渡ったら、すぐに酒場が見えて来るんだが……。

 街の住人が荷物をまとめてゾロゾロと橋を渡って向かって来てるんだ。

 それも大勢。

 兵士が城へ避難しろと言う声が聞こえる。

 おいおい……たかだか魔物ごときに避難だと? エスハイムの騎士はどれだけ無能なんだよ。


 シャドウがどんな魔物か知らんが、ここの騎士とギルドの戦士を集めりゃ簡単だろう。



「ド無能だな」



 俺達は洪水のように押し寄せる人の波を掻き分けて街の中央広場までなんとかやって来た。

 まったく、魔物ごときにパニックになりやがって。

 ただ、この辺まで来るとほとんどギルドの戦士や騎士だけになってたな。


 お、あれは我が国のリーベルト王子ではないか。

 くっくっく、街の入り口の方を見ながら立ち尽くしているな。

 そうか魔物が怖くて出られないか。

 だから俺の言う通りにするしかないんだよ王子。

 お前も漏れなく無能だ。



「来る……」


「王子、その腰にぶら下がってるのはなんだ? まさか魔物が怖くて」


「シャドウが来たぞー!! 皆の者!! エスハイムを守るのだ!!」


「おー!」


「お前ら!! この戦いに勝てば高額報酬と上手い酒が飲めるぞ!! 一匹たりとも城に近づけさせるんじゃねーぞー!」



 街の入り口から一キロ離れた辺りから黒いモヤのようなものが揺らめいているのが見える。

 なんだ? 何かの影が? と、空には何もなかった。

 黒い影をよく見ると、その一つ一つが魔物だと分かった。

 黒い影のような魔物。そうかそれでシャドウなのか。

 物凄い勢いで走って向かって来ていた。



「お……おい。信じられねぇ数だぞ」 


「十や二十って桁じゃありませんよねぇ。見たところ一万体以上いそうです」



 な、……何だよあの数は……。



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