第三十二話 メリュナアド
町、いや、ドームと言った方が良いかな。
フュリンが言ってたけど、石で出来た壁はまるで巨人が住んでるんじゃないかと言うぐらいに高い。
巨大な門を潜ると、そこには何も無かった。
てっきりこの男のような容姿の魔族がその辺に歩いてるんだろうなと思ってたんだけど、誰もいないし何も無い。
男はそのまま中心に向かって歩いていく。
「アスト、とりあえず戦闘はなさそうやから元に戻っとくわ。ここまでの魔物と戦って結構魔力使ったし」
分かったと言ってフュリンを元に戻す。
そう言えばネファーリア、このドームの中に入ったら緑の粒が見えなくなったな。
それってもしかして、ここにいると吸い取られないのか?
と、聞いてみた。
「魔族達が集まる集落とかには、吸い取りを防ぐ手段があります。わたくしの領域にもそう言った所はいくつかあります」
《じゃあ魔力の低い人は、ずっとその中で暮らさなあかんねんな……。考えただけで気がおかしくなるわ》
「そう言った凌げる場所があるんだったら、少しは安心だな」
戦獣族の男がドームの中心で止まると、僕達の方を振り返った。
「ダラダラ歩くんじゃねーよ! 早く来やがれ!」
《偉そうに……べぇーーー!》
フュリンは男の顔の真ん前で、変な踊りをしたりして挑発をし始める。
自分の体が精神体で僕以外には見えてないと思ってるのか、結構大胆に攻めてるな……。
被害に遭ってない僕から見ても、鬱陶しい事この上ない。
僕達もドームの中心までやって来た。
周りには、草一本生えていない。
地面は石畳、石の壁に囲まれたドーム状の建物。
ここは一体なんなんだ。
と、考えてると地面に光の線が現れ僕達を囲んで行った。
複雑な模様が描かれていく。これは魔法陣?
「スキャン中だ。じっとしてろ」
「スキャン?」
「体や精神に何か異常がないかを確認しているのです。
これは重要施設には必ずあるもので、わたくしの領域……」
「おい、人間。
てめーの〝セティス〟なんかおかしいな。
ダブって見えるが、これはなんだ?」
「セティス? セティスってなんだ?」
「精神、魂と言う意味です。我々魔界ではそういう霊的なものをセティスと呼んでます」
「多分、フュリンの事だろうな。僕はある事故に遭って、フェアリーと融合してしまったんだよ……だから二重になってるのかも。その……セティスだっけ?」
「フェアリーとセティスを共有してるだと!? てめーまさか、勇者なのか! じゃ、じゃあさっきのフェアリーはてめぇのか!?」
「正確には勇者だった……だな」
「協定違反をした魔王の娘に、勇者か! こりゃあ、おもしれぇ土産だぜ! ライミフォン様もさぞお喜びになるだろうよ!」
スキャンが終わると、ピカッと地面が光った。
余りの眩しさに目を閉じてしまったんだけど、僕が次に目を開けた瞬間には、景色が一変していたんだ。
《うわぁなんやこれ……》
「す、すごい……」
「メリュナアドだ。どうだ人間! てめーらの世界にこんな美しい街はねーよな! へっへっへ!」
とてつもなく巨大な街の中に僕達はいた。
今僕が見える限界の先までビッシリと家や建物で埋め尽くされていた。
上を見ると夕焼けのオレンジ色をした空だった。
僕達はワープしてきたのか?
今いるのが魔界なんて信じられない。
人間界にもこんなに大きな街はないかも知れない。
「おい、あの大きな神殿が、ライミフォン様の城だ。ついて来い」
一際目立ってる真っ白な神殿、ここに来てすぐに目に入った。あそこに戦獣族の長がいるんだな。
神殿に向かう道中で、僕達はすれ違う魔族達の注目の的になっていた。
まあ、人間に魔王の娘だもんな。
「色んな姿の魔族がいるな……」
「ふん、ライミフォン様の領域はな、どんな種族だろうが関係ねーんだ。強い奴、強さを求めてる奴なら垣根はねーんだよ。例えそれが人間でもな。ライミフォン様が如何に偉大なお方か分かっただろ」
神殿の中に入ると圧巻だった。
この神殿を支えてる大きな柱、よく見ると複雑な模様で立体的に彫刻されている。
魔族はドクロを兜にしたりとか、目玉を数珠にして首にぶら下げてるとか、気持ち悪いものを好む。と言う僕の知識なんて全く役に立たない。
もっと言うと美的センスは人間よりも遥かに高いのが分かった。
今思うと、〝魔族が如何に醜い存在なのか〟を子供の内に叩き込んどきたかったんだろうな。
「ライミフォン様!! 失礼いたします!!」
大きな扉がグゴゴゴゴと音を立てながら、ゆっくりと開いていく。
いよいよ戦獣族の長ライミフォンとの謁見だ。
次の第三十三話は半日12時頃を予定しております。
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