エンディング
## エンディング
### 帰り道のある人生
大滝王国。
かつて。
“戦争をどう終わらせるか”
を真面目に考えた王がいた国。
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有条件降伏。
時限統治。
敵視政策停止。
軍縮。
維持可能な平和。
それらは、
最初は弱腰だと笑われた。
だが。
数十年後。
世界は少しずつ気づき始める。
「壊れないこと」にも価値があると。
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その思想は、
国家だけでは終わらなかった。
冒険者。
商人。
村。
家族。
人生設計。
色んな場所へ染み込んでいった。
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## フレデリック・ラメー
フレデリック・ラメーは、
老後、
冒険者ギルドの記録室責任者になった。
彼が残した資料は、
後に教本として使われる。
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「撤退判断基準」
「補給と生存率」
「無理をしない長期運営」
若い冒険者たちは、
最初それを地味だと思う。
だが。
長く生き残った者ほど、
彼の資料を読み返した。
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## ロナルド
ロナルドは、
地方護衛学校の名物教官になった。
授業で必ず言う。
「槍術より先に」
「帰る計画立てろ」
生徒たちは笑う。
だが。
卒業後、
その意味を理解する。
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## ドナシアン
ドナシアンは、
地方巡回隊長となり、
多くの村を守った。
彼の部隊は、
死亡率が異常に低かった。
理由は簡単。
無茶を禁止したから。
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## バルテルミ
バルテルミの工房は、
やがて王国補給制度の一部になった。
保存薬。
防腐剤。
長期遠征食。
彼の研究は、
多くの命を救った。
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## アクセル
アクセルは、
最後まで自分を賢いと思わなかった。
だが。
橋崩落。
土砂崩れ。
盗賊伏兵。
彼が「嫌な感じする」と言った場所は、
何度も事故を防いだ。
人々は後に言った。
「アクセル勘」
と。
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## 小野耕作
小野 耕作
彼は最後まで、
帰り道亭を続けた。
若い冒険者へ。
旅人へ。
商人へ。
いつも同じことを言う。
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「無理するな」
「撤退金残せ」
「壊れる前に休め」
「帰れ」
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若い頃は、
英雄になりたかった者もいた。
伝説を夢見た者もいた。
だが。
長く生きるうちに、
彼らは理解した。
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本当に難しいのは。
勝つことではない。
続けること。
壊れないこと。
終われること。
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## 最後の四月
何十年後かの春。
帰り道亭。
白髪だらけになった元仲間たちが、
また集まっていた。
人数は減った。
来られない年も増えた。
病気。
仕事。
孫の世話。
人生。
色んな理由がある。
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小野は、
昔と同じ濁酒を飲みながら笑う。
「ほらな」
「死ぬまで全員集合なんて無理だったろ」
ロナルドも笑う。
「でもまだ来てるじゃないか」
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外では。
次の世代の子供たちが、
木剣を振って遊んでいた。
だが。
昔より少し違う。
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「撤退ー!」
「補給切れー!」
「無理するなー!」
そんな遊び声が聞こえる。
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小野が吹き出した。
「夢が地味だなぁ……」
フレデリックが静かに答える。
「でも長生きしますよ」
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夕暮れ。
街道。
商人が歩く。
旅人が笑う。
戦争で焼けなかった道。
維持された橋。
残った村。
普通に続く生活。
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それは。
誰か一人の英雄が作った世界ではない。
“壊れないように設計し続けた人間たち”
が積み上げた世界だった。
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そして。
帰り道亭の看板は、
今日も静かに揺れている。
### 「帰り道のある人生を」




