表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/83

出陣

「森脇司令! 例の里から数名の移動を確認しました」


「数名とは何人だ」


「は! 40前の男1名、女11名、合計12名が里より封鎖門へ移動を開始

 しているそうです。なお男は武器の所持は見られませんが、女は全て

 薙刀や刀を所持しておるとのことであります」


「わかった、本部には連絡済か?」


「いえ、まず司令にご報告して判断をと思いまして」


大地震が起こって化け物共が現れ、治安維持に奔走してやっと収まった時期に里の女に連れられて

一人の男が来た

見たところ何の変哲もない中年に成り掛けの冴えない男というのが印象に残っている

封鎖門で里への入門手続きを済ませ里への道を歩く二人を迎えたのは

まさに里の者が全て集まったのではないかと思える程の人数と静けさだった

自衛隊でも大人数による行動はあるがあれほどの規律を保ってはいない

静寂の中での無駄の無い行動 数名の幹部と見ていたがどうすればあれ程の

行動が出来るかと後で議論になり教育方針を見直した程であった


「何処へ出かけるかが問題ではあるが移動を止める規則は無い

 通常の手続きで処理しておきたまえ

 本部には私から連絡しておく」


「了解しました。

 通常の手続きを持って処理致します」


封鎖門は通常の処理をしていた


「行先と移動する人の名前をご記入下さい」


すると刀を腰に差した女が出て来て


「私が代表で書きましょう、それで宜しいですね」


「はい、かまいません」


「それと司令様に一言ご挨拶をしたいと思うのですが

 お時間を取って頂ける様に伝えておいて下さいませ」


「司令に確認を取ります

 まずは書類手続きをお願いします」


そう言って渡された書式にスラスラと女は記入していくが


「あ、主様は如何しましょう?」

 東京でのお名前で宜しいですか?」


後ろの方から、其れで良いと声が返ってくると

また記入をし始める

やがて書き終えたのか書類を手渡しながら


「尊きお方の御名が書かれております 

 大切に扱うように」


其の頃に無線で基地司令と面談が出来ると連絡があった

それも申し伝えると頷くように


「お世話をかけます

 では我らは司令殿の元へ向かいます」


槍や薙刀、刀を所持した者を司令の部屋へ案内は出来ない

そう言う自衛隊員の言い分はもっともである


「武器でなければ良いのじゃな?」


そう言われてはそうとしか答えようがない


「ならば扇子にでもしておけばよい」


そう言われた女たちはすぐさま武器を扇子に変えて帯に挟み込む


「これでよかろう」


そう言いながら微笑む女は非常に美しかった


基地司令の部屋に通された一行は長いテーブルを挟んで二名だけが席に着き

残りは背後に立つ


封鎖門で記入された書類を見ながら司令は頭を抱えそうになっていた

前回の騒動からこの基地の司令は森脇から変更されないままでいた

里の者との交流は森脇司令を通じて国の各所に通知されている

今回も特大級のトラブルになりそうな予感は左右に座っている幹部達も

感じているらしく顔色は悪い

話があるそうだが、聞かなければまずいし聞いてもまずそうな雰囲気が

ひしひしと伝わってくる

それでも聞かなければと腹を括り


「初めまして、私は基地司令を預かっております森脇と申します

 この度のご一行のお話とはどの様な事でしょうか?

 国からは万事遺漏無き様要望通りにと以前の通知で承っておりますが?」


そう問いかけると一人の女が後ろから進み出て


「私は老女を申し使っております橘と申しまする

 これからのお話に事についてご説明します」


「まず一つ

 これより我ら一同は主様と誾千代様のお供として東京へ向かいます

 二つ目 

 以前にお預けした子を返して頂きます

 三つ目

 富士山の元にある天魔の洞窟に入ります

 この三つが通知となります。それで自衛隊に東京までの移動をお頼みしたいのです」


「はい、三つの通知は承りましたが、自衛隊による移動となりますと

 新幹線や商業航空機の様な快適さは有りませんがかまいませんか?

 以前お預かりした子は現在自衛隊に於いて第一線にて任務中との報告を受けて

 おりますので、現在の勤務地や行動任務を確認してのお返事となります

 また、富士のダンジョンは封鎖中ですので確認が必要です

 東京に移動している間には全て確認が取れているとは思いますが」


「それではここでお話する事はもうないのですぐに移動したいと存じますが」


「移動に関してはこれより準備させますのでお待ち下さい

 それと確認ですが、この書類にあります

 田中さんと立花さんについてお聞きしたいのですが宜しいですか?

 お二人の立場をお聞きしたい」


里の者は全員が立花もしくは橘姓を名乗っている

立花姓は里の上位者であるのは判っている

そこに田中姓が入った、この事に国は理解しがたい思いでいる

あれ程までの閉塞的な里は無いからである


そう言われて老女橘は椅子に座っているおそらく立花姓であろう女に対して

確認を取っている


「良い、司令殿には我らの世話をしてもらわねばならぬ故其方から

 伝えるが良い」


「承りまして御座います」


老女橘は森脇司令に向き直ると


「こちらにおられるお方は、我ら立花家の里の守護神であらせられる

 立花誾千代様で在らせられる

 またこちらのお方は誾千代様の主様であり我ら里の者が唯一お頼み申す

 神で在らせられる」


そう告げた途端背後に控えていた女達が一斉に正座して頭を下げた

その行動にギョっとした態度を見せる司令達であったが

老女橘は委細気にせず正座した女達に向って


「守護を」


と声を掛けると女達は一斉に立ち上がり元の位置に立つ



 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ