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第五十話 復讐を果たす時

ついに五十話まできました。ここから数話程で第一章の幕を閉じたいと思ってます。


 この大扉……謁見の間へと続く扉だ。

 この先にあいつがいるのか? いつもの僕なら冷静に周りを把握し、何か罠が張られていてもいくつかの対処パターンを考える。

 でも今は感情のままこの扉を押し開けてしまう。

 いいんだ。僕自身がこの後どうなろうが、世界が滅びようがあいつを殺せれば……どうでもいい!



 謁見の間へ入る。静寂に包まれ僕の足音が響く。

 玉座に向かって歩みを進めるが、誰も座ってなかった。アーキノフの気配は感じない。



「くそ! アーキノフはどこに!?」


「ここだ」



 いきなり背後から声がした。扉を開ける音も聞こえなかった。いや、何処から現れたかなんてそんな事は今の僕にはどうでもいい事だ。


 僕の二つの瞳には、殺したくて堪らない相手の姿がきっちり収まっている。

 拳に力が入る。あの時の感情が全身の皮膚を突き破ってしまいそうで抑えたくても抑え切れない。

 体が震え、その感情は僕の魔力を通じて爆発しようとしていた。



「オォォバァァドライブ!!!!」



 あの時は勇者の力が失われ、導師の力の使い方も知らなかった。馴染んでなかったんだ。

 でも今は違う。今ならお前を、跡形もなくバラバラにして消す事が出来る。

 いや……そんな簡単には殺さない。

 痛みや苦しみをその身に何度も刻んで、絶望し、恐怖し、セシルにした事を悔やんで僕に縋り許しを乞う、そのお前をこの手で殺すんだ。



「まさか今一番欲しいモノが、自らで儂の元へ来るとはな。アストよ」


「殺す前にお前の失敗を言ってやろうか? 僕を追放した事だよ。あの時殺しておくべきだったな」


「ほう。ここまでの旅の中で導師の力の使い方を学んだか」


「……知ってたのか? なるほど、あの時は信じてなかったフリをしてた訳か」


「完全に覚醒してからでないと、抽出できんからな。アストよ、その導師の力は素晴らしいであろう。自らで才能を生み出し与える、まるで神のようではないか」


「お前がこの力を使える機会はやってこない。僕がこの力を使って今この手でお前を葬り去るからだ」



 オーバードライブした僕のパワーは魔界で実感した。

 導師の奥義とも言えるこのオーバードライブは、今所有してる全てのシードを一気に宿し解放する技。

 通常はシードを入れ替えながら戦ってた。魂が一つの体に宿るのが一つであるようにシードも一つの体に宿るのは一つなんだ。

 オーバードライブは、そう言った制約が全部取っ払われる。

 全ての能力がプラスされ、全てのスキルも使い熟せる。


 そう、この最高の技で薄ら笑うお前の顔をグチャグチャにしてやるんだ。



「お前の体を回るその光の塊から、素晴らしいエネルギーを感じるぞ。それが導師の御技か……素晴らしい」



 僕はスッと掌をアーキノフへ向ける。



「サモンシード」



 ブゥゥン! ブゥゥン! ブゥゥン! ブゥゥン!

 聖騎士、拳聖、賢者、戦巫女、霊神術士 バーサーカーが一気に召喚されアーキノフを包囲する。

 こんな複数体を一度に召喚出来るのもオーバードライブで制約がなくなったからこその賜物だ。

 お前は何処にも逃げられない。誰かの横槍も入れさせない。



「おぉ……なんとそんな事まで出来るのか」


「感心してる場合か? お前は僕に殺されようとしてるんだぞ」


「ほう、そうか。儂を殺すか……確かに導師を相手に、儂はどんな力を持ってしても敵わんだろうな」



 だが、とアーキノフが続ける。



「儂を殺そうとする理由は何だ? 偽りの勇者と言ったからか? 言っておくが偽りの勇者と言ったのはゼノス達だぞ? 儂はただ報告を受けお前を処罰したに過ぎん」


「違う、そうじゃない」


「ならば追放した事か? 導師の力を信じなかった事か?」


「違う! 違う違う!!」


「何? ならば何だと言うのだ?」



 ブッチィィィン!!!

 僕の中で何かの抑制してる機能が壊れた。



「セシルを殺した事だよぉぉぉぉぉ!!!」



 僕は地を蹴ってアーキノフへ向かっていく。


 ――痛みや苦しみをその身に何度も刻んで、絶望し、恐怖し、セシルにした事を悔やんで僕に縋り許しを乞う、そのお前をこの手で殺すんだ――


 違う、今すぐにこいつの顔姿を僕の目の前から消し去りたい。とにかくこの怒りを思い切りぶつけたかった。

 アーキノフはただの人間、だから僕が何をしたのかも分からないまま一瞬で死ぬ事になる。

 歯痒い気持ちだった。もっと苦しめたかったんだ。

 だって僕の苦しみは、こいつを殺した後もずっと続くんだから。

 こんな一瞬で終わらせるなんて生温すぎるんだ。

 でも今は感情のままに動いた。

 そしてその興奮の波が引いた時、僕の殴った拳が掴まれている事に気づく。


 オーバードライブでパワーアップした僕の一撃を、戦獣祭の予選でコアを破壊した程の破壊力がある一撃を、片手で防いだんだ。

 アーキノフは人間じゃない。と、そう思っていたんだけど……



「セシルを殺した? 儂がか?」


「そ…………んな、まさ…………か」



 僕の拳を掴んでいたのは、アーキノフじゃなかったんだ。

 薄紫のウェーブがかった髪、透き通った声、あの時のままの、あの時と変わらない姿のセシルがいた。



「久しぶりだね……アスト」


第五十一話は本日20時を予定しております。

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