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空読み姫の結婚 【書籍 2/3発売予定】  作者: 橘ハルシ


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28/29

余話 小さな独り言

こちらのお話は、本編の小話的なもので前話の続きではありません。


 ボクに妹ができた。


 その子は突然やってきて、畑の豆をでっかくした。なんだこいつは、と驚いて物陰から観察していたら、時々不安そうな表情を浮かべることに気がついた。

 よくよく観察すれば、あの子以外にボクの知らない人はいない、ということは。


(ああ、あの子も一人でここに来たんだ……)


 ボクも小さい頃に一匹でこの家にやってきたから、心細くてたまらないという気持ちに覚えがある。


 だけど、小さな子供はボクをいじめる。アルヴィたちはそんなことをしないけど、この子はボクを叩いたり蹴ったりするかもしれない。ボクは用心のため、しばらく隠れて様子を窺っていた。



(そろそろ、大丈夫かな?)


 そのままうっかり寝てしまって、起きた時には日が暮れていた。お腹も空いていたので、そうっと皆が食事している場所へ足を踏みいれると、あの子はいなかった。


(帰っちゃったのかな?)


 なんだ、ただのお客さんだったのか、といつものように足音を立ててトコトコ歩いていく。


「あ、ティクル。こんな時間までどこに行ってたのさ。ネイリッカはもう寝ちゃったよ、君が帰って来ないから紹介できなかったじゃないか」


 兄貴分のアルヴィがぷんすか怒っていたけれど、それは無視して、いつも程よい距離感で親切にしてくれるカイに向かってにゃあと鳴いてご飯を催促する。


「はい、ご飯ですよ。ティクル、ネイリッカさんの観察は終わりましたか? 私は貴方をいじめたりしない、いい子だと思いますよ」


 カイには行動を見抜かれていたようで少し気まずくなった。フンと聞いてないふりをしてご飯を食べ、顔を念入りに洗う。


(あの子はネイリッカというらしいけど、もう寝ちゃったのか。……ふーん。とりあえず、いつ会ってもいいように身綺麗にしておこう)


 やれやれ、と全身を毛づくろいして横たわれば、アルヴィがボクの自慢の薄茶の毛を丁寧にとかしてくれた。


 うーんと伸びをしてトトトッと二階へ行く。じっと耳をすませば、ボクとアルヴィの部屋の隣に人の気配を感じた。


(ん? もしや隣の部屋にネイリッカとやらが寝ているのかな?)


 全部屋に付いているボク専用の扉からスーッと入り、壁際に置かれているベッドの側の机に音を立てずに飛び乗る。掛け布の中をそっと窺うと、穏やかな顔で眠るあの子がいた。


(……寝てる。全身綺麗にしたところだから、このまま挨拶したいな。目を開けないかな?)


 枕元に忍び寄り、フンフンとにおいを嗅いでもネイリッカは起きない。


(初めてのにおいだ。ええと、ネイリッカはボクより後からやってきたから、妹だよね。そうか、ボク、お兄ちゃんになったんだ)


 そう気がつくとなんだか心の奥がポワッとなって尻尾がピンとなった。ボクはそのまま尻尾を膨らませて、しばらく寝顔を眺めると、彼女の足元に移動してくるりと丸くなった。


(最初の夜は心細いだろうし、お兄ちゃんのボクが側にいてあげないと)


 翌朝、飛び起きたネイリッカに吹っ飛ばされて思わず怒ってしまったけれど、直ぐに仲直りした。


 だってボクはお兄ちゃんだからね!


 その後、ボクは妹であるネイリッカを陰から見守ったり、村を案内してあげたり、兄としてのつとめを果たすべく行動した。


「わーっ、牛さん、髪の毛を食べないでくださいっ」

「きゃーっ、ニワトリさん、怒らないでくださいーっ」

「わあ、これは大きなミミズ……じゃなくて、蛇では!?」


 ネイリッカは、賑やかだった。元気いっぱい、色々なことに挑戦するのはいいのだけど、慣れてないからおっかなびっくりで家畜たちの機嫌を損ね、ボクは牛に髪を食いちぎられたネイリッカを慰め、ニワトリを威嚇して追い払い、蛇を速やかに退治した。


(なんて危なっかしいんだ。ボクが世話して守ってあげないと!)


 それから毎日のように、ネイリッカについてまわって護衛をしていたが、ある日突然、僕の出番が減っていることに気がついた。


「きゃーっ!」

「リッカ、大丈夫?」

「わっ」

「リッカ、ほら、僕に掴まって」


(……あれ? ボクより先にアルヴィがネイリッカを助けている?)


 それからボクは、じっと二人を観察した。


 アルヴィはネイリッカをよく見ている。そして、危ないことになる前に自然に手を貸したり教えたりして見守っていた。


 それを確認したボクは、尻尾をくるりと回して久しぶりに一人で森へ行った。なんだか、アルヴィに任せておいて大丈夫な気がしたから。


 久々の森は楽しくて、僕は力一杯走って飛び跳ねた。なんだろう、育児から解放された気分ってこんな感じ?


(まだ完全に安心したわけじゃないけど、たまにならネイリッカの護衛を代わってあげてもいいかな)


 そんな風に思っていたのに、いつの間にかネイリッカの側はアルヴィのものになっていた。


 なんだかちょっぴり口惜しくなったボクは、ネイリッカのカバンにもぐりこんでメッツァへついて行くことにした。


(ふふん、こんなこと、アルヴィにはできないだろ!?)


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


ハイ、珍しくティクルさん視点で書いてみました。

結構楽しかったです。


そして、ついに、書籍の発売日が決定いたしました。

2026年2月3日、節分の日に書店に並ぶ、らしいです!

ネイリッカが来た年のヤルヴィでの日常や、メッツァでも暮らしなどを書き足し、

文字数だけで言えば倍以上に増量されております。あの人やあの人が活躍も!?


書影はまだなのですが、由貴海里先生の美しい絵で、

なんか5割増しに美麗なアルヴィが見られます。

他の人もそれは可愛く、美しいのでもし見かけましたらお手に取ってみてやってください。


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