天界兵器最高戦力 vs 大天使、究極生命体、殺戮兵器
おまたせしました
「行くぞ、さっさと終わらせたいからな」
「ふぁあっ…こんな朝っぱら…でもないか…」
「まったくだ、世継の生活バランス崩れたらどうしてくれる」
時刻は明朝午前3時になろうとする頃、3人の猛者達が地獄目掛けて歩いていた。行先はもちろん天界兵器、『ハルファフルエル』ただ1つ。しかし3人の顔色が優れないのは決して朝早く…よりもまだ夜空に星が瞬いている時だから、というだけではなかった。
自分らがこれから相手にするのは知る者ぞ知る天界兵器最高戦力、例えその存在を知らずとも昨日の破壊力を前に平然としていられる者はいないだろう。だからそれを打ち消すためにも、3人はあーだこーだと会話を繋いで乗り切ろうとしているのだ。
もし沈黙が訪れたその時は、せっかく振り絞った勇気が鎮火してしまうだろうから。
そしてついに3人の瞳の中には、光輝く兵器が見えて来た。集った3人は今一度作戦を確認しようと、ハルファフルエルが見えるところで立ち止まる。
「ここまで来たが…作戦はちゃんと覚えてるだろうな?」
「大丈夫だ、でも本当に上手くいくのか? これで」
「…おいおい、大天使様の考えた案だぞ? ちゃんと信用してやれよ」
まだ不安が残る穏雅にロボは軽く突っ込むが、その顔には普段のようにおちゃらけた色は無い。目の前にいる存在がいかに大きいものか、そんなものを前におちゃらけられる筈も無いのだ。
しかし1番落ち着きが無さそうなのは、大天使ラフサナファエルだった。先日からずっと引きずっていた疑問が未だに晴れない大天使は、誰かに聞けることも出来ずずっと1人で悩んでいたのだ。
(何でハルファフルエルは動かない…? それに…範囲が狭過ぎる)
だがついにその答えを出すことは出来ず、疑問が作る不安を小脇に挑まなくてはならないのだった。もちろんそれを2人に悟られぬよう、懸命に表情を隠して。
「じゃ、作戦開始。穏雅は私と共に行くぞっ」
「了解ですっ」
「合図は私達がハルファフルエルに気弾を放ったら、だ。全力で注意を引くから、ロボはその隙にハルファフルエルの停止スイッチを」
「分かってますよ」
ラフサナファエルの出した作戦は、自分と穏雅が気弾をハルファフルエルに放ち、それに気を取られている間にロボが背中の肩甲骨部位にある停止スイッチを押す、という至極単純なものだった。ラフサナファエル曰く、今のハルファフルエルは『完全自動砲撃型状態』という一定範囲内に神気を発し、中に入ったものを自動的かつ正確に砲撃して滅する状態とのことだ。裏を返せば範囲内に入らなければハルファフルエルは何もして来ないということなので、自分達がそこで何をしようが決して害は無いのである。
だがラフサナファエルはここで2人を不安にさせないため、説明を少し省いた。
今のハルファフルエルの状態はただ眠っているだけに過ぎなく、本気になれば地獄を焼き尽くすなど造作も無い性能を持っている。それに本来のハルファフルエルの範囲はもっと広く、普通ならば地獄の入口どころか、穏雅の家までも射程範囲内に入っている筈だ。
なのに撃って来ない理由は、単純にハルファフルエルの攻撃範囲が狭いからだ。通常なら半径200kmは当たり前だと聞いているのに、今は直径1kmにも満たないだろう。そもそも天界兵器最高戦力が動き出すだけの理由も、最高戦力ともあろう力の持ち主が簡単に動いていい筈もないのに。
しかし悩んでいることを誰かに話さずとも悟られてしまえば、不安を大きく与えてしまうのは必至。ラフサナファエルはくっとその疑問を抑え、目の前の兵器に集中するのだった。
そしてついに2人は持ち場に到着し、十分に力を発するため互いに1番強い姿に変身する。
ボゥッ! ボワッ!
「よし、始めるぞ。いいか、気を引くには本気でやるんだぞ」
「分かってる。つかさ、こんなことするくらいなら、融合使った方が早かったんじゃないの?」
「無理だよ、渡した融合は実験用だから融合は1回のみ。まぁでも協力してくれてありがとう。開発者はきっと喜んでるよ」
大天使と究極生命体は互いに神気を解放し、黄金の戦士へと変身する。完全復活を遂げた穏雅の神気は元の輝きを取り戻し、師であるラフサナファエルもそれ以上の神気を放っている。未だ見たことない兄の強さと、本気であることを間近で見ることで、穏雅は決して油断出来ない戦いであることを全身で感じ取っていた。
そして先程新たに天使から教わったことを、実践出来ない悔しさも同時に感じていた。
「空って羽が無くても飛べたんだね…知らんかった…」
「いやいや、お前死神の時はふわふわ空飛んでただろ。というか、あんぐらい神気を扱える者なら造作も無いことなんだぞ。教えてなかったのは謝るけど…」
「聞いた時は驚いたよ…まさか央力には教えて、俺には教えてくれなかったんだから…」
「だからさっきちゃんと教えただろ。それにコツを掴んじまえば簡単だっただろ」
それは空を飛ぶということだ。神気を体に纏い、細かく発することで宙に浮かぶことが可能になる。もちろんそれに使う神気は黄金の戦士や金の瞳の戦士と比べて格段に少なく、慣れてしまえば歩くように空を飛べる。そもそも穏雅は日々の死神業で散々宙を舞っていたのだから、今更教わることでも無かったのだが。
当然ロボも教わればすぐ飛べるようになったので、宙に浮いているハルファフルエルの範囲内に入るのもそう難くは無い。
そしてついに決戦の時は来た。ラフサナファエルと穏雅は雨霰の如く気弾をハルファフルエルに向かって投げ付ける。
「だりゃりゃりゃりゃりゃっ!!」
「うぉおおおおっ!!」
しかしその気弾がハルファフルエルに当たる前に、
「……ラー……」
キュァィィイインッ…
ピギュァンッ!!!
ドドドドドドドドドドッ!!
光の壁によって塞がれてしまう。
「はぁっ!? バリヤーまであんのかよ!」
「怯むなっ!! 撃ち続けろっ!! でなきゃロボがやられんだぞ!!」
そのバリヤーに穏雅は難色を示し、一瞬だけ攻撃の手を緩めてしまう。しかしすかさずラフサナファエルが喝を入れてくれたおかげで、穏雅はまた持ち直して気弾を放ち続ける。
「くっ…これ行けんのか…」
そんな2人を遠目に、1人ハルファフルエルの背後に回ったロボは今か今かと機会を伺っていた。雨のように放たれる気弾は全てバリヤーによって塞がれており、果たしてこれで気を引けているのかと、ロボは疑心暗鬼になっていたのだ。これでもし気を引けていなかったら、範囲内に入った途端、自分にはあの山々を軽く消し飛ばす光線が飛んで来る。そうなれば背中のスイッチを押すどころか、何も出来ずに体が抹消してしまう。
(行くべきなのか…っ!? 否か…っ!?)
ロボは1人葛藤し、今1つ前に踏み出せないでいた。もしもこれで2人が気を引けていなかったら、自分がたどり着くより先に相手がこっちに気づいたら、そんな恐怖がロボの胸の中に渦巻く。
(くそっ、せっかく俺は世継に会えたってのに、やられたら共々一巻の終わりだ。まだしてやりたいこと何1つ出来てないのに…っ。でも…)
だが世継への想いは怯えていたロボを逆に勇気付け、
(俺がやらなきゃ…どっちみちっ!)
前に進む意思が芽生えた。
「くっ!!」
ダンッ!!
覚悟を決めたロボは大地を蹴り、神気を纏い、空を飛んだ。
「ロボが飛んだっ…火力上げるぞ!」
「言われなくてもっ!」
それを確認したラフサナファエルと穏雅は放つ神気の火力を上げ、更にハルファフルエルの注意をそらし続ける。
しかし、
「……ラー……ラー……」
ファララララララララララララッ……!!
ハルファフルエルは体の周りに光輪を纏う。
「やばいっ!!」
ダンッ!!
「兄貴っ!?」
その瞬間、あの攻撃が飛んで来ることを悟ったラフサナファエルは宙へと飛び出していた。
「ロボッ!! 急げッ!!」
「……まじかよっ!! くそがっ!!」
ボワッ!!
ラフサナファエルの忠告はロボを擬似黄金の戦士へと変身させ、その速度を一気に上げた。だがその間にもハルファフルエルの攻撃準備は整っていく。
ヒュララララララララララララッ!!!
範囲内に入った者は2人、だから正面と背後にそれぞれ光が収束していく。
「ぐっ!!」
次の瞬間、せめてもの抵抗とラフサナファエルは手に貯めていた神気で気弾を作り、それをハルファフルエル目掛けて投げつけた。
ドォッ!!
それはほんのコンマ数秒だけハルファフルエルの攻撃準備を延長させ、ロボがあと少しというところまで迫らせた。ロボは精一杯腕を伸ばし、何とか背中のスイッチを押そうと試みた。
だがそれでも、
キィンッ!!!
「っ!!」
「うっ!!」
ハルファフルエルの攻撃は間に合ってしまったのだ。
そして瞬き1つの間に、
ギャオオオオオオッ!!!
2人の体を光の束が包んだ。
次回の投稿もお楽しみに




