①目が覚めたら男友達に化かされました
化け狸の末裔と理学療法士志望の男子のお話スタートです!
中身はBL、見た目はNLです。少しでも苦手な方はご注意下さい
目覚ましのアラームが鳴っている。昨日飲み過ぎたせいで体が重く音を止めるために腕を伸ばすのもしんどい。時間が経てばどうせ自然と止まるから俺はもうそのままでいいかと放置を決め込んだのだが。
「うるせーなぁ、早く止めろよ〜」
そう言えば泊めてやった奴が居たんだと思い出すがその声に違和感を覚えて一気に覚醒する。がばりと体を起こし一人暮らしのワンルームの中を見渡すと、宅飲みの残骸が残るテーブルの脇でタオルケットが微かに蠢いている。そこには昨日たまたま再会し意気投合した結果そのまま飲み明かした同じ地元出身の男友達が寝ているはずだった。
俺は目覚ましを止めると恐る恐る床に転がる友人に近き、くるまっているタオルケットに手を掛ける。ゆっくりと捲り驚愕した。
(ちょっと待て!なんだこれ!?どう言う事!?)
まさか寝ぼけているのかと思ったが感覚もしっかりとあるからそんな事はない。しかし、現実にあり得ない光景に動揺が収まらなかった。掛けていたタオルケットが取り上げられて眩しそうにしながらそこに寝ていた奴は不満を口にする。
「な、んだよ〜。まだ眠ぃんだけど」
そいつは気怠げに起き上がるが身に纏う俺のTシャツは大きく、ずれ落ちる首元からは細い左肩が覗いていて俺を益々動揺させる。
「お、お前、夕貴?」
「朝から何言ってんの、他の誰だっての」
昨日再会した友人の夕貴であると認めるそいつは眠そうにしながら頭を掻いている。腕が動くたびに、支えるものがないからか容易く弛む胸元は、俺の朝の生理現象を増長させるからけしからん。仕方なく俺は枕を腹の前に抱き込む。
頭を無造作に掻いていた夕貴はある一箇所に触れるとパッと目を見開いた。眠そうだったのが一変して焦るように両手で頭に付いてるものを確認する。次に振り向いて腰の辺りを確認して視線を戻す顔にはヤバいと書いてあるみたいだった。
「あー、いや、これはだな、、」
何をどう話そうかと迷う夕貴の声は昨日のそれよりも高い。それとは反対に背は低く全体的にフォルムは丸く柔らかそうで、俺が再会した夕貴とはまるで別人だった。
「夕貴なんだよな?」
「あー、うん。まあ」
夕貴は視線を外し頬をぽりぽり掻いて思考を巡らせているみたいだったが、諦めるようにため息を吐いた。
「見られちまったもんはしょうがないか。実はさ異形の末裔ってやつなんだわ、俺。因みに化け狸な」
夕貴の明るい茶髪から覗く丸い獣耳に床の上を動く太い尻尾は確かに狸のようだった。
「マジか。俺初めて見た」
「こんなんなる奴は今じゃそう居ないらしいからな。ったく、今日って新月なんだなぁ。油断したわー」
夕貴は胡座で片手を顔に当て項垂れるが、広い首元から深い谷間が見えそうで俺は思わず喉が鳴ってしまう。頼むから無防備に動かないでくれ。
「そ、その!末裔達って、新月だと皆んなそうなるのか?」
「あー、末裔の誰もがって訳じゃないんだって。先祖返りって言って稀に種族の特徴やら性が出る奴が居て、そう言う奴は新月にはこうやって自分じゃどうしようもない症状が出るんだよ。人狼種みたいに満月って場合もあるけど」
「新月とか満月って言うけど、今は朝なんだけど」
目覚ましは朝にしか鳴らない設定だし、窓からは眩しい光が入り込んでいる。
「日食ってあんだろーが、真昼間に月に太陽が隠されるあの瞬間。あれが新月なんだから夜も昼も関係ねーの」
「なるほど。じゃあ今日は、寝ている間に新月の瞬間を迎えてたって事か」
「そう言う事ー」
「化け狸だから見た目そんなんなん?」
「そ!ご先祖さまは美女に化けるのが得意な一族だったんだと。だから女に変化するみたいなんだわ。それは良いんだけどさー、この耳と尻尾が厄介なんだよなあ」
「何か問題なの?」
俺の疑問に夕貴は呆れてため息を吐く。
「晴翔もさっき俺みたいなの見た事ないって言ってたじゃん?」
「ああ、うん。そもそもそんなに居ないんだろ、先祖返りが」
「だからこんな状態で街中歩いてたら目立つし、怖がらせちゃうだろ。うちの一族は掟で異形の力を使って人を驚かしちゃいけない事になってるから、こんな姿で出歩けないんだよ」
俺は十分驚かされたんだがそれは掟に反した事にならないのか疑問だったが、俺の考えを見越すように「あくまで故意に驚かす事な」と夕貴は付け加えた。
「でも、化け狸の能力が使えるんなら元の姿に化け直せば良いんじゃないの?」
「それが出来れば苦労しねーよ」
「出来ないのか?それじゃいつもどうしてるんだよ」
「丸一日このまんま引きこもって過ごすんだよ」
「一日経てば元に戻るのか?」
「…うん」
何か歯切れが悪い返事が気になるが、自分ではどうしようもない症状を抱える夕貴が不憫だった。毎月強制的に外出禁止状態になるなんてあんまりだ。
「そっか大変なんだな。それなら、気にしなくて良いからもう一泊してけよ」
「悪いな」
「いいって。取り敢えず俺は大学行くけどゆっくりしてて。何か必要なもんあれば帰りに買ってくるし」
話しているうちに俺自身も落ち着いたから立ち上がりハンガーラックの前で着替えを始める。背後で夕貴が青ざめているのにも気づかずに。
お読み頂きありがとうございました!
次回は【化け狸はピンチ】です!お楽しみ下さい♪




