第1話「その猫、夜になると――」
まえがき
猫が好きですか?
犬が好きですか?
もし、あなたの家で眠っている猫や犬が、あなたの知らないところで言葉を話し、魔法を使い、世界の命運をかけて戦っていたとしたら――どうしますか?
昼間は、飼い主に撫でられ、餌をもらい、のんびり昼寝。
けれど、人間たちが眠りについた夜。
猫と犬たちは、人間の知らない異世界へと向かいます。
そこでは、古代文字の力を宿したルーンを使い、魔法を操る者たちがいました。
そして、重大な決断を迫られたときに使うのがタロット。
「この道を進むべきか」
「誰を信じるべきか」
「戦うべきか、それとも逃げるべきか」
一枚のカードが、彼らの前に未来への道を示します。
そんな世界に、世界征服を企む人間たちが現れます。
猫と犬たちは、平和な日常を守るため、ルーン魔法を手に戦うことになります。
……とはいえ、彼らも猫と犬。
どれだけ世界の危機が迫っていても、
「腹が減った」
「眠い」
「今日は散歩の日じゃないのか?」
なんてことを言い出す者もいます。
シリアスな戦いの中に、笑いあり。
胸が温かくなる日常に、恋あり。
そして、少しずつ明らかになっていく世界の秘密。
昼は愛されるペット。
夜は、世界を守る魔法使い。
これは、人間には決して知られてはいけない、猫と犬たちの物語です。
さあ、今夜も彼らの知られざる冒険が始まります。
第1話「その猫、夜になると――」
昼間の俺は、どこにでもいる普通の猫だ。
名前は――まだない。
いや、人間からは勝手にいくつかの名前で呼ばれている。
「ミケちゃん、ご飯だよー」
目の前に置かれた皿を見る。
カリカリ。
水。
そして、なぜか今日は猫用のおやつまである。
「……ふむ」
俺は皿の前に座った。
人間の前では、普通の猫らしく振る舞う。
それが、この世界で生きるための決まりだからだ。
「かわいい~!」
飼い主が俺の頭を撫でる。
「ゴロゴロ言ってる!」
……当然だ。
猫だからな。
だが、俺には人間には言えない秘密がある。
俺は、人間の言葉を理解している。
そして――
魔法も使える。
もっとも、昼間に魔法を使うような馬鹿な真似はしない。
人間に見つかったら、大騒ぎになるからだ。
俺は何食わぬ顔でカリカリを食べる。
「今日も平和だなぁ」
飼い主が笑った。
俺も心の中で頷いた。
――そう。
昼間は、平和だ。
問題は……夜だ。
* * *
午後十一時。
家の明かりが消えた。
飼い主が眠ったのを確認すると、俺はゆっくりと立ち上がった。
「さて……行くか」
窓辺へ向かう。
尻尾を一振り。
すると、床に淡い光が浮かび上がった。
複雑な文字が円を描く。
それは、古代から伝わる魔法文字――ルーン。
「開け」
俺が前足を乗せる。
光が一気に広がった。
次の瞬間。
そこにあったのは、いつもの部屋ではなかった。
巨大な森。
月明かりに照らされた街。
そして、あちこちを歩き回る猫と犬。
「遅いぞ!」
声をかけてきたのは、一匹の大きな犬だった。
「悪い。飼い主がなかなか寝なくてな」
「お前、また人間に撫でられてたんだろ」
「……悪くないぞ」
「この裏切り者!」
犬が吠える。
俺は笑った。
ここでは、俺たちはただのペットではない。
魔法を使い、言葉を話し、仲間と暮らしている。
そして、この世界には――
猫と犬だけではなく、人間もいる。
ただし、人間のすべてが俺たちの味方というわけではない。
最近、この世界では妙な事件が起きていた。
村が襲われる。
魔法の道具が盗まれる。
猫や犬が突然姿を消す。
そして、その事件の裏には――
世界征服を企む人間たちの存在がある。
「今夜も調べるぞ」
犬が言った。
「ああ」
俺は腰につけた小さな袋から、いくつかのルーン石を取り出した。
そのときだった。
森の奥から、低い声が響いた。
「……来る」
全員が振り返る。
暗闇の中。
赤い光が二つ浮かんでいた。
「人間か?」
「いや……違う」
俺はルーン石を握りしめる。
すると、赤い光の正体が姿を現した。
黒いローブをまとった人間。
その手には、巨大なルーンが刻まれた杖。
人間は不気味に笑った。
「見つけたぞ……魔法を使う猫ども」
俺たちは身構える。
そして俺は、初めて理解した。
今日までの平和は――
もう終わったのだと。
* * *
その夜。
俺は初めて、人間と戦った。
あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
『うちの猫、夜になると人間と戦ってます』は、昼間は普通のペットとして暮らす猫と犬たちが、夜になると魔法使いとなって人間と戦う――そんな「もしも」をきっかけに生まれた物語です。
ルーン魔法で戦い、タロットで未来を占う。
そして、戦いだけではなく、恋をしたり、仲間と笑ったり、飼い主との何気ない日常を過ごしたり。
シリアスな場面の中にも、猫や犬ならではのちょっとした笑いを入れながら、読んでいて楽しい物語にしていきたいと思っています。
もしかすると、あなたの家で眠っている猫や犬も、夜になったらこっそり別の世界へ行っているのかもしれません。
「今日、うちの猫が妙に真剣な顔をしている」
そんなときは、もしかしたら――何か大きな事件が起きているのかも
昼は愛されるペット。
夜は、世界を守る魔法使い
それでは今夜も――猫と犬たちの、秘密の冒険がはじまってるかもしれません。




