161村雲菜月『もぬけの考察』
群像新人賞をとり七月に刊行された『もぬけの考察』です。
良い本ですが112ページで1400円となかなかなあれなのですので図書館で合う合わない感じ取ってみるのがいいかもしれません。
「こうやってですね、栞のおっぱいを両手でソフトタッチすると、おっぱいおっぱいぽよんぽよーんっておっぱいも喜んでくれるというわけですな」
「ヒィ! 何言ってるんですか!」
栞のおっぱいをぽいんぽいんとリズミカルにタッチしていたらなんかめっちや引かれた。単なる友情の延長線上の軽いボディタッチのにんな大げさなと思っていたら「詩織さんは自分がやられたらどういう気持ちになるかちょっとは人のことを考えた方がいいと思います!」そういって真顔で怒られた。
「なにを! わたしゃ願ったり叶ったりだわ!」
そういったら栞は眼鏡のしたに親指と人差し指差し込んで「頭が痛い」とかなんとか言い出したので心配になって「大丈夫? 二人っきりで放課後の誰もいない保健室行く?」と聞いたら「詩織さんのそういう下世話なところ直した方がいいと思います」といわれてしまい「んま!」と叫んでしまった。
「詩織さんはもう少し将来のことを考えた方がいいと思います」
そういいながら目玉をぐりぐりしながら呟く。
「そういう栞は将来のことまで考えているのですか?」
「まあ近々の課題としてはどこの大学に行くかですよね、まだ先の話ですがそう言うのって、気にしないでいると目の前に唐突に、あっという間に来たりするもんなんですよ」
「そうなのぉー? まあわたしは栞と同じ大学行けたらいいなあー。就職してお金稼ぐのも悪くないけれど、親にもとりあえず行く気があるなら大学は行っとけみたいにいわれているし……」
「詩織さん私の志望校に入れます?」
「学部も同じ所行きたい……」
「入れます?」
「……勉強教えて」
「……はい」
「でもさでもさ、同じ大学にはいったら、アパートとかシェアしたいよね。もしくは同じマンションで隣同士に住むとかさあー夢が広がるー」
「あー私は自分で通える範囲がいいかなと思っているんですけれど」
「一人暮らしの方が絶対楽しいって!」
「そんな詩織さんが念願の一人暮らし始めたら宮部みゆきの『残穢』という本をプレゼン……」
「ノーサンキュー」
「んま! まだ最後までいっていない!」
「映画見たし! 原作の方が怖いってきくし、一人暮らしするのにそういうのいやぁ……」
「しょうがないですねぇ……ここはフレッシュな新作で、詩織さんも大好きな薄い本をお薦めしましょう!」
「……えっちなヤツ?」
「ノーえっち」
「しょんぼり……」
「馬鹿いってないで読んでみてください、ちょうどお薦めしようと思って持ってきたんです」
「どんなん?」
「じゃじゃーん! 村雲菜月『もぬけの考察』ですぅー」
「じゃじゃーんて……で、どんなん?」
「東京のどこかあるマンションの四〇八号室でおこる謎の連続住人失踪話です」
「怖いの?」
「怖さでいうと世にも奇妙な物語ぐらいですけれど中々文章はキレッキレですね。群像新人賞とったそうですが一一二ページで終わるし中身は四つのパートに別れているんで二時間もかからないで読めますよ」
「それ! そういうのがいいの!」
「先ほどいった通り舞台は東京あたりのどこかのアパートで、引っ越ししてきた人はまず前の住人宛に来た大量のダイレクトメールの処分に困るわけですね、その後普通生活する内になんだか歯車がズレてきます。まあネタバレになっちゃうのであんまり細かいことはいいませんが、新しく引っ越して来た人はそれぞれ別の理由で突如失踪します。そして次の住人が入ってきた時、壊れたままで管理会社も直してくれない郵便入れに突っ込まれたダイレクトメールを処分するところから始まって……とドンドン連鎖していきます」
「へー設定は面白いね」
「文章の方も中々秀逸です。ここ三年間小説漬けだったと作者もインタビューに答えていますが最初の一文が「初音の趣味は蜘蛛を飼い殺すことである。」という一文から始まりますが、ドンドン人が入れ替わるという情報は帯に書いてある通りなんで、じゃあこの初音という人はどうなるの? 異常な趣味はどういう関わりを持ってくるの? そう思わせてくれる切れ味の鋭い掴みに成功していますね、そうして彼女はのりの佃煮の空き瓶に蜘蛛を捕まえては放置しておくんですけれど、これが後にじわじわと効いてくる感じですね、一話三〇ページもないんでこれ以上話しちゃうとネタモロだしになっちゃうのでやめておきますが、この初音の前にも失踪者がいることが示唆されています。そして次の住人が初音の後に入ってきて、また自分なりの生活をした後その部屋から消えます。そして次の住人、さして次の住人と消えていきます。最後の住人だけ面白い仕掛けで、タイトルにも関わってくるのですがここら辺にしておきましょう」
「ええーそこまで語ってるんだったらもう全部いっちゃってよ」
「ダメです。二時間かからないぐらいで読めるのでちゃんと読んでください! ほらうすーい、うすーい……」
「まあ栞がそう言うなら読むけどさあー一人暮らし怖くなる系の話なの?」
「私はカメラが固定なのである意味空間芸術みたいだなと思いながら、どんなパターンで怪異が襲ってくるのか楽しんでいたので、一人暮らしが怖くなるということはないと思いますけれど、まあ薄気味悪い話ではありましたよね」
「ヤダー! 一人暮らしできなくなるのヤダー!」
「詩織さんその前に大学に合格してご両親の許可貰って一人暮らししないといけないっていうハードルがありますよ?」
「うーやーたー」
「なんで少年ジェット……まあ私と同じ大学なら一人暮らししないで通った方がお安いよっていわれると思いますし、近くの大学なら女の子に一人暮らしさせて悪い虫でもついたらいけないとかそんな話になるんじゃないですか?
「悪い虫はつかないよ! 栞が常に訪問してきてくれるから!」
「なんでそこ断定口調なんですか……まあ詩織さんの詩織窟に侵入するとなると、どちらかというと私の方が悪い虫、イコール詩織さんに取り憑かれそうな気がするんですが……」
「取り憑くとかいうの止めて。なんかあれ、部屋に地縛霊が出てきそうな感じするからそういう悪い言葉は使っちゃダメなんですよ」
「何ですかそのスピリチュアルな感じのアレは……」
「まあまあわたしの部屋に毎日遊びに来て、お酒なんか飲んだりしてさあーちょっとえっちな話題で悶々としてみたりなんかそういう青春? したいじゃーん!」
「高校生だって充分青春出来るし私は、詩織さんとこうしていることで青春していると思いますけれど……」
「もっとこう、深くズッポリしっとりとさぁ!」
「とりあえず同じ大学行くこと目指して勉強するのが今一番必要なことなんじゃないですか?」
「わたし直球の正論嫌い……」
「折れるのが早すぎる……」
「あーどこかに栞のおっぱいソフトタッチしているだけでお金がジャブジャブ転がり込んでくる仕事ないかなあー!」といった瞬間に「ないないありません!」といい腕でバッテンを作る。
「じゃあ逆に私が詩織さんのおっぱいいやらしくワシワシもみしだいて悶々とさせる仕事があったとして詩織さんは喜ぶんですか! わたしは半分悩みますが!」
「願ったり叶ったりだわ!」
「だめだ……この人無敵の人過ぎる……あーもういいから読んでくださいよ『もぬけの考察』! 本当にお薦めの本なんですよ……!」
「勉強するか読書するか……それが問題だ……」
「何シェイクスピアみたいなこと言っているんですか。どっちもやればいいんですよ! はい立って! 背筋を伸ばして! 参考書広げて! 座って! 今日は数学です!」
「いやぁーママァー!」
「そんな精神で一人暮らしも大学合格も無理ですよ……! とりあえず勉強も青春もどっちも頑張る!」
「詩織の口から青春頑張るなんて聞くのわたしゃ嬉しくて泣くよ……」
「止まらない口ですね……私の唇で塞いでやろうかしら……」
「願ったり叶ったりだわ!」
「こりゃダメだわ」
そう栞が頭を抱えながら、下を見ながら頭をフリフリしていると眼鏡がズレていった。
ズレた眼鏡で変な顔になった栞を見てゲラゲラ笑っていたら「はい、勉強!」といわれたので大人しく従うことにした。
大学でも青春の続きしたいしね……でも栞の言う青春しているの青春って読書のことなんじゃなかろうかとぼんやり思ったけれど否定する材料が何もないことに驚いた。
まぁいいか……。
その日は手に残った栞のおっぱいの感触で捗ることが予想された。
なんかおっぱいの話題で盛り上がる二人というよくわからないコンセプト引き延ばして無理矢理一本書いてみましたが、百合とかガールズラブってどこまで許される者なんでしょうかね?
教えてほしいもんです。
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では今週中にもう一度更新できたらなと思いますので、あまり期待せずお待ち頂けるとありがたいです。
ではまた可能な限り近いうちにまた!