最終話 初めまして、じゃないよね
三度目の音を聞いた翌日。
学校は、いつもと同じ朝のざわめきに満ちていた。
でも、彼女の中からは、俺の存在だけが静かに抜け落ちている。
それでも、同じ校舎で、同じ時間を過ごしている。
それが、なんだか不思議だった。
昼休み。
廊下の向こうから、彼女が歩いてくる。
俺の前を通り過ぎるはずだったのに、なぜか足を止めた。
ゆっくりと振り返り、じっと俺の顔を見つめる。
「……変だな」
その声は、どこか懐かしい響きを持っていた。
「どうしたの?」
自然にそう言っていた。
彼女は少しだけ笑った。
でも、その笑顔は戸惑いを含んでいた。
「初めまして、じゃないよね。なんか……そんな気がするの」
胸の奥が、静かに熱くなる。
でも俺は、その意味を説明することはできない。
「そう思うなら……。きっと、そうなんだよ」
彼女は目を細めた。
まるで思い出そうとしている人の顔だった。
「ねえ」
「なに?」
「放課後さ……。ちょっとだけ、一緒に歩かない?」
「……うん。いいよ」
放課後。
二人で昇降口を出る。
夕方の光が、廊下に長い影を落としていた。
そのとき、旧校舎の奥から、小さく金属の噛み合う音が響いた。
ガコン。
彼女はその音に、はっとしたように振り返った。
「……今の音……よかった」
彼女はそう言って、小さく息を吐いた。
『タイムマシーン・ロッカー』
── 完
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
P.S.「 文学フリマ大阪14」に出展参加いたします。
by MMPP.K




