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アンバランス・ワールド  作者: がおー
第2章 〜うちの主人は死神様〜
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究極の闇の制限は

おまたせしました

「ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!!」


 嘘を司る闇(トンヅォ・サピ)のけたたましいサイレンのような声が鳴り響く。今までとは明らかに違う反応、ってことは植物を司る闇(グーテ=クシャナ)は嘘を付いてる可能性大ってわけだ。


「おい、嘘付いたのか…?」

「……」


 俺がグイッと詰め寄ると、植物を司る闇(グーテ=クシャナ)は素っ気ない態度でプイッとそっぽを向く。その反応からして明らかに怪し過ぎる。


「…嘘付いた理由は聞かねえけど、ちゃんと制裁はすっからな」

「……チッ。花言葉は『愚か』(ザクロの花)をあげたのに、意外とちゃんとしてるんですね…」


 パァンッ!!


 植物を司る闇(グーテ=クシャナ)の弾力のある頰に俺の(てのひら)が勢いよく打ち付けられた。反動でグーテ=クシャナはバターンッと倒れ、引っ叩いたところを手で抑えながらこちらに反抗的な目を向ける。そんな長女に妹達がパタパタと駆け付けて来る。


「おねーちゃんっ!」

「ねっちゃっ!」


 妹達に支えられながら植物を司る闇(グーテ=クシャナ)はふらふらと立ち上がる。そして妹達の頭を撫でながら、


「私なら大丈夫。ちょっと頭がぐらつくけど」


 と俺には見せたことの無い優しそうな声でそう言う。しかし妹達の不安そうな顔は晴れず、長女にぴったりくっついて離れない。そんな妹達をすっと抱き寄せながらこちらを睨むと、


「頼りないって思ってたけど…こう言うのは容赦無いんですね…」


 と少し口角を上げてそう言った。その言葉に込められた真意など分からないけど、何となく植物を司る闇(グーテ=クシャナ)の俺に対する何かが変わったのは感じ取れた。

 だがまだまだ俺の体をいじり倒した娘はいるだろう。俺は嘘を司る闇(トンヅォ・サピ)と共に更なる罪人達に制裁を下した。


 パチィンッ!! スパァンッ!!


 ペチッ!! ピシッ!!


 それから俺は合計4名の娘達の頰にビンタを喰らわした。体に猛毒を吹きかけた猛毒を司る闇(テイストゥ=ドゥーラ)、体に雷を巡らせた雷を司る闇(トト)、には強烈なものを。

 そうして4番目の罪人である雷を司る闇(トト)への制裁を終えた俺は、尋問を再開しようとその場から立ち去る。


「ぷぅ…痛い…」

「さて、後は…」


 すると雷を司る闇(トト)はぎゅっと俺の足を掴んで止めた。


「むぅー、ライ物陰で見てたもんっ。麻薬を司る闇(ドゥリュエンツ)がご主人様の体に麻薬を打ち込もうとしてたのっ!!」

「あっ! おまへっ!!」


 雷を司る闇(トト)はぷーっと頰を膨らませ、パチパチと髪をスパークさせると、麻薬を司る闇(ドゥリュエンツ)を指差してそう告げる。なるほどね、と俺は(うなず)いてドゥリュエンツの方に向かう。念のため聞くと、始まりを司る闇(アダム)に止められ未遂に終わったとのことだ。再発防止のために一応威力を抑えて引っ叩いておく。


 そして俺の首筋をガジガジ噛んでたやつだが、この犯人は何と自由を司る闇(タプロッツ)だった。その光景を見ていたと、抱擁を司る闇(レマッサ・ティアーノ)が報告したことにより分かったのだが、これは制裁を与えてよいものかなかなか難しいところの娘が来た。

 何故ならタプロッツは司る闇の名の通り、何にも縛られず自由奔放に色々しでかす娘なのだ。それすなわち、俺の命令や制御を完全に離れることに等しい。今だって、俺が並べって言ってんのに、もう列を離れてどっか行こうとしてる。そんな娘に制裁を下しても意味は無い。それで、どうしようか考えていると、


「タプロッツの不始末は(わたくし)の目が行き届いていなかったことにあります。故に制裁を下すならならば(わたくし)めに」


 と抱擁を司る闇(レマッサ・ティアーノ)が名乗り出た。自由を司る闇(タプロッツ)の罪は自分の管理意識の甘さ故とのことで、その責任を取るために制裁は自分が受けると言うのだ。



「そうか…じゃあ、行くぞ」

「お願いします…」


 ……



 しかし俺は抱擁を司る闇(レマッサ・ティアーノ)にビンタをすることは出来なかった。何せレマッサ・ティアーノの背丈は娘達の中で1番大きい2m(メートル)超え。それに対する俺の身長は1.6m(メートル)。ビンタを喰らわせるには全然足りない。


「ちょっ…抱擁を司る闇(レマッサ・ティアーノ)…」

「はい、何でしょうか。それよりも早くして下さいよ」


 俺は腕を限界まで伸ばすが、それでも抱擁を司る闇(レマッサ・ティアーノ)の頰には届かない。


「いやっ…お前っ…屈めっ! 届かねんだよ! おまっ…まさか(はか)ったなっ!?」

「…知りません」

「ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!!」


 そうして俺は弱々しい制裁を抱擁を司る闇(レマッサ・ティアーノ)に下すのだった。


 最後の罪人を裁き終えたところで、俺は107もの娘達に、


「お前らなぁ…ご主人様、ご主人様っ言っときながら何してんっ!? 俺の体で遊ぶなっ!」


 と大声で言った。会った時は敬語使ってたから、俺を敬ってんのかなと思ってたけど、まさか体を預けたらこんな好き放題されるとは。まぁ、これから永遠に共に過ごすのだから、こんな刺激的な日々は退屈しなさそうだけど。


「はぁ…とにかくだ。次、俺の体で遊んだやつはまたビンタの刑だからなっ!」


 俺は最後にそう言って制裁タイムを終わらせた。すると娘達はズルズルと闇の中へ…というか俺の影へと戻っていく。こういうのを見せつけられると、娘達が本来は、『俺の力の一端』だということを思い知らされる。俺は決してそんな風に思いたくなど無いのに。


 だがそんな風に凹んでいてはいけないと、俺は新たに得た力と共に1つ穏雅とロボ(あの馬鹿共)をぶっ飛ばそうと計画することで気を取り戻した。そうして体にグッと力を入れるが…


「……?」


 いまひとつ強くなった気がしない。いや、きっと強くはなってるのだ、少なくとも目が金色に変わる時よりかは。

 しかし何故だろう、髪が穏雅やロボ(あの馬鹿共)みたく金色に変わる時と比べると明らかにパワーが劣っている気がしてならない。


「あっ…始まりを司る闇(アダム)ッ!? アダムはいるかっ!?」

「はい、いかがなさいましたか、ご主人様」


 俺は慌てて始まりを司る闇(アダム)を呼ぶと、自分が金色に変わった時と比べて力が弱くなっている気がすると伝えた。するとアダムははてなと首を傾げ、そんなはずはございませんと返す。しかし俺はどうしても明らかな力不足感が否めないでいた。


「なぁなぁ、俺の中では明らかに、金に変わった時より弱くなってる気がするんだけど。これじゃアイツらを殺せねぇよ」

「…そうでしょうか? 今のご主人様に最早『黄金の戦士』など敵では無いと思うのですが…」

「ええ…で、でもなぁ…多分コレでアイツらを倒す……うぅん、無理だな」


 俺は自分の体を見ながらそう結論付けた。幾度となく拳を交えて来たからこそ、アイツらは生半可な力じゃ倒せないと分かっているから。すると始まりを司る闇(アダム)は不満気な顔して、


「し、しかし、『究極の闇』は『黄金の戦士』の力を捨てることで初めて成る力なのですよ?」


 と答える。


「ふぇっ!?」


 始まりを司る闇(アダム)の意外な一言に俺は驚愕(きょうがく)し、思わずガッと肩を掴んでしまう。


「おっ、おいっ! 何だよそれっ!? それじゃ俺は、わざわざ強い力を失って、弱くなっちまったってことかぁ!?」


 俺は始まりを司る闇(アダム)の肩をゆさゆさ揺らしながら、上手く回らない口で尋ねた。アダムは目を丸くし、驚いた顔で俺の質問を聞いていた。が、すぐに落ち着き払って1つ1つ説明してくれたから、俺も何とか高ぶる気持ちを鎮めることが出来た。



「まぁ…ご主人様が弱くなったとお思いなら、実際にそうである可能性が高いのでしょう。しかし『黄金の戦士』の力も完全に失われたわけではございませんのでご安心を。ただ…」

「ただ…?」

「『黄金の戦士』と『究極の闇』を同時に使うことは出来ないのでございます。どちらも『魔神の力』が元にある故。それに、もしご主人様が『黄金の戦士』になってしまうと『究極の闇』の力は全て失われ、不死身でも無くなってしまうのです」

「つまり…俺が金になっちまうとお前らには会えなくなっちまうのか?」



 俺がそう問うと、始まりを司る闇(アダム)はコクリと(うなず)いた。それに対し俺はスゥッと息を吸ってから、ふぅーっと深く吐くと、


「分かった…分かったよ」


 と呟く時のような声量で答えた。つまり俺は結局強くなったわけでは無く、新たな力というよりかは、家族(求めていたもの)手に入れただけだったのだ。その事実に俺ははぁっおもう一度深く息を吐くと、


 ぎゅっ


「ご、ご主人様っ!?」

「親は子を抱くものだろう?」


 と言って(アダム)をそっと抱きしめた。


「これからよろしくな」

「えっ…ええ…こちらこそ」


 俺は静かに始まりを司る闇(アダム)から離れると、他の娘達にも同じようにしなければと『究極の闇』とやらの力を使って自分の闇の中へと入って行く。闇の中は不思議と心地よく、俺の体を優しく飲み込んでくれる。そこに光のような目を焼かれる痛々しさは無く、ただただ何も見えないという柔らかさがあった。

 この闇の中で永久に娘達と…望んでいた家族と過ごす。そう思うと胸の中にずっと鍵をかけていた何かが、ガチリと音を立てて開いていく。


 俺の求めていたのは……ここにあったのだ。


 闇の中に安らぎを感じながら俺はその中へと堕ちていく。


「おや、これはこれはご主人様。あなたのせいでまだ左の頰が痛みますよ。おかげで『スノードロップ』、『トリカブト』、『アザミ』の花を咲かせたくなってしまったではないですか」

「よく分かんない名前の花を咲かすな」


 闇の中で最初に会ったのは、植物を司る闇(グーテ=クシャナ)とその2人の妹達だ。グーテ=クシャナのほっぺたには救命を司る闇(シェルンパ=メーツ)が付けたであろう絆創膏がある。その横で咲き乱れる花弁や緑の数々、そして若草を司る闇(グーテン=フリャン)の世話をする草花を司る闇(フリャーナミ)の姿がある。

 そんな三姉妹に俺はそっと近づくと、まずは長女から、


 ぎゅっ


「……ちょっ!? ご、ご主人様っ!?」

「これから永遠によろしくな。頼りないご主人様だけどね」


 と言って抱きついた。すると、


 ぼむんっ


 と植物を司る闇(グーテ=クシャナ)の頭に1輪の花が咲く。


「ん? 何だその花」

「こっ、これはっ! ただのプリムラの花ですよっ! べ、別にやましいことなんか無いんですからねっ!」

「またよく分かんない花を…」


 よく分からないまま俺は植物を司る闇(グーテ=クシャナ)から離れると、その顔は何故かプリムラの花みたく真っ赤になっている。そんなグーテ=クシャナを見ていると、俺と目を合わせぬよう、キョロキョロ辺りを見回し始める。


「っていうかアダムッ! お前何さらっと1人だけ刑罰回避してんだよ!」


 すると突然始まりを司る闇(アダム)を指差したかと思えば、らしくない口調とトーンでそう叫んだ。


「ちょっ? お、おねーちゃん?」


 長女の変わりように思わず草花を司る闇(フリャーナミ)は突っ込むが、植物を司る闇(グーテ=クシャナ)はまるで止まる様子が無い。

 そしてポンポンッと全身に花を咲かせながら、


「私見てたんだからねっ! アダムがご主人様の体をペタペタくすぐってたところっ!!」


 と答えた。衝撃発言に俺はえっと驚き、その振り向くと、


 チラッ…


「……」


 スッ……


 始まりを司る闇(アダム)はスッと俺から目をそらした。

次回の投稿もお楽しみに

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