第二十二話 最強タッグ -Nephalia Side-
「フュリン、そろそろ魔力が無くなる時間だけどまだいけそうか?」
「大丈夫やでアスト! この前よりレベルアップしてるんやで!》
「よし! 二人とも聞いてくれ。君達二人であの五体の相手をして欲しい」
「分かりました! 何か作戦が?」
「鍵が外れたのさ! 僕は新しいシードを生む! 今やらないとイメージが消えてしまうから、今やりたい!」
「おぉー♪ また鍵外れたんか! よっしゃ! あたいらで五体をなんとかしたる!」
アストには指一本触れさせませんよ。
わたくしとフュリンとでシャドウを全て食い止めます。
アストは安心してシードを生んで下さいね。
「行きましょう! フュリン!」
「やいやいシャドウども〜! まとめて相手したるからかかってこーい!」
わたくしの体の半分にも満たない小さなサイズなのに本当に堂々としてますね。わたくしも見習わなければなりません。
フュリンが先陣を切って五体の増度を集めてくれます。
わたくし達普段はいがみ合ってますが、戦闘になると不思議な事にちゃんと連携が取れるのです。
何も言わなくても。
「グォォォーーーン」
一体が雄叫びを上げると衝撃の波が押し寄せてきました。
わたくしとフュリンは空中へと回避。
アストへの被害はありません。被害が届かない場所へシャドウ達を誘導したので。
「困ったなぁ〜あいつらの増度を制御できへん。あの衝撃波で、全部弾かれてもーたわ」
「……恐らく知能が高いからだと思います。フュリン、ならば〝作戦N〟で行きましょう!」
「なんやそれ……そんな作戦あったっけ?」
「今作りました。わたくしが五体全部引き受けます。
戦巫女は回避に優れています。今こそ修行の成果をあの者達にぶつけようと思ってます。フュリンは援護を頼みます! アストの事も気にしていただければ、助かります!」
「んじゃ! N作戦で行くでー!」
「作戦Nです!」
「細かい事は気にせーへんの!」
知能があるとは言っても、まだまだわたくし達とは雲泥の差。
地面にゆっくりと着地し、五体のシャドウと対峙。
わたくしの大切な人を苦しめた貴方達は絶対に許しません。
「オマエガサイショノエサカ」
「シカモマゾクカ。ソレニシテハヨワソウダ」
「ダガ、ハラハミタサレルダロウ」
「申し訳ありませんが、貴方達の餌になるつもりはありませんよ」
五体全部がわたくしの方に気が向いています。
シャドウの基本戦法は形態変化による物理攻撃、破壊力があるのに動作は素早い。
あの時わたくしは、動きを捉えるのに必死でした。
しかし、あれからアストに稽古をつけてもらい、自分でも驚く程レベルアップしました。
今のわたくしならば……いけるはずです!
「イタダキマァァァァス!!」
「ゴォォォーー!」
「四方八方から確実に仕留めるおつもりですか……」
「グゥワァゼェロォォォ!!!」
「ニゲラレナイゾォォ!!」
「ギァァァァ!!」
戦巫女の特性。
相手の攻撃を紙一重で回避すると、その後の攻撃が連続攻撃である場合、如何なる威力、特殊効果のあるものでも必ず回避する事が出来る。
ですので、わたくしは第一撃のみに全力を注げば良いのです。
「遅いです!」
寸前でスッと回避。その後の攻撃はわたくしが何も考えなくても自動的に体が反応し、全方位からくるシャドウの猛攻を全て完全回避しました。
目を瞑っていても当たりませんよ。
シャドウ達の攻撃が止みました。次はわたくしの番ですね。
まずは手前二体。
と、その時空から赤い光が降り注ぎました。
「アヴィリィィィィム!! 魔力強化したでぇ! ネファーリアぶちかませー!」
「ありがとうございます!
はぁ! 瞬風狼炎殺!」
ザシュゥゥゥーーーン!!!!
大きく横一文字に斬り裂き、その剣線を追って火炎が走る連撃技。
もちろんこれで倒せたなどとは思いませんが、わたくしはターゲットを変更、残り三体の位置を確認します。
その内の一番遠いシャドウに、一瞬で相手の間合いに入れる【神風】で近づき、連撃を浴びせながら二体の方に押していきます。
「はぁ! やぁ! はぁぁ!」
「烈炎弾! レギアァァ! レギア!! まだまだいくでぇー! レグウゥーーーラ!!」
「グェォア! ンヌゥ!? モゴァ!? アゲェェェ!?」
「今です! 食らいなさい! 衝烈閃!」
ギュウゥゥゥゥゥーーーン!!!
やりました! 計算通りです! 真空の衝撃波が三体まとめて巻き込んで、最初の二体に向かって飛んで行きます。
衝烈閃はノックバック効果があるので、命中すると相手を吹き飛ばします。
つまり、今シャドウ三体は最初の二体に向かってノックバック、吹き飛んで行ってます。
しかし、それだけでは終わりませんよ。
この間にも、攻撃の手は緩めません。
わたくしは抜刀術の構えを取って魔力を溜めます。
「アストが使用されているのを見て、密かにこの技の特訓をして参りました……幻刀一閃。刀を持たずして放てる、戦巫女の裏奥義とも言える技です。この技の美点は、魔力でいくらでも強化が出来ると言う事」
「コノォォ! コムスメゴトキガァァ!」
「小娘? いえ、わたくしは魔王ザングレスの娘……ネファーリアです!」
「ナニガマオウダ! ソンナヤツ、トックニユウシャニ、タオサレタンダヨ!」
「テカゲンシテタラ、チョウシニ、ノリヤガッテ!」
「オイ! ハラヘッタ……ソロソロクワゼロ」
何かを仕掛けてきそうですね。
しかしその前にわたくしの技を食らっていただきます。
向こうが攻撃に移るギリギリの寸前まで、魔力を注ぎます。
「大獄炎焦熱ォォ!!」
流石ですフュリン! 空から巨大な火の塊がまるで隕石のように落下して参りました。
上級火属性魔術、大獄炎焦熱はわたくしが五体をまとめた事もあり、十分に全てを巻き込める範囲に入ってます。
「フュリン! ナイスタイミングです!」
「あったりまえや〜!」
「ギャァァァァァ!!」
「ジ、ジマッダァァ! ウエニ、ハエガイヤガッタ……」
ドッゴォォォォォォォォォーーーン!!!
大爆発と爆風でこの辺の木々が吹き飛びました。
凄まじい威力ですね。二体の消滅を確認、しかしまだシャドウは三体生き残ってます。
そうなのです。シャドウは生半可な攻撃ではすぐに再生してしまうのです。
「だからこそ、今この技を放つ時! 幻刀一閃!」
【神風】で間合いに入り抜刀、魔力で生成した青白く光る刀を一気に振り抜きます。
スパァァァァン!!
「グゲァ……」
「アゲァ!?」
「ギァ…………」
三体の体が真っ二つに割れました。
斬れ味は抜群、しかしこの程度ではまた再生されてしまいます。
「幻刀・返し一閃!」
「ジュボェァ……ガグェ……」
この奥義には続きがありました。
ニ撃目が存在していたのです。一撃目で仕留められなかった際、奥の手として放つ真の裏奥義。
一体の消滅を確認。残り二体。
フュリンの絶妙なタイミングで魔術を撃っていただいたおかげで、我々が有利。
上手くいけばアスト抜きで勝利出来そうです。
「オイ! モウガマンデキナイ! オマエヲクウゾ!」
「ナ、ナンダト! オマエ、ナニヲカンガエテル!?」
「え?」
「おい……嘘やろ……あいつら」
余りにも驚愕的な出来事にフュリンがわたくしの隣に降りてきました。
な、仲間をた…………食べた……!?
「イデェ! オイ! イデェゾォォ!」
「ング、アグアグ、モグモグ、マジィ……」
衝撃的過ぎて、わたくしも立ち尽くしてしまいました。
一体のシャドウはもう一体を完全に食べ尽くしてしまったのです。
その直後、とてつもなく目も眩む、強い光がシャドウからパァーっと放たれました。
目を開けていられない……物凄い威圧感と魔力の波を感じました。
「そ、そんなまさか……信じられへんぐらいの魔力やで……」
光が落ち着いた頃、目の前に存在していた者は、わたくし達が認識していたシャドウの容姿とは全く異なっていたのです。
第二十三話は8月19日8時頃を予定しております。
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