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プロローグ 『ランタン報知』
清廉なる国民的俳優コンラート・ヴァイス、人妻と密会 ──祝宴の夜、写し絵が捉えた「素顔」
本紙が独占入手した一枚の写し絵が、いま王都の演劇界を揺るがしている。
場所はさる興行主催の祝宴、その奥まった一室。燭台の灯りの下、国民的俳優コンラート・ヴァイス氏(四十八)の腕の中に若く美しい夫人がしなだれかかっている。夫人の細い指は氏の胸元にかかり、氏の手は夫人の背に添えられて──これが「密会」でないなら何と呼べばよいのか。
夫人は興行界の有力者P氏の妻である。つまり、他人の妻である。
読者諸賢はご存知だろう。ヴァイス氏といえば舞台一筋、浮いた噂の一つもなく「劇場の聖人」とまで呼ばれた男だ。夜会にも顔を出さず稽古場に籠もる求道者──それが世間の知る「コンラート・ヴァイス」だった。
だが、聖人の仮面の下の素顔がこれである。
劇場関係者の一人は本紙に対し匿名を条件にこう証言した。「以前からああいう噂はあったのです。ただ皆あの方の名前に遠慮して口を噤んでいた」
聖人か、それとも稀代の女たらしか。
本紙は引き続きこの問題を追う。 続報を待たれよ。




