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アンバランス・ワールド  作者: がおー
第2章 〜うちの主人は死神様〜
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天界最強の天界兵器

おまたせしました

 放たれる光線は白みつつあった夜空を一瞬にて白色に染め上げ、見る者がいれば早過ぎる夜明けが訪れたかのようだった。


 ギャオオオオオッ!!!


「……っ!」


 その光は穏雅(おうが)の目を焼かんばかりに放たれ、たまらず決死の覚悟を決めて飛び出した戦友から目を退けてしまうほどだった。



 シィン……



 しかし光線が放たれたのはわずか一瞬のみ、放った刹那(せつな)止まり、それ以上放たれることは無かった。それでも光線の威力は凄まじく受けていないにも関わらず、穏雅(おうが)の体を数秒ほど停止させてしまった。


 そして数秒後、体の自由が戻った穏雅(おうが)は、


「ロボッ!!」


 戦友の名を呼びながら、今にも消え入りそうな神気(じんぎ)を辿ってその元へと向かった。そこには、



 ジジジッ……

 

「ロボッ!!」

「……」



 両手脚があった場所は焦げ臭い煙しか無く、胸は焼き払われた内部構造が剥き出しになっており、顔面はその半分が消えていた。大破などという生易しいものではない、四又どころか体の7割以上が崩れ去っているのだ。血の代わりにバッテリーの液体や潤滑油、冷却水が至る所から漏れ出し、見るも無惨な状態となって地面に転がっている。


「ロボッ……生きてるのか……?」


 そんなロボに穏雅(おうが)は恐る恐る尋ねると、



「いや……ザザッ…死んでる」



 と、わずかに生きてる声帯機を使って、返答に応じてくれた。

 穏雅(おうが)は、こんな時にブラックジョークはやめてくれ、と突っ込みながらロボの側に寄り添った。



 それと同じ頃、同じくハルファフルエルの攻撃を受けたラフサナファエルは…


「くっ……? 生きてる…」


 背中に生やした大翼に加え、全力の神気(じんぎ)で作った防御壁によって何とか生き延びていた。しかし喰らった攻撃の威力は受けていい容量のそれを遥かに超えており、黄金の戦士を解除させられ、しかも神気(じんぎ)のほとんどを使い果たしてしまう程にまで追い込まれてしまった。


 だがいつまで経っても第2射は放たれず、ラフサナファエルはゆっくりと顔を上げるとそこには、


「……」


 シィン…


 機能を停止し、がっくりと項垂(うなだ)れるハルファフルエルの姿があった。もっとよく近づいて確かめてみると背中のスイッチが押されたのか、ハルファフルエルは確かに止まっていた。

 その姿に自らの使命の終わりと、異変の収束を予感したラフサナファエルは足元にいる地獄の救世主の元へと向かった。


「すまないことをした、ロボ。まさかここまで体が大破してしまうとは、本当に申し訳ない」

「……ザザッ、たくっ……一か八かの、ザー…賭けだった、ザー…ど……ザザザッ…何とか…ザッ…ったな……」

「もう喋るな。ここまで大破してるんだ、早く帰って修理しないと…」

「ザザッ、へっ……お、お前、ザー…ザー……俺、ザザザッ、しんぱ…ザザザッ…して、ザザザッ…てなっ…」


 こんなことになってしまったことに頭を下げるラフサナファエルに、ロボは精一杯の言葉を絞り出すようにして答えた。だが話せば話す程ロボの機能は故障し、声もみるみるかすれ、小さくなっていく。


 ロボの言う賭けとは、生まれつき内蔵されていた『ロケットパンチ』のことだった。だがロボはソレを生前使うどころか、そんな兵器があることさえ知らなかった。それが分かったのは偶然にも『オリジナル・プログラム』を見つけた時、即ち自分の体に搭載されている機能について詳しく調べていた時のことだった。そんなものを100年以上使ったことのないロボはソレを動かすことも、気もなかった。


 しかしその時はついに訪れた。自分の手が届かないと判断したロボは、一か八かでソレを放ったのだ。


 まともに動くかどうかも分からない、どんな動きをするのかも知らない、ましてや届く前に拳ごと粉砕されるかもしれない。


 そんな大きな賭けにロボは勝ち、拳が消える前に背中のスイッチを押すことが出来たのだ。


 代償として、体のほとんどを失うことになったとしても。


 壊れゆくロボに穏雅(おうが)は何とか寄り添おうとするが、それでもロボの体は壊れていく。



 その時、



「んっ? テレパシーか……はい、分かりました…」



 ラフサナファエルの元に1つのテレパシーが届いた。それを聞いたラフサナファエルはすぐさまロボの元へ歩み寄ると、


「お偉いさんから直々の言葉だ。今回ハルファフルエルが出した被害を受けた者はそのお偉いさんが全て修復してくれるそうだ」


 と告げた。その言葉に返事が出来るようなエネルギーはもうロボには残っていなかったが、ラフサナファエルの行くか? という問いに対し、ロボは小さく(うなず)いた。


「分かった、それでは行こう。天界兵器の迎撃、並びに機能停止への協力感謝する」

「ラフサナファエル、俺は…」


 そう言ってロボを抱え、ハルファフルエルを連れて帰ろうとするラフサナファエルに穏雅(おうが)は自分はどうすればと尋ねた。するとラフサナファエルはそっと笑って、弟の問いに答えてやった。


「お前は早く妻のところへ行って安心させてやれ。それとありがとうな、融合(カリオヌゥム)の実験に付き合ってくれて」

「あ、うん。分かった、ラフサナファエルこそありがとうな。俺達だけじゃあその天界兵器とやらはどうにもならなかった。これからは管理とかちゃんとしてくれよ」

「そういう仕事は俺…私じゃあないんだけどな…。まぁ、こんなこと起きないよう手は尽くすよ」

「是非ともそうしてくれ。こんな強敵を相手にするのは二度とごめんだからな」


 穏雅(おうが)の言葉を背に受けながら、大天使と天界兵器は天へと昇っていく。それはまるで夜明けのごとく(かがや)かしく、明けの星々が(またた)黎明(れいめい)の空を走る流星のようだった。



 ――



 そして天界へ帰還したラフサナファエルはその足で真っ直ぐ天界兵器が収納されている『兵器(ラファ)の園(・ソヌム)』へと向かった。天界において『兵器(ラファ)の園(・ソヌム)』は他とは明らかに違う場所であり、機械や実験器具しか無い空間だった。もちろん(ちり)1つすら無い空気は、天界の何処に行こうとここだけであろう。そこでラフサナファエルは、


「ラファクルエルさーん、ハルファフルエルを連れて来ましたよー。それと被害を(こうむ)った者もーっ」


 と誰もいないところに向けて話した。



 すると、



 クォーンッ



 シュンッ



 と鋼で出来た地面がパカッと開いたかと思うとそこから、


「ご苦労様でした、ラフサナファエル。それと私はさん付けで無くて良いと、私は天界兵器最高戦力にして天界最強の天界兵器、対して貴方(あなた)は創造神ヌラクァラウヌス様の側近である大天使。立場上は貴方(あなた)の方が上なのです、と。これで言うのは42回目ですよ」


 と言いながら背丈の低い少女のような者が現れた。



 現れたその少女こそ、天界兵器最高戦力にしてハルファフルエル含め全天界兵器の頂点に立つ天界最強の天界兵器、ラファクルエルだ。

 その実力は央力(おうり)穏雅(おうが)の師であり、立場上上である筈のラフサナファエルですら、前にすると緊張してしまうほどだ。


「あっ、はい…すみません。どうもまだ慣れないもので…」

「別に構いません、気にしておりませんから。ハルファフルエルと被害を(こうむ)った者はこちらで回収致しますので、貴方(あなた)はこのことをヌラクァラウヌス様に報告して来て下さい。後から私も伝えて置きますので」

「分かりました、お願いします、ラファクルエル……」

「何か言いたげですね。そんなにさん付けしたければいくらでもどうぞ。しかし大天使とあろう者が天界最強の天界兵器に頭が上がらないというのもどうかと思いますが、その点については其方(そちら)の判断に任せます」


 まるで感情が無いかのように話すラファクルエルに押され、ラフサナファエルは完全に言葉を失ってしまう。そしてその場から立ち去るようにして自分達の主の元へ今回の件を報告しに行ってしまった。

 その背中を見送ることもせずラファクルエルはハルファフルエルをあるべき場に輸送しながら、その被害者を別の場所に移動させる。


 シュンッ


 ロボが運ばれた場所は大量の機械や兵器が集っている所であり、そこにある作業台のようなところに乗せられる。ここまで運ばれている間にロボの全機能は停止してしまい、まるで死んでいるかのように眠ってしまっている。


 そんなロボの体にラファクルエルは触れると、


「なるほど、()()()()ですか、興味をそそられます」


 と言った瞬間、


 キュイーーンッ!!!


 ギャギャギャギャギャッ!!!


 容赦(ようしゃ)無くロボの体の解体を始めるのだった。

次回の投稿もお楽しみに

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