生きる意味
おまたせしました
弍号機が開けてくれた穴に俺は早速乗り込む。てっきり後ろに待機していた戦闘用兵器達が俺のことを阻止しようとしてくると思ったが、意外にもそんなことは無かった。もしや弍号機の命令で今は待機する以外出来ないのだろうか。そうだとしたら、命令されたこと以外出来ない木偶の坊ってわけか。まぁ、もし俺のことを追いに来たとしてもあんな小さな穴を通って来れるわけがないんだが。
何て思いながら、俺はついに己の目標を目の前にした。
そこは俺が生まれた場所にして、俺を生んだやつらの核。ここをやつらごとぶっ潰すのが、今の、俺の、決意だ。
カキッ…
「やっと会えたな」
「貴様…零号機…」
壁の向こうにいたのは予想通り、俺を生んだ連中が固まっており、その中心にここまで壁をぶち壊してくれた弍号機がいた。やつらは戻って来た俺を見て、信じられないと目を丸くしていた。そして弍号機は心がないことをいいことに、なおも無情な瞳で俺だけを捉えている。
「戻って来た理由は…話す必要なんかねぇな。さっさと潰させてもらう」
「零号機…この、出来損ないがっ! 実験用の貴様が実践用に勝てるわけがないだろう! 弍号機っ! さっさと壊さんかっ!」
「了解、すぐに」
こんな時でも、俺を攻撃すんのだけはやめないか。もう前みたく胸が痛くなることはないけど、それでもちょっと来るものはある。
でもおかげで踏ん切りって感じのものが出来た。
そう言ってくれたから、俺はもう迷わず全力で貴様らを潰せる。
ダンッ!
ドグッ!
「…はんっ」
「排除」
再び、零号機と弍号機の戦いが始まった。今度は俺から仕掛け、殴りかかる。弍号機にその拳は受け止められてしまうが、それでも俺は負けない。
一直線に来る弍号機と違って、俺は迂回することを知っている。たしかに俺達兵器は頸椎部にあるメインコンピュータを潰されたら終わりだから、そこを真っ先に潰しにかかるのも分かる。というかこの状況下では、敵はそうしなくてはならないのだ。
何故ならここは敵の中枢。ここで下手に大きく暴れられたら、敵にとっちゃそれこそお終いだ。だからひたすら俺の動きを止めることだけに集中する。当然本領など発揮出来ないだろう。
ガゴンッ!
「逃げるだけか、芸のないやつだ」
「そっちこそさっきから攻撃が単調過ぎるんじゃあないか? 芸がないってそっくり返すぞ、台詞」
単調な動作はもう完全に体が慣れ、よけるのはすでに簡単なものとなっていた。だが敵はそれに気付かないのか、それとも徹底して俺のメインコンピュータを狙うしか出来ないのか、懲りずに何度も同じ攻撃を繰り返していた。
俺はそのことを煽ってみるが、やはり敵に心が無いのでそれは通じないようだ。
「逃げていればいずれバッテリーが尽きるのは貴様の方だぞ。弍号機が零号機に勝るなどありえんのだ」
「…理論上は、な」
弍号機はそう言って勝ち誇るが、俺は後ろ目でやつが開けた穴を見ながら言う。もしも俺より優れてるというのなら、果たしてあんな失態を犯すのだろうか。
敵である俺を自分らの中枢へと導いてしまうという失態を。
だが敵はそんな失態による動揺は無く、
ビュオッ!
ヒュオッ!
と相変わらず俺の首を取りに来続ける。何も考えず、命令のまま、ただ同じ行動を繰り返す。プログラムされた殺戮を、修正も、改良も施さずに。
そんな弍号機の姿を見ていると、何だか哀れみさえ感じられる。いや、弍号機だけじゃない。まだ見てない壱号機、これから生まれるのか、それとももう生まれているのか分からない参号機、四号機など…ソイツらも自我など無く、与えられた命令を淡々とこなすだけなのだろうか。
何て考える余裕さえ生まれてしまった。
出来てしまえるのだ。それだけ弍号機の攻撃は、悲しいまでに単調だった。
だからこそ、思い付けてしまった。
ここを破壊し、もうこれ以上の被害者を生み出さない方法を。
俺はさりげなく、自然に、やつらの元へと弍号機を誘導する。その策に気付けない弍号機はただ俺を追い、誘導されるがまま共に作ったやつらの元へと向かう。
そしてついにその時、
(今だっ!)
迫り来る弍号機をかわし、奴らがいるところに、正確には高みの見物してるやつらの足元に激突させてやる。
「っ!」
ギュグギィィィイイッ!
グラァッ!
「「「うぉあっ!」」」
弍号機が激突したことでやつらの足場を支える鉄骨は大きく歪み、金属が軋むけたたましい音が響き渡る。そしてその衝撃は高みの見物をしてたやつらを俺達の戦場に引きずり出した。当然やつらは慌てふためき、我先にと場から逃げ出そうとする。そして案の定、弍号機は何とも思っておらず、真っ先に歪んだ鉄骨の中から立ち上がり俺の居場所を認識する。
そんな弍号機に奴らの1人が投げかけた言葉は、
「こ、この…出来損ないがっ! さっさと殺せと言っているのにヘマばかりしやがって! 不良品がっ!」
まぁ、それなりに予想は出来てたものだった。当然俺と違って向けられた悪意による放心とか、切り捨てられたことによる失望とかはない。
だがソイツはそれをいいことに、ガンガンと弍号機の鋼の体を殴りつけた。俺と違い従順している弍号機に、虐待とでも言わんばかりに散々痛めつける。もちろん非力な人間の拳で物理的に俺達が傷付くことはない。しかし心はそれ以上に裂かれている、傷付いている。
心なんてない弍号機が悲しみとか感じるわけはないんだけど、やはり同じ兵器であるからこそ、こちらに来るものはそれなりにある。
だがそれはそれ、これはこれだ。深く同情してやる程俺は優しくない。自分がすべき第一優先は、自分の復讐なのだから。
俺は静かにソイツに近づくと、
ガッ
「っ!」
「俺は…俺はあんたみたいにはならない」
弍号機を殴り付ける腕を、
ミシミシッ…
へし折れる寸前のところで痛めつける。
「グァアアッ!」
そして、
「あんたみたいな、我が子を無情に殴るようなクソになんかならない」
初めて無情になって言った。そうソイツに吐き捨ててやった。
「ガァッ! 出来損ないっ! 早く助けろぉっ!」
「了解」
ソイツがそう言うとさっきまで止まっていた弍号機は俺の手を止めようと迫り来る。
そんな向かい来る弍号機の手を、俺は軽く避けてやった。
軌道上にクソ以下のソイツが来るように。
グシャッ!
「ウギグッ…ァァ…」
それは一瞬の出来事だった。弍号機の手は一瞬のうちにソイツの首を掴み、汚いであろう悲鳴を上げる前に声帯を潰し、亡き者にした。次の瞬間、
「……」
弍号機が不自然にガクガクと震え出し、ふらふらとおぼつかない足取りで数歩程後退りする。
生まれて初めて命令違反を犯し、俺が誘導したとは言え命令していたやつを手にかけた。
もう弍号機に生きる意味をくれるやつはいない。
するとどうなるか。自らの存在意義を失った兵器はどうなるか。
そんなの決まっている。殺戮兵器として暴走するのだ。
ギロォッ!!
「っ!」
グァッシャァッ!!
弍号機は俺の方を振り向いた瞬間、もの凄い勢いで掴みかかった。一切戸惑いがないその力は、弍号機が容赦も躊躇も手加減もしなくなったことを突きつける。
だが組織の中枢でそんな力を発揮すれば、出る被害はただならない。暴走する弍号機は最早俺も装置も区別出来ていないのか、目に映る全てを破壊して回る。
ブワァジィッ! ガァンッ! バグォッ! メギャッ!
その姿はまさに殺戮兵器、それ以外の言葉は見つからない。
辺りは数分とかからず火花の海に包まれ、俺達のエネルギー源のバッテリーが詰まったタンクに今か今かと襲いかかる。当然中身は可燃性、引火すれば大爆発だ。
俺の狙いはそれだ。そのタンクに引火させ、何もかも全部ぶっ飛ばす。
だが中身が可燃性なこともあってタンクの中身を引火させるには穴を1つでも開けなくてはならない。俺の力ならそんなこと容易いが、いかんせん目の前には破壊の限りを尽くす殺戮兵器がいる。
コイツを何とかしなければ…
そう思った瞬間、
グァアッ!
「うっ!」
機会を伺っていた俺の右腕を弍号機が掴むと、
バガブチィッ!!
そのまま力任せに引き千切った。切断面からは細かなコードがバチバチと小さな火花を放ち、どくどくと血のように冷却水とバッテリーが溢れ出す。
「うぁあああっ!!」
決して痛みなどないのに、俺は叫んでしまった。右腕を千切られた事実に。だが弍号機は止まらない。バランスを崩した俺を強引に組み倒し、今度は左腕を千切ろうと掴みかかる。その無情な顔は兵器以外の何者でもない。
しかし俺は臆さない。まだ動く脚を弍号機の腹に置くと、力いっぱいに蹴り飛ばした。幸いにも左腕は無事でまだ正常に動いてはくれる。
そして俺が蹴り飛ばした弍号機の背中を支えたのは――
ガァンッ
俺達のエネルギー源が詰まったタンクだった。その好機を見逃すわけにはいかない。
ダンッ!
俺は弍号機が態勢を整える前に走り出し、先程引き千切られた右腕を拾い上げると、
「うぉおおおおっ!!」
それを勢いよく振りかざし、
ドグジッ!!
「っ!」
「うぉらぁああああっ!!」
弍号機の体に突き刺した。
ブシューッ!!
その隙間からは弍号機の血が飛び散り、辺り一面、そして俺の全身に降り注ぐ。
「…安らかに眠れ」
ズドォオオンッ!!
次回の投稿もお楽しみに
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