第四十九話 蘇る記憶
「幻竜の女王様と竜騎士の契約を?」
「はい! あの……そんなに前より老けました……?」
「あ、違う違う。大人っぽくなったって言うのはそう言う事じゃないよ」
なんと言うか……大人の女性の色気と言うか、話し方は確かに以前のレインベルのまんまなんだけど、落ち着いた雰囲気が容姿から感じ取れる。
女王様と融合したって言ってたけど、色気や大人の雰囲気が増したのは女王様のものなのかも知れないな。
髪だって金髪だったのに今は真っ黒だし、出るところはもっと……。
そんな事は今はいいんだ。それよりここが何処なのかレインベルに聞かないと。
「ラムリース城の地下牢です。あたし達、そこのヴェルグラってうさぎの魔族に餌として捕まっちゃってたんです!」
「なんだって!? ヴェルグラだって!?」
「アスト! ヴェルグラと言うと、リラティナスさんに呪いをかけた魔族でしたよね?」
あぁ。あそこに倒れてる兎人とも言うべきまさしく二足歩行型のうさぎの魔族。
あいつが呪いをかけた張本人。でもヴェルグラはライミフォンが粉々にしたって言ってなかったっけ?
どっちにしても、これはラッキーじゃないか。
床に寝かせてるリラを見ながら、僕はヴェルグラに話しかける。
「リラティナスの呪いを解いてくれ」
「……なるほどライミフォンの娘ですか。もう何年も前だと言うのによくも死なずにいられたもんですね……くっふっふ」
「この呪いはお前を倒さなきゃ解けないんだったら、容赦はしないぞ」
僕はレインベルに下がるように言って前に出た。
「勝ち目がない事は分かってるはずだ。もし今すぐ呪いを解けばこの場は見逃してやってもいい」
「それはそれは優しいですね。ですが、呪いを解く方法は教えられませんね〜」
それより、とヴェルグラが続ける。
「もっと素晴らしい取引をしませんか? そこのレインベルと言うお嬢さんを譲っていただけるなら……アーキノフ殿を殺せるチャンスを作りましょう」
「な、なに……」
くっふっふ、と笑う。
「貴方、アーキノフ殿に強い憎しみを抱いてますよね? それも復讐したい程の。恋人を目の前で殺されて……あぁそれはそれはお辛かったでしょう」
「恋……人」
僕の背後からボソっと呟いたネファーリア。
忘れていた訳じゃない。心の底にあった小さな灯火はネファーリアとの出会いで消えようとしてた。
このまま導師としてネファーリアやフュリン、大切な仲間達と共に新しい人生を送れたら復讐なんてしなくてもと思った。ネファーリアが僕を殺さなかったように、僕も赦すべきなのかと、旅を続けていく内にそう思えるようになってきた。
だけど、こいつの……ヴェルグラの一言であの時の記憶、あの時の感情がフラッシュバックのように、それも鮮明に再び僕を支配した。
セシル……あいつの言う通り、僕はやってもない罪を認めた。そうすれば解放してくれると思ったからだ。
でもあいつは……あいつは!!
「アーキノフは……どこにいる」
「おや、取引する気になりました? お嬢さんをこちらに渡しなさい。そうすれ」
「アァァキノフはぁ!! 何処だぁぁ!!」
「うごぉ!?」
冷静さを保てなくなった。ヴェルグラを吹き飛ばし、僕はただただ前に向かって進む。ネファーリアに止められようが、レインベルに止められようが関係ない。
この歩みを止める者は…………誰であっても殺す。
ここはラムリース城の地下牢。ここの何処かにあいつはいるんだ。
僕はネファーリアやレインベルの引き止める声を背中に、走り去る。
呼吸が荒くなる。ひたすら階段を駆け上がってるが、スタミナが切れた訳じゃない。この間も僕の心はセシルを殺されたあの時の感情で溢れていた。
殺してやる……殺してやる……殺してやる!
途中何人か兵士がいたが、僕の歩みを止めはしなかった。
敵わないと分かってるんだ。
そう、それでいい。僕の狙いはただ一人。
ラムリースの国王、アーキノフ!
僕の大切な……大切な恋人をあんな簡単に……。
許さない! 絶対に許さない!
第五十話は本日12時頃、間に合わなければ18時に投稿致します。
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