神国の行方 2
龍母達が慌てて里に飛んで帰ったが
なんか嫌な予感がするんだよなぁ
あいつら絶対何かやらかすだろう
「主様、誾千代殿のお風呂も終わり
お食事のご用意が出来ました
どうぞお越しください」
そう言って呼びに来たのはテレサだった
「お、っテレサお前もお手伝いに来たのか」
「はい、アフロディーテ様にお手伝いを頼まれまして
急いで参上致しました」
「そうか、ご苦労さんだな
宜しく頼むぞ」
そう言ってテレサの後ろに付いていくと
家の中では無く庭にテーブルを出して料理を並べていた
「ほう、なかなかに旨そうだな
誾千代殿は嫌いなものはないかな?」
「はい、私は好き嫌いは御座いませぬが
何やら見た事もないお料理の数々
食べ方すら判りませぬ」
「なに、食い方なんか気にするな
好きな物を好きなように食うのが一番だ」
「はい、有難きお言葉
それでは頂かせて頂きまする」
それから賑やかに食事が始まった
食事も粗方食べ終わり一息ついた頃
「さて、誾千代殿
そなたを戻す事にするが
何か希望はあるかな?」
「はて、希望とは?
我ら立花の者は武運拙く加藤殿に柳川の城を明け渡す事に
決まっておりまするが我らの力不足ににて領民には大変な苦労を
掛けました
せめて宗茂殿の無念を晴らすべく最後の戦いを望んでおります
我ら立花の名を後々まで残るような戦をして見せましょう」
「それでは宮永からの出陣されるか」
「なぜあなた様がそれをご存じなのですか?
確かに私は宮永に分かれて住んでおりましたが
趨勢はすでに決まっております
ならばこそせめて一太刀鍋島殿にかからねば宗茂殿の無念も
晴れますまい」
「そうか分かった
そなたの手助けをと考えていたが
いらぬことはするものではないな
今宵はゆっくりと休むがよい
明日、送って差し上げよう」
「はい、有難き幸せに存じます
それでは休ませて頂きます」
さてと、誾千代殿も休んだことだし
神国の片付けでもするかなぁ
「おい、おれはちょっとグリウスに会ってくるから
留守番しといてくれよ」
そう言って誰にともなく声を掛けて
森から出て行った
森を出ると帝国の騎士たちが待ち構えていた
「なんでお前らいるの?」
「公爵様より森のお方がお出でになられたら
お迎えせよとのご指示で御座います
どうぞあちらの馬車にて我が国までおいで下さいませ」
「あー、ちょっとグリウスに会うだけだから
面倒くさいのはいいんだけどなぁ
それともあれか、俺が乗らないと
お前らが罰でも受けるの?」
「いえ、我等が罰を受けることは御座いませぬ
すべて森のお方の思う様にとの仰せに御座います
ですので宜しければ馬車での移動をと思いまして」
「そうか、それなら断る理由もないな
よろしく頼む」
そう言って馬車に乗り込むと
騎士団長らしき男が
「森のお方を城内までお届けする使命を
賜った
その方ら、命に代えてもお守りするのだ」
「一名は早馬にてお城にご報告するのだ」
その掛け声とともに騎士団に囲まれた馬車が進みだす
馬車は王国の貴族用らしく豪華な造りになっていて
中にはメイドが二人乗っていた
メイド達は俺が乗り込むとスカートの裾を持ち上げ
「初めてお目にかかります
森の主様のお世話をさせて頂きます
お城に到着するまで如何様でもお申し付けくださいませ」
そう言った二人の顔を見ると血の気がない
「なあ、聞くんだが
気分でも悪いのか?
顔色が良くないが」
「恐れながら申し上げます
公爵様よりお聞きいたしておりますのは
森の方のご機嫌を損ねると帝国が消し飛ぶので
万事間違いのない様にとの仰せで御座いました」
あの野郎、俺を何だと思ってるんだろう
「ああ、心配せんでもいい
お前らに罪なない
消えるのは神国の方だ」
「恐れながら申し上げます
神国が消えるとは?」
「文字通りこの世界から神国が消えるだけだ」
「その様な事があり得るのですか?」
「朝までには片付くから心配しなくていい
それよりお茶を一杯くれないか?」
「え、お茶で御座いますか
はい、直ぐにご用意いたします」
そう言ってメイド達は青い顔のままでお茶の用意を
始めた
馬車自体は生活魔法で揺れが少ない様になってるが
二人係で用意したお茶は緊張なのか揺れまくって
カップからこぼれてしまっている
二人共さらに青い顔になってぶるぶる震え始める
そしてパニック状態になり・・・
馬車の扉を開けて飛び出した
時速で云えば馬車の速度はおそらく20K程度だそうだ
だが扉の後ろには後輪がある
馬車から飛び出すと後輪に轢かれる事になる
面倒くさいが死なれても困るしな
そう思い
「戻れ」
そう言うと
メイド達は戻ってきた
何が起こったか分からない顔をしている
「あのな、面倒くさいからそういうのは止めてくれるか」
そう言った途端に馬車が止まる
護衛の騎士団長が
「失礼します」
と声を掛けて入ってくる
「失礼ですが何か御座いましたか
メイドが飛び出したように見えましたが」
「なに、気にするな
茶がこぼれただけだ」
「お茶がこぼれたと?」
「そう、それだけのことだ
気にすることもあるまい
それとも何か
茶がこぼれたら誰か死ななければならんのか?」
「いえ、そういうわけでは御座いませんが
失礼があったのかと」
「何もない
気にすることはないぞ」
「は、分かりました
間もなく城内に入りますので
ご用意をお願い致します」
「分かった
それとこのメイド達は俺に付いてくることにしてくれ」
「はい、承りました」




