異次元大怪獣 対 月面白翼使徒
おまたせしました
辺りに轟く1つの銃声。
そして、人がドサッと大地に倒れる音が続いて聞こえて来る。
「…?」
圧倒的過ぎる相手のことを睨みつけていた真音は、思わずその音のする方向を振り向いてしまう。
そこには、
「……ッ!!!」
仰向けに倒れ、顔中真っ赤な血で染まった、
「……ッッ、……ッッ!!」
真音のお父さんの姿があった。
瞬間、真音は呆気に取られた表情のまま固まってしまう。いったい何が起きたのか、大好きなお父さんの身に何が起きたのか、何で真っ赤な血を頭から流しているのか。
どうして、倒れたまま、動かないのか。
するとその時、
ズル…
真音のお父さんの頭が力無く、意識無く項垂れた。
「……ァ」
それを見た瞬間、真音は理解してしまう。お父さんに何が起きたのかを悟ってしまう。
「……ァ…」
空中で呆然と立ち尽くす真音の顔は悲しみに歪み、瞳孔をガタガタと震わせ、開いた口を塞げられない。
しかしそれも束の間、真音は反射的に飛び出し、
「お父さんッ!!!」
頭から血を流したまま動かないお父さんの元へ向かった。
ズンッ!!
「ハァッ…お、お父さんッ…お父さんッ…! お父さんッ!!」
真音は倒れたお父さんの体を揺すりながら、懸命にその名を叫ぶ。
こんなの何かの間違いだ。大丈夫、すぐにお父さんは目を覚ます。目を覚まして笑ってくれる、僕に笑顔を見せてくれる筈。
だってまだ、僕はお父さんと全然素敵なものを見ていないのに、また背中に乗っけて色んなところへ飛んで行きたいのに。
僕はまだ、お父さんと一緒にいたいのに。
なのにどうして…どうして…、と真音は懸命にお父さんのことを起こそうとする。
だがどんなに真音がお父さんのことを呼んでも、お父さんは一向に目を覚まさない。それどころか更に血は頭に空いた穴から吹き出し、生気がみるみる失われていく。
「い…いやだっ…。いかないでよ…お父さんッ!! 僕はまだお父さんと一緒にいたいんだよッッ!!! だから…お願いだから…お父さん……ッ…。もう…ワガママ言って困らせないから…お父さんの言うことはキチンと聞くから……だから…だから……ッッ!!」
ボロッ……ボロボロ……
「目を……開けてよ……」
大粒の涙を流しながら真音はお父さんに懇願する。
それでも、もうお父さんは目を覚まさない。
二度と覚ますことはない。
「お父さん……お父…さん……」
「…君のお父さんは…死んでしまったよ。殺されたんだ」
言い表せない喪失感、泣き叫ぶことで何とか保てている弱り果てた精神、そんな真音の心に複製は持っていた拳銃を隠しながら近づいた。
そして、
「君のお父さんを殺したのは、美月とななしだよ。君もよく知っているだろう」
真音に、大切なお父さんを殺した者達の名を言う。
その者達のことを真音は知っている。倒すべき敵だと教えられていたから。
「お父さんを…お父さんを……」
自分が弱かったから、守ってあげられなかったから。強くなるべきだったのに、自分は強くなってみせると決意を固めたのに。
でも、でも、殺された。自分のお父さんは、殺されたんだ。
怪獣の悲しみが憎しみに変わる。
憎しみを糧に殺意が燃え上がる。
ブツッ……!!!
憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。
大切なお父さんを殺した奴が憎い、憎くて憎くて仕方がない。
大怪獣の怒りが、爆発する。
「こ、殺してやる…殺してやる……殺してやるッッ」
グゴゴゴゴゴゴゴ……ッッ!!!
その時、大怪獣の中から禍々しい程の怒気と殺気が放たれ、先程の悲しみに包まれていた表情から一転、殺意に満ち溢れた表情へ豹変する。
「お父さんを殺した奴は……殺してやる…!」
ギロオッッ!!!!
そしてギロリと宙にいる敵を睨みつけ、
「ゴロジデヤルヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッッ!!!!」
ドォアッ!!!!
「ッ!」
比べ物にならない速度で美月に襲いかかった。その速さは美月の想定を遥か超えており、思わず美月は目を丸くして硬直してしまう。
「くッ!!」
「グルァアアアアアアアアアゥゥオオオオオオオッ!!!」
ガンッッ!!!!
その隙を突いた怒れる大怪獣の拳は、つい先程まで全くと捉えられなかった美月に当たる。しかし瞬時に硬直を解き、腕を交差させて防御態勢に入ったため大きな一撃を美月は貰わなかった。
だが、
「うぐぅ…!」
「ヌゥルァァアアアアアアアアアアアアアアォッッ!!!」
バギィイインッ!!!!
圧倒的なパワーのみで、大怪獣はガードの上から美月を殴り飛ばす。大怪獣の拳の威力はとんでもなく、美月を後方へと吹き飛ばしてしまうと、更に追撃と言わんばかりに襲いかかった。
その切り返しの速度、追撃における移動の仕方、そして何より神気の扱いにおいて、大怪獣は今恐るべき勢いで成長を遂げている。
「チッ、たしかにこりゃあ面倒くさいな」
「ヴゥオオオオオオッッ!!!」
しかしその大怪獣を前に美月は臆することなく、むしろ闘志をゆらりと昂らせながら対峙した。迫り来る相手の拳をかわし、蹴りを受け止め、振るわれる尻尾を逆に掴んで盾として使いながら、美月は軽やかに宙を舞う。
戦いの最中、大怪獣の強固な体を打ち破るのは容易ではない。だが大怪獣自身の体ならば、その体自身ならば大怪獣の盾となる体を打ち破れる。巨乳バカ二世こと由美ヰがくっちゃべっていたことは本当だったかと、美月は思っていた。
ガチンッ!!! ガチンッ!!!
グギャブッ!!!
「ギィアアアアアァァアッ!!!」
「へっ、バーカ。そのまま咥えてろッ」
美月は大怪獣の長く太い尻尾を盾に猛攻を掻い潜り、その牙に思い切り大怪獣自身の尻尾を咬ませた。けれども、尻尾から真っ赤な血がブバッと吹き出せど大怪獣は止まらず、
「グルォオオオオオオオンッッ!!!」
ズビュビュボボボボッッ!!!
由美ヰを抑え込んだ時と同様背中から触手をズボズボと解き放つと、それを使って美月を殺そうと襲いかかる。
「やっぱりそうか…」
それを前に美月は、やはりそういうことかと納得しながら大怪獣を睨みつけた。どうやら悪魔の能力を持っている美月には大怪獣の正体が既に見えているようだ。
その時、
「ブルォオオオオオオオオッッ!!!」
ズバァアアッッ!!!
大怪獣は咆哮と共に神気の奔流の塊で出来た破壊光線を放つ。しかもそれは誰をも一呑みに出来てしまう程の大きな口からだけでなく、背中から生やしたいくつもの触手からも。
「チッ、なんて奴だ…」
その破壊光線の威力は凄まじく、辺りの木々や大地を抉るはもちろん、美月が呼び寄せた厚き雷雲すらも打ち払ってしまった。大怪獣の破壊光線は空を一瞬で晴らし、再び陽を出させる。
しかし太陽が照らすのは所々抉れた大地に、怒り狂う異次元大怪獣。そしてその正体に気がついた月面白翼使徒。
「ガッブルゥウウウアアアアアッッ!!!」
大怪獣が猛り、勢いよく美月に噛み付く。
が、
「ふんっ…」
スルンッ…
それを美月はすんなりかわすと、
ギャンッ!!!
「ガバァッ!!」
カウンターのかかと落としを大怪獣の頭にぶちかまし、地面へと勢いよく叩きつけた。大怪獣はそのまま地面に落下し、ドゴォンッ! と大きな音と、その音に相応しいだけのクレーターを作る。
「ゴギ…ガッ…」
けれども怒りに燃える大怪獣は全くダメージが入ってない様子で、すぐさま起き上ろうと体を起こそうとしていた。
けれどもその前に、
ビュバババババッッ!!!!
ビシイッ!!!
「ガァァアアアアッッ!!!」
「そこで寝てろ。ついでに頭でも冷やしてるんだな」
美月は自分の体の半分近くを白羽に分離すると、それらで巨大な枷を作り、大怪獣を地面に抑え付ける。大怪獣は起き上がろうと懸命にもがいているが、美月の体の約半分を使って抑え付けられているため、そう簡単には動けない。
そんな大怪獣を後ろ目に美月は目線を移し、
「さて…アイツもちょっとはムカつくけどよぉ…1番ムカつくのはテメェだよ」
「ぬぅ…」
異変の元凶である複製のことを睨みつけながら近づいてゆく。歩み寄る美月の表情は険しく、異変の元凶を前にめらりめらりと怒りを昂らせているのが分かる。
「アイツは…1人じゃあねぇな?」
だが溢れ出る怒りを露わにしながらも美月はそのように問う。
「なに…?」
「悪魔舐めんな、アイツの魂を見たら分かったんだよ。あの体の中にはいくつもの魂があった。んで、背中から生えた大量の尻尾。ありゃあ触手じゃあねぇんだろ? それを見て確信に変わったよ」
「アイツは…いや、アイツらは、ななしの複製を合体させて作ったんだろう? この間来た黒髪のななし…今は唯吏香って名前だが、アイツは耐久力だけはずば抜けていたって由美ヰが言ってたんだ。つまり、テメェらの作る複製には何かだけに特化した奴も生まれるってこったな。と、なるとアイツは…恐らく生み出した複製の長所のみを継ぎ接ぎにしたんだろう」
美月は淡々と大怪獣の魂と肉体を見て、その誕生経緯を考察する。唯吏香こと黒髪のななしは耐久力だけならばななし並の力を持っていたと由美ヰが言っていたから、きっと他にも何かにだけ特化した者もいたのだろう。
ソイツらを肉体ごと接合し、作り出したのがあの大怪獣だ、と美月は複製に告げる。
「ほう…なるほど、悪魔故に気づけたというわけか…。ふふっ、たしかにその通りだ。アイツはななしの複製を繋げて作った最強の怪獣にして、私に従順な最強の生物兵器だ」
問いかけに対峙複製は、ふんっと誇るかのようにその通りだと返した。
すると美月は更にギッと目つきを鋭くしながら尋ねる。
「貴様如きが…本当にアイツを制御出来ると思ってんのか? アレでもななしの複製だぞ。ってことはななしを制御出来るってことだろ。そんなこと本気で出来るってか?」
「ああ、当然だ。アイツの精神は未熟だからな。どんなに強くても精神がガキならいくらでも利用出来る。現に今、アイツはお前達を殺したがっているだろう? 私の言うことは疑いなく聞く。何て利用価値のある怪獣だって思わないか?」
あの大怪獣はななしの複製。即ちあの大怪獣を制することは、ななしを制御することに等しい。
そんなことが貴様如きが出来るものかと美月は言った。
しかし複製はあれだけ純粋で精神的にも未熟な大怪獣如き、容易く利用出来ると返す。現に自身の吹き込みのおかげで大怪獣は美月のことを殺したがっているだろうと。
その答えを聞いた時、
スカァッ
「ん…?」
ポトンッ
「もういい、喋るな」
複製の指が何本か何かによって切断され、地面にポトポトッと落下する。
「貴様は命を遊び過ぎだ」
ヒュルルル…
複製の指を切り落としたのが美月の1枚の白羽だと複製が気がついた瞬間、複製の右手の指からはドバァッと血が吹き出した。
そして、
「最初に腕を切り落とす。と、同時に膝を潰しておく。最初に言っておくが貴様は簡単には死なさん。悪魔は優しくないからな」
美月は冷たい表情と声色でそう言いながら、
スパッ
ドドスッ!!
複製の右腕を分離させた白羽の刃で切り落とし、それと同時に膝を何本もの白羽の末端で貫き、内部からその関節を捻じ切った。
次回の投稿もお楽しみに
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