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入学式1

久しぶりの更新ですね。もうじき悪役令嬢になります。

 ゲームに登場する学園。そこではこの世界の一般教養と、より完璧なマナーを3年間学ぶ場所だ。強制で学生寮に住む為、入ってしまえば当分屋敷の者とは会うことはできない。


「ミランダ、よく立派に育ってくれたわね。あなたは私の自慢の娘よ」


あの強気な母親が、メイクが崩れるのも気にせず涙を流し、目元をハンカチで覆う。


「な、なにも泣かなくても……」


その姿に、大げさすぎると若干引きながら、まあ、あの頃よりは立派になっただろうな、と思う。


ここがゲームの世界だと気づいてから、コミュ障を無くすよう努力し、今では立派な高飛車お嬢様を演じられるようになった。気がする。



本日は私と、ルーク王子の入学式。王宮とほぼ変わらぬ立派な建物の中で、母親と私、そしてランディが専用の個室で待機していた。

今は階級の低い貴族の子が会場入りしている頃だろう。ルーク王子と、婚約者候補である私は最後に会場に入る。


「いい?ミランダ。ルーク王子にご迷惑をおかけしてはダメよ?王子がエスコートしてきたら手はこうやって置いて……」


「…………」


学園に向かう途中、馬車の中で3回は聞いた入場の立ち振る舞いを再び母親は語りだす。聞いていられないな、と思いながら視線をランディに移す。

ビシッとしたスーツを着たランディは、私の計画通りに立派な一匹狼に育ってくれた。整ったその顔はまだ幼さを残すものの、他の同世代より大人っぽく、立ち振る舞いも完璧だ。現代で言えば中学3年生になったばかりの彼は、思春期だからかお姉ちゃんに冷たくなってしまった。嫌われてはいない、と思う。


ランディはじっと無表情で私のおめかししたドレス姿を見ていたと思えば、ふいっと視線を逸らす。


「……ランディは、来年入学ね」


そんな彼に声をかけると、ちらりとこちらを向き、こくりと頷く。


「……辛くなったら、すぐに手紙を寄こしなさい。助けてあげるわ」


今回、私がいなくなった屋敷で、彼が平穏に過ごせるか。それが一番気がかりだった。

彼は家でも完全に一匹狼気質になってしまい、顔を合わせるのは一緒に食事をとる時ぐらいしかない。そんな彼が、屋敷の中でどういう評価を受けているのか、私にはわからない。


「……必要ない」


ランディは一瞬眉を潜めると、ふいっとそっぽを向いた。


「……そう」


それ以外に言葉が見つからず、口を閉じた。


部屋には、母親の立ち振る舞いの注意をする声だけが響いた。

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