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半分の魂  作者: 時間旅行
7/7

悪人


「リグはどこだーーーー!」


図書館で衝撃的な事実を知った後、リグを探しているのだが一向に見つからない。


おじ様の話によると、召還された神殿で「帰りたい!」って心から思えば魂が開放されるそうだ。

神殿へすぐに向かおうとしたところ、アンリさんに神殿の鍵はとても大切なものなので開ける権利を持っているのは王様だけだ、と言われた。

だから、さっきから探してるんだけど。



「どこだーーーー!」



会う人にリグのいる所を訪ねても、皆知らない、分からないばかり。

王様の今いる所を誰も把握してないって!


スタート地点に戻ってみようと自分の部屋に入るとサエさんがにっこり笑顔で「お待ちしておりました」と迎えてくれた。


高そうな椅子に座らされ、目の前に紅茶を出されたんだけど。


「サエさん!お茶してる場合じゃないですよ!」


焦る私にサエさんは、ほほほとのんびり笑う。


「聖女様は何をそんなに急いでいらっしゃるのですか。」


「帰れるって!さっき知ったんだけど。私、帰れるんだって!」


だから、ゆっくり紅茶なんて飲んでる暇は無いんです。

今こうしている間にも、私の部屋は荒らされているかもしれない、そして家族の生暖かい目線・・・。


「サエさん。私、一刻も早く帰らなきゃいけないの!」


私の早く早くという言葉にも動じず、サエさんはおいしそうなクッキーを私の目の前に置く。


「おかしいですね。聖女様は今まで帰りたいなんておっしゃらなかったし。直ぐに帰らなければいけない用事があるようにも見えませんでしたが。」


うん。


「自分の部屋に誰にも見られたくない宝物があるって忘れてたもので。」


「宝物ですか?」


「うん。私以外絶対に見せれないものなの。」


だから、すぐに帰らなきゃ!


「聖女様以外に見せられないものですか?だから帰りたいのですか?」


「そう。サエさんにも勿論見せられないよ!」


お茶会なんてしてる暇はないと立ち上がる。

なのに、サエさんは慌てずにゆっくりと笑う。

先ほどより嬉しそうに。


「でしたら、大丈夫です。その宝物は向こうの聖女様が見せないようにしているのではないでしょうか。」


「ん?」


「向こうの世界では半分の魂の聖女様がそのまま残られておりますから。」


!!!???


「は、半分?」


「はい。今の聖女様の体は王が力を使って作り上げたのです。ですから、魂だけ半分こちらに来ていただいた形になります。」


興奮していた気持ちが一気にしぼみ、ぺたんと椅子に座る。

そんな私にサエさんは探るように声をかけた。


「ですから。聖女様が急いで帰る必要はどこにもありません。ですよね?」


その言葉に力なく頷く。

焦る必要が無いと知って脱力してしまった。


「じゃあ、何か新刊が出るころに帰ればいいかな。」


小声で呟いたと思っていた独り言はしっかりサエさんの耳に届いていたようで聞き返されてしまった。


「シンカン?ですか?」


「うん。そうなの。・・・あれでも私って、リグの力を半分・・・。」


そうだ。私はリグの力を半分持っているので、祈る義務があるらしい。

聖女様失格と言う烙印を押される前に、聖女様の力を見せつける必要がある。


王様の兄弟だからね。権限もってそうだから、もしも聖女失格って言われちゃうと私の立場が危ういじゃないか。


サエさんが何か言い出そうとするのを遮り、質問をする。


「やっぱり、リグに会わなきゃ!サエさん居場所教えてくれますか?」


「・・・申し訳ございません。」


え~・・・。サエさんとか他の人たち皆、絶対知ってていわないよね。


いい年してかくれんぼなの?くそう。絶対見つけてやる!


絶対に口を割らない感じがするサエさんを置いて、私はまた走る。





「リグーーーーーーー!」


何回目かの廊下の角を曲がると、全然知らない男の人に行く手を遮られる。


「な、何?」


「ゼント様が鍵を手に入れたとのことで、ご案内するように言われてきました。」


どうやらこの男の人はおじ様の小間使いだったらしい。

案内された先は神殿で、神殿の扉の前ではおじ様が待ち構えていた。


「王が見つからないとのことで、私が変わりのスペアをお持ちしました。」


「・・・アンリさんが開ける権限は王様しかないって聞いてたけど。いいのかな。」


おじ様はとっても偉そうな態度だから、それなりの権利を持ってるって分かるけど、王様以上じゃないでしょう?


私の質問におじ様は答えず、神殿の鍵を取り出してカチリと解錠する。


「聖女様は帰られることだけをお考えください。」


「あ。私、まだ帰らないから。」


あっさりとした口調で返した私を、信じられないものでも見るような目でおじ様は見てきた。


「帰らない?」


「うん。」


急いで帰る理由がなくなったもので。

もうちょっとこっちの世界を満喫するよ。


私が神殿の扉を開けて中に進もうと足を上げたところ、誰かから急に背中を思い切り押されてしまった。

不意のことだったので、床に倒れこんでしまう。


腕を突いて立ち上がろうとしたところで、扉が閉まる音がする。


「え?」


「衛兵!この中から出られないように扉を押さえておけ!」


怒鳴るように命令をしたのはおじ様。

立ち位置から私の背中を押したのはきっと、おじ様。


命令された衛兵の人たちは聖女様を閉じ込めるという行為に困惑しているようだ。

どのように行動するべきか迷っている衛兵達に向かっておじ様は問いかけた。


「この中にいるのは聖女だが。すぐに帰ってしまう女だ。

私とこの女、どちらを優先すべきか分かるだろう。」


「え、私まだ」


おじ様の言葉に反論しようとすると、大きな声で遮られる。


「だまれ!

聖女様と崇められて調子にでも乗ったか。大人しく元の世界に戻ればよいものを。」


おじ様が豹変して、お怒りモードになってしまった。

もしかして、私のこと邪魔だと思ってる?


「王の後ろ盾があると思っているようだが、勘違いしないで頂きたい。

あの王様はただのお飾り。実際に国を動かしているのは私のような議員だ!

お前が来てから人形のように言いなりだった王が国の内部のことまで口を出すようになって・・・目障りだ!さっさと帰ってしまえ!!」


おじ様・・・。今までどんな言葉をかけられようともリグの兄弟だからと大目に見ていたのに。

今はもう扉の向こうの人物は私の中で”おじ様”なんて呼ぶ価値も無い。なんて呼ぼうか。


「今帰れば、楽しい思い出だけですむだろう。ただし、ここにまだ残ると言うのなら、容赦はしない。

あの男に期待をしても無駄だぞ。お飾りのような男だからな。」


うん。これ、悪人だわ。

なら、私のとる選択は一つ。


「帰らない。」


目には見えないけど、脳内で仮面のヒーローやパンのヒーローなどが私に向かって、立ち向かえと言っている。

自慢じゃないが、今まで様々な悪人を倒してきたストーリーを何通りも見てきたのだ。

心の中に住むヒーローが目の前の奴を許すなといっている。


「私は、絶対に帰らない!」


断定してしまったけど、言い切らないと負けてしまう気がした。

決めポーズの一つでもしてやろうかと思ったら、急に体がふわりと浮く。


え?


「二度目の奇跡だ。」


顔を上げると、直ぐ近くにリグの顔。


「リグさん?」


私の呼びかけに答えるようにリグが私の頬にキスをした。目をパチパチする私と少し目線を合わせ。

私を腕に乗せるようにして抱えなおすと、リグは扉の方を向き声を上げる。


「開けろ!王を閉じ込めるのか!」


リグが中にいることを知った衛兵さん達はいそいで扉を開ける。


リグとともに扉を通ると青い顔をした悪人と頭を下げた衛兵さん達がいた。

皆、リグが起こす次の行動を見守っている。


「・・・国のことにあまり関与していないのは認める。私は大陸の維持だけのために動いていたからだ。

だが、口を出していなかっただけで、出せないわけではない。

この違いが分かるか?人間。」


「も、もうしわけ・・・。」


まさかリグが中にいるとは思わなかったのだろう。私もいると思わなかった。

リグは謝ろうとした悪人の言葉を遮る。


「下がれ。お前の処分は後だ。今は聖女様の目の前から消えるだけでいい。」


空気が凍るとはこのことだろう。

裁きの対象者ではない私でさえリグのことが怖い。


私を抱えたままリグは神殿から移動する。

リグの長い足でどんどん進むから、ゼントさんの姿が小さくなっていく。


「リグさん。ゼントさんとあんまり仲良くないんだね。」


兄弟なのに。


「ゼントさん?誰のことでしょうか。」


ワザとそういっているのかと思って、とっさにリグの顔を見てみたのだけどふざけた様子も無く

本当に誰のことか分からず、私に答えを求めるような顔をしている。


「・・・さっきの人。リグさんの兄弟でしょ?」


私の返答に、先ほどのことを思い出したのだろう。リグは眉を寄せる。


「ああ。そうだったのですか。兄弟は何十人といますので、覚えようとは思わないのです。」


「ええ~。議員って言ってたし、結構偉い人だと思うよ?」


私の言葉にリグは足を止める。


「私はこの大陸を生かす力があります。」


「うん?」


「お飾りではなく、聖女様の願いを何でもかなえることが出来る力を持っておりますのでご心配ありません。

先ほどのような者は残念ながらたくさんおりますが、私が聖女様をお守りします。」


ああ。さっきゼントさんが言ってたこと気にしてたんだね。

でも、もしもリグが力を持って無くても私はヒーローになるよ。大丈夫。


ただ、残念ながらリグにはヒロインって雰囲気がないんだけどね。


「リグさん。もうちょっと可愛くなろうか。」


「・・・頑張ります。」


耳をペタンとさせるリグを見て、可愛いと思ってしまった私は

いつか向こうの世界とお別れしなければいけない時が来るんじゃないだろうか。


主人公「あ、お祈りするの忘れてる!」

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