第三十四話 嘘は嘘を呼ぶ -Julius Side-
「あー助かったよ勇者様! また次もよろしく頼むよ!!」
俺は……一体何をやってるんだ。
レインベルの奴に散々言われたあの最悪の日、ハイビーストの顔を拝むどころか、入り口のゴブリン一匹すらまともに倒せない俺達を見て〝素質がない〟とか〝レベルゼロ〟とか好き勝手言いやがったから、「お前はクビだ」って言ってやったんだ。
勝手に仕切りやがるし、このパーティーのリーダーは俺だってのに、調子に乗りやがって!
「みんなご苦労様! じゃあ次の仕事いきましょう!」
まあ……勇者があんな泥臭いギルドなんかで仕事をすること自体ナンセンスなんだよ。
だから別の仕事を探す必要があった。
「おい……レインベル。お前はクビにしたはずだが、何でここにいる」
「クビ? あたしクビになんかなってませんよ? ほら、そんな事はいいから次の依頼です! えっと……あ、城下町酒場のマスターからですね! 指定されたお酒を業者から受け取って酒場まで運ぶだけの仕事のようですねー!」
レインベルが何かの紙を見ながら頷いた。
「ユリウスさん! これかなり高収入ですよ! やりましょうよ!」
「あぁーもう嫌だ! お前はクビ!!」
「嫌です!!」
「はあ!? 何なんだよ……何で俺達に付き纏うんだよ」
「アストさんから教わった事を全うしてるんです!」
またアストか……。
「僕は世界中みんなを救う事は出来ないかも知れない、だけど関わった人間の事は決して見捨てたりはしない。その人がどんな崖っぷちに立たされていても、どんなに軽蔑されても、僕が救えるなら見捨てない」
「……ふん。それとこれと何の関係があるんだよ」
「失敗した時にはすぐ人のせいにする! 誰かの失敗は鬼のように責めまくる! 嫌な事があったら直ぐ遠ざけようとする! そんなどーしようもない勇者ユリウス様でも、あたしは絶対に見捨てたりはしません!
って事です!」
アストめ……何が見捨てないだ……どうせカッコつけたかっただけだろ。
俺は知ってるんだよ、あいつとはガキの頃からずっと一緒に育ってきたんだ。あいつの事は俺が一番よく知ってる。
アストはそんな奴じゃない。力も知識も、見た目も、全部俺が勝って来た。
あいつはどうしようもない落ちこぼれだった。
「迷惑なんだよ。現に俺の役に立ってないだろうが! 説教ばっかり言いやがって!」
「何言ってるんですか! 役に立ってますよ! だって、あたしの口利きで仕事を貰えてるじゃないですか!」
まあ……確かに今、仕事にありつけてるのはこいつのおかげなのは認めるが……。
とにかくこんな女と片時でも一緒には居たくない。
それと、今となっちゃあの三人とも一緒にいる意味がなくなって来たな。
と、話をすればご登場だ。
俺と同じように依頼を終わらせて戻って来やがった。
「お! ユリウスおめぇもう終わってたんだな」
「私とヴァールも今終わったところだ」
「武器屋の店番、結構売り捌きましたよ! 私は商人の才能があるかも知れませんねぇ」
「なら転職しろよ、賢者ヴァールさんよ」
ラムリース城下町、中央広場にある大階段に座って話す勇者パーティーは、今じゃ誰も見向きもしない。
つい数日前だと中央広場に来る事も出来ないぐらい人だかりでいっぱいだったのに。
「ユリウス・ザルベックだな」
全く……誰だよ。「さん」か「さま」をつけろよ馬鹿が。
俺は勇者だぞ。
振り返ってみる。ガチャガチャと音を立てて、大階段を降りてくるのは六人のラムリース兵達だった。
「兵隊さんも偉くなったもんだな。世界を救う勇者を呼び捨てにするとはな。しかもこんな公衆の面前で……いい度胸だな」
「アスト・ローランの勇者偽証の件について、聞きたい事があると、我が国王アーキノフ様がお前を連れて来いとのご命令だ。ゼノス・ガーランド、クウォン・カミュラン、ヴァール・ロックス、貴様らも一緒に来い」
まさか、アストの件がバレたのか……。
おい、お前まさか!?
「わ、私じゃないわよ! 第一ずっと一緒にいたでしょ!?」
「俺達なんも悪い事してねぇよな!? なんでアーキノフ様に呼び出されてんだ!?」
「これは恐らくは……リミアの仕業か」
「あの女〜! 何言いやがったんだ!!」
いや、リミアじゃない。
「リミアが仮に何かを話したのなら、自分も当事者として捕まるはずだ。あいつは去り際に、「やる事がある」と言っていた。だから、アーキノフに告げ口する事はしないだろう」
「ついて来るんだ」
「あのう……あたしはどうすれば?」
「お前は何者だ?」
「レインベルです! レインベル・クルセウム! 勇者パーティーに入った新人です!」
「お前の事は聞いておらんが……勇者パーティーという事なら一緒に来るがいい」
「ありがとうございます! それでは行きましょう!」
連行されるってのに何が「ありがとうございます」だ……。
もしアストの件がバレていたら、追放だけじゃ済まないだろうし、死刑の可能性もある。
考えるんだ。金の事も何とかなったじゃないか。
今回も上手くいく。必ず上手くいく!
◆
遥かに年寄りで力も今の俺よりも弱い、偉大さも勇者である俺に劣ってると言うのに、何でアーキノフになんぞにビビらなきゃならないんだよ。勇者は世界を救う英雄だ。
一国の国王よりも断然上の立場なのは至極当然。
そう、心で思っていてもいざ目の前にすると、流石の俺でも腰が引けてしまう。
ヨボヨボの爺さんのくせに、あの眼光で全てを見透かされてる気分になってしまう。
いや、ここは乗り切らなければならない。
俺は人生の全てがかかってるんだ。全てが!
俺、ゼノス、クウォン、ヴァール、そしてレインベルが、謁見の間、アーキノフを前にして跪く。
「よくぞ来た。勇者ユリウスとその仲間達よ。早速だが、ユリウス」
「はい!」
「其方に聞きたい事があるのだ。アスト・ローランの勇者選定の儀式の時、何処で何をしておった?」
やっぱりその話だったか……。
くそぉ……どうする? 本当の事を話すのか。
いや、話してしまうと最悪な結末になる事は分かってる。
俺は即死刑だろう。
「ユリウスよ、其方に聞いておるのだぞ?」
「は、はい! ゆ、勇者選定の時ですよね! えっと……確か……」
よし……もうこの手しかない。一か八か……。
「ア、アーキノフ様!! 申し訳ございません!! 俺は、とんでもない事に加担してしまいました!!」
「なに? 加担だと? 詳しく申してみよ」
「アストが勇者選定の儀式の最中に、巨大な魔物を誘導し儀式を壊しました! それが原因でアストは勇者の力を失ったのです!!」
「な!?」
「なんだと!?」
「なんだって!?」
アストが言ってた事が本当だったってなるのは癪だが、ここで間違った選択をしてしまうと、俺の人生そのものが終わってしまう。
「心が捻じ切れる思いでした。俺の親友を陥れる、そんな事できる訳ないと、最初は断りました……。でも、実行しなければ親友を殺すと脅され止むを得ず……」
「……そうか。其奴はアストに恨みがあるのか?」
「はい……。先日もその事で、俺はアーキノフ様に真実を告げたいと、もう黙ってるのは心が痛いと、伝えましたが……。話したらお前の家族をめちゃくちゃにすると言われました」
俯いて溜息なんかも漏らしながら悲しみの顔をアーキノフに見せる。
「ある日、本当に親の財産を没収し、親は何処かに誘拐されてしまいました。言う通りにしなければ、もっと酷い目に遭うと言われたので黙ってました」
「ではユリウスよ、全てはその者が後ろで手を引き其方を操っていたと、そう申すのだな?」
「おっしゃる通りでございます」
「では聞こう。その最低最悪の罪人の名を」
俺は涙を浮かべ、黒幕への恐怖と辛さを演出する。
ここにいる誰もが俺に同情し、その黒幕が誰なのか知りたくなっている。
ふふ……アーキノフもちょろいな。
さて、そろそろ黒幕を出してやるか。
咄嗟に考えたにしちゃ我ながら上手くいったな。
「それは…………そこにいるレインベル・クルセウムです」
「「「なに!?」」」
「えぇーーー!? あたしぃぃぃぃーーーーー!?」
次の第三十五話は20時頃を予定しております。
ブックマーク、評価、本小説に関するご意見などいただければ幸いです。
下の方に進んでいただくと☆☆☆☆☆と表示されていると思うので、本作品への応援をお願いします。
大変モチベーションに繋がり、良い作品作りの励みになります。
貴重な時間を割いてお読みいただきまして、ありがとうございます。




