永遠に不滅な家族
おまたせしました
挿絵あり、ちょいグロ注意
「始まりを司る闇ー?」
「……」
俺は疑心暗鬼の眼差しを始まりを司る闇に向けるが、アダムはスッと俺から目をそらしこちらを見ようともしない。
「ご主人様っ、まさか私には制裁してアダムにはしない何てこと無いでしょうねっ!?」
「分ーった、分ーった。でもさ、罪が確定しない限り制裁を下すわけにはいかんだろ。ちゃんと嘘を司る闇に見てもらってからだ」
「ふんっ、私は信用無いってことですかそーですかっ!」
植物を司る闇はぷぅっと真っ赤な顔していじけてしまった。そして乱暴な手つきで草花の手入れを妹達と始めてしまう。
「別に植物を司る闇を信用してないわけじゃ無いさ。ただお前もお前の妹達も、始まりを司る闇も、みんなみんな俺の大事な家族だ。そんな家族をむやみやたらに引っ叩きたくは無いんだよ、俺はさ」
ふくれっ面の植物を司る闇をそう言って俺はなだめた。
「…そうですか、はぁ…そうですね」
植物を司る闇はそっぽを向いたままだったが、手入れの手つきが優しくなったことや足元に咲き乱れる花を見れば顔を見ずとも感情が変わっていくのが分かる。そんなグーテ=クシャナの側を通って俺は残る娘達も抱きに行く。
「ちょっ、ご主人様…」
「まだ、草花を司る闇と若草を司る闇を抱いて無いだろ。抱かせてくれよ」
「…足元、気を付けて下さいよ。花咲いてるんですから」
植物を司る闇はスッと自分の足元を指差すと、そこには様々な花が咲き乱れている。
「あっ、この花知ってるぞ。チューリップだろ。他は知らんが」
俺が分かるのは橙色をしたチューリップだけだった。すると草花を司る闇がパタパタとやって来て俺に咲いてる花の名前を教えてくれた。
「はやかが教えたげるっ! これは『バーベナ』でしょ、こっちは『サルビア』っ! 『アネモネ』に、『キキョウ』だねっ!」
「なるほど、ぜんっっぜん聞いたこと無いのばっかだな。まぁいいや」
ぎゅっ
「むふ、ご主人様あったかい…」
俺は咲き乱れる花の中、草花を司る闇を抱き寄せた。俺よりも一回り小さいフリャーナミの体は、花のようにいい匂いと草の根のように強い力で俺を抱き返す。1歩向こうには羨ましいそうな顔した若草を司る闇が指を咥えている。
「おいで、若草を司る闇」
「…んっ」
俺が呼ぶと、若草を司る闇はテコテコと手を広げてやって来ると、
ぎゅっ
草花を司る闇よりも小さい体を生かして、その間に割り込んだ。そんな娘達を抱きながら俺は、
「今度さ、ブドウ育ててよ。姉妹みんなでさ」
とお願いした。
「ブドウか…いいよっ! 美味しいよねっ」
「ぅん…分かった」
「ありがとな。実は俺、『ブドウ』の花が1番好きなんだよね。なんて言うか…あのボソボソッて咲く感じが好き」
俺はそう言って娘達を離すと、咲き乱れる花を踏んづけないよう気を付けて引き返した。草花の生えているところを出るなり、3姉妹はまた仲良くそれぞれの草木の世話をし出す。思えば娘達の中で姉妹関係にあるのはあの3人くらいだ。
他にいるとするなら、水を司る闇と氷を司る闇だろうか? でもあの2人は姉妹というよりかは、同じ存在と呼んだ方がしっくり来る。何せどちらかが溶ければどちらかが固まり、能力もそっくり入れ替わるのだから。実際にナテ二ティが凍っていくと同時にナタ二ティ・ミニュが溶けていき、変わってしまうところを見せてもらったわけだし。
それに姉妹関係では無いが、司る能力が近かったり、気が合うから一緒にいるって娘達だっている。例えば、雷を司る闇と雨を司る闇、嘘を司る闇と痛みを司る闇、影を司る闇と空間を司る闇とか考えただけで無茶苦茶出て来る。
むしろ誰とも接点を持たず、孤独を好む娘など……孤独を司る闇がいたか。でもソリュテットもしょっちゅういろんな娘に絡まれてるから、基本的にずっと1人でいることはない。
まぁ、107人もいれば嫌でも他の娘達と関わり合うか。
そう考えていると、
「……グチグチ」
「この卵どーう?」
上辺を司る闇と産卵を司る闇が一緒にいた。リャ=フォールティはカゴの中にある卵を次々とギェッサ・ハーバルトの顔の穴に詰め込んで行く。ギェッサ・ハーバルトには顔や指紋はおろか、識別に見受けられる上辺が無い娘だ。だから他人の声や顔の皮、声帯を取らないと喋れないのだ。
「……っ!」
「ふむふむ、味は悪くなさそうだね。じゃあこれは?」
産卵を司る闇はそう言ってどんどん上辺を司る闇の顔の穴に卵を入れていく。ギェッサ・ハーバルトの表情は読み取れないものの、仕草からして明らかに悪くない味の卵を喰わされている感じではなかった。俺はすかさずその間に割って入り、リャ=フォールティの手を止める。
「あら、これはこれはご主人様。アタシの卵、喰べてみます?」
「いや…嫌だよ。つかこんなに作ったのか…」
「……っ!」
産卵を司る闇はカゴから1つ卵を取り出すと、俺の口に押し込むように差し出した。すると上辺を司る闇はこちらを振り向くや、わーんと泣きつくように俺の体に抱きついて来た。
「ーっ! ーっ!」
「なるほど、泣くほど美味しかった…と」
「絶対違うだろ…ったく、味の感想が聞きたいなら捕食を司る闇や舌を司る闇にでも聞けばいいだろ。何で上辺を取り繕わなきゃ喋れない上辺を司る闇にやってんだ」
俺はそう言いながら上辺を司る闇の頭を撫でてやる。いったい何個、産卵を司る闇に、卵を顔の穴に捻じ込まれたのだろうか。こうして泣きついて来るところを見るに、明らかに過剰な量を喰わされたに違いない。
「だってぇ、シャム=フォーレンは何でも喰べちゃうしぃ、チブュップェはトゥーン・ネチェルの蜜を舐めてたしぃでぇ、たまたま近くにいたのがギェッサ・ハーバルトだったんだもん。それに断らないしさぁ」
「断らないんじゃ無くて断れないんだよ、上辺を司る闇は。顔も声も今は無いんだから」
「……」
上辺を司る闇はぎゅっとさらに抱きついて、無い目で産卵を司る闇を睨みつける。その光景にリャ=フォールティはやれやれって顔をすると、
「もういいわ。余った卵はメルク・ミルュクにでも頼んで夕飯に出してもらうわよ。そしたら美味しく喰べられるでしょ」
と言ってその場から立ち去ろうとした。その背後を追いかけ、
ぎゅっ
「…何の真似です? アタシはレマッサ・ティアーノじゃ無いぞう」
「これからよろしくって意味だ」
「なるほど、これはそのハグってことですか」
「そゆこと、何たって永遠に一緒にいるんだから」
と産卵を司る闇にも同じように抱き付いた。リャ=フォールティは呆れた声をしつつも、どこか暖かい雰囲気でそう言った。
リャ=フォールティを始めとして、危険な能力、性格をした娘達は他にもいる。けれど危険視するのと愛するのは全くの別物だ。先ほど植物を司る闇にも言った通り、俺は家族全員を愛している。だから1人1人しっかり抱いてやらないとね。
「さてさて、まだまだ先は長いぞ」
「いえいえ、これから先のことを思えば、ほんの一瞬にも過ぎません」
「そうか…そうだな」
「えぇ、私ら究極の闇一同、いかなる時も側に」
俺は始まりを司る闇と共に闇の中を進み、他の家族達を探しに行く。
「あと始まりを司る闇、俺の体をくすぐった容疑。俺まだ忘れてねぇからな?」
「……」
そうして全ての娘達を抱き終え、体をくすぐった犯人に制裁を喰らわした俺は一度闇を抜けて外に出た。
「あっ…いたのか」
「うわっ、ヌルッて出て来たな…。つか何だその仮面…」
そこには変なものを持って待ち構えていたロボがいた。
「へへっ、いいだろ?」
「いや別に、欲しいとも思わん」
「何っ? 俺の娘がわざわざデザインしたんだぞ!」
「知るかよ、つかそんなこと聞きに来たんじゃねぇんだよ俺は」
そう言ってロボは立ち上がると、俺の手に何か怪しい金色のものを取り付けようとした。
「何だよそれっ、変なもの付けんなっ!」
「前に言った拘束器具だよっ! それとお前の刑が決まったからそれを告げに来たんだっ」
「あっ、なるほどー。つかそんなものが拘束器具? こりゃまた随分ちゃっちいなぁ…こんなもので俺を拘束しようって考えてんなら、甘過ぎんだろ」
「ま、普通の拘束器具なら、お前はすぐ引き千切っちまうからな。性能よりも丈夫さを取ったんだってさ」
ガチャッ
そう言いながらロボは俺の手と足、そして首に拘束器具とやらを取り付ける。金色をしたその拘束器具は、俺の手のひら、足首から爪先までをすっぽりと覆い隠す。だが首に付けたものも含めて意外と圧迫感は無く、付けている感じもあまりしない。まるで体の一部にでもなったみたいだ。
「へぇ、拘束器具って割には全然拘束された感じしねぇな。何なら前まで絡まってたぶっとい鎖の方がまだそれっぽかったぜ」
「言っただろ、性能よりも丈夫さだって。それとお前の刑罰に付いてだがな…」
ロボは少し間を開けて俺の刑罰に付いて話し始めた。だがどんな刑が来ようと、今の俺が苦しむものでは絶対無い。もしそんな刑があるのなら、とっくの昔にやっているはずだ。そう腹をくくって俺はロボの口から俺の刑罰が出るのを待った。
次回の投稿もお楽しみに




