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アンバランス・ワールド  作者: がおー
第2章 〜うちの主人は死神様〜
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更なるいたずら

おまたせしました

 央力(おうり)の嫌な予感は見事的中し、無抵抗な主人の肉体を前に数多くの力を持った闇が集まっていた。


「じゃあうくから行こうかな。うくの猛毒がどれだけ通じるか…」


 最初に名乗り出たのは猛毒を司る闇(テイストゥ=ドゥーラ)だった。ふぅーっと息を吐くように猛毒を撒き散らしながら主人の体に近寄ると、ガリッと自分の右腕を噛む。



 ガリッ…



 もう一度噛む。



 グチッ…ブチャッ…



 さらに噛む、噛み千切る。


「ぶふぅ〜…」


 テイストゥ=ドゥーラの腕はズタズタになり、真っ黒な血が流れ出す。しかしテイストゥ=ドゥーラはそんなことものともせず、グチャグチャと自分の腕の肉を噛んでいく。そして主人の体にガッと掴みかかると…


「ブゥウウウウッ!!」


 っと肉片や血を思い切り口から噴き出した。噴き出されたテイストゥ=ドゥーラの血肉が主人の肉体に付くやいなやジュウジュウと音を立てて煙を立てていく。

 しかし流石は不死身の肉体、腐敗していく場所から新たに肉体が再生していき、その隙に解毒を済ませてしまった。


「…っ、流石はご主人様のお体…うく程度の猛毒ではダメでございましたか…」


 テイストゥ=ドゥーラは少し悔しそうに笑いながら下がっていく。自分の右腕が中破しているのでこれ以上の無理は踏んだのだろう。肉体はすでに回復しきっており、猛毒を浴びたという痕跡は微塵(みじん)も無かった。


 しかし頭の方では…


「…ぐふぅっ!」


「おおっ? どうした」


「何か…体が腐ってくみたいな激痛が…」


「はぁ?」 


 もちろん肉体が受けた痛みを感じていた。

 だがまだまだ央力(おうり)には苦痛を与える娘達(刺客達)が控えている。


「ふっ、やっぱ『猛毒』じゃ無理よね。ここは私が行ってあげる」


 次に名乗り出たのは植物を司る闇(グーテ=クシャナ)だ。妹2人は少し不安気な顔をしているものの、興味を司る闇(ラッピルィーニャ)によって興味を刺激されている姉を止めることは出来なかった。


「ふふっ、時間ギリギリになって問題用紙を必死に見返している受験生みたいな目してよぉく見ておきなさい。私の力を、ね」


 グゴゴゴッ…


 グーテ=クシャナはそう言うと、足元に植物の根を張り巡らせる。そして少し細い(つる)を手に持ってビンッと張りながら主人の肉体にゆっくりと近づいていく。


「そもそもご主人様は男の子なんだから、()()を狙わないとねぇ」


 シュルルッ…



「な、何か俺の○○○に変なものが巻き付いて…」


「ええっ…お前何してんだよ」


「違ぇよっ! た、多分…」



 その感触を頭だけの央力(おうり)もばっちり感じており、冷や汗をかきながらも抵抗出来ないことに無い肩を落としていた。

 そして闇の中では準備万端のグーテ=クシャナが不敵な笑みを浮かべて巻き付けた箇所を見つめている。


「よぉく見て起きなさい、ご主人様の体が震え(もだ)える様をねぇっ!」


 グチュィッ!!


 ギチギチギチッ……


「…あらぁ? おかしいわね…」


 しかしご主人様の肉体は何の反応を見せない。まるで効いてませんよとでも煽るように。


「チッ…鈍感なご主人様。もういいわ、他にも試したい子がいるみたいだし、いつまでもいたら格好がつかないからね。ほら2人とも、行くわよ」


 グーテ=クシャナはふんっと不貞腐れながらも、これ以上やるのは馬鹿にされる種を植え兼ねないと見て、妹達を連れて引き下がった。その瞳にどうすれば悶絶させることが出来るか、と考えながら。


 そして体と感覚が繋がっている頭の方は…



「ゔぁあああっ!! ……っ!! ……っ!!」



 大ダメージを受けて悶絶(もんぜつ)していた。抵抗など叶わないまま自分の急所を強く潰される痛み。しかもそれが突然来たものだから、声すら上げられぬほどの激痛を感じていた。

 しかしまだまだ自分の力を試したい闇達はいる。


「次…ライ」


 そう言って出て来たのは雷を司る闇(トト)だ。その目と髪には闘志の火花を散らしており、やる気の強さを露わにしている。体の表面には体内に抑えきれないほどの電気が溢れており、歩く度にバチバチと空気中で放電現象を起こしている。


「トトか…でもグロリッサやグーテ=クシャナっていう力のある方の闇がダメだったのよ。あなた、そこまで力がある方じゃ無いじゃない」

「そらそうだけど…ライだって力は試したいもん。それにライは自分の最大電力がどれだけか知りたいだけだすぃー」


 ずっと側で見守っていたアダムはやって来たトトに向かってそう言うが、トトは止まるそぶりなど見せずにズンズン主人の体へと近づく。そしてギュウッと主人の体に抱き着くと…


「ライの雷…喰らって下さいなっ!!」


 バヂバヂバヂッ!!


 と体内から全力で電気を放出させ、肉体に思い切り感電させる。だが主人の肉体はビクともせず、焦げ1つ残さずに耐えてみせた。



「わびびびびっ!!」


「うわっ…今度は何だよ」



 もちろん頭の方は体に流れる電流のダメージを喰らい続ける。

 そんなことをつゆも知らないトトはふぅと肩を落として主人の体から離れる。


「ひゅうっ、やはりライの雷ではまだまだですね」


 体内の電気が少なくなったのか、トトの尖っていた髪はしなっとへこたれてしまっている。トトはトボトボと自分の非力さを感じつつ、失った電気をまた精製するためにその場を離れた。


 そして次にやって来た闇は…


 ヒタッ…ヒタッ…


「次はドゥリュエンツですか…」

「へっへへ…」


 フラフラとおぼつかない足取りで歩いて来た。その手にはどっから持って来たのか分からない注射器を握っている。


「へっへっへ…わらひの血で薬漬けにひてやんよ…」


 そう言いながら近づくのは、『麻薬を司る闇』、ドゥリュエンツだ。身体中に流れる血は強い依存性と互換性が効かないという効果を持つという、まさに最悪の闇の1人だ。


 チゥーッ


「わらひの血ならぁ…イチコロよぉおおああっ!」


 ドゥリュエンツはそう言いながら自分の腕に注射器を打ち込むと、そこからドス黒い血を抜き取った。そして麻薬の成分がたっぷり含まれた注射器の針先を主人の体に向けて突き立てようとしたその時、


 ガッ


「残念だけどあなたはダメよ。不純物が混ざったらご主人様の完成が遅れるわ」

「な…なにひぃいい?」


 すんでのところでアダムがドゥリュエンツの手を止めた。ドゥリュエンツはギリッと憎たらしい顔を見せるものの、アダムの手を払いのけられるほどの力は無かった。


「ひかたねぇなぁ…ゴグゴグッ…」


 ドゥリュエンツは注射器の中身を自分で飲んで処理すると、アダムはさっとその手を離した。ドゥリュエンツはなおも怒りがこもった表情を浮かべるが、アダムにはまだ勝てないと踏んで引き下がった。


「やれやれ、まさかドゥリュエンツが来るとは…流石にやつの麻薬はご主人様の体に影響を出し兼ねませんからね」


 アダムはやれやれと主人の体を見つめながらそう言った。ドゥリュエンツの麻薬の力は究極の肉体の完成に悪影響を出し兼ねないと思ったのだ。完成まではまだまだ時間がかかる現状、始まりを司る闇として主人の体は自分が守らなくてはと1番近くで監視しているのだ。

 グロリッサやグーテ=クシャナ、トトなどの力系の闇なら問題は無いだろうと思って見逃して来たが、ドゥリュエンツのような危険度の高い闇はちゃんと取り締まるつもりだ。


 しかし次にやって来た闇達はそうもいかなかった。


「よぉよぉ、今ご主人様の体使って腕試ししてるんだって!? 私達も混ぜろ混ぜろッ!!」

「フハハッ!! 血湧き肉躍るなぁ!!? えぇっ? 処刑を司る闇(グーロズ=ハンゾェ)ェッ!!」

「そうだなぁ!! 残忍を司る闇(ペロローム)ゥッ!!」

「…最悪だ」


 歓声を上げ、意気揚々にやって来た2人組は我らの主人が危険視するほどの闇だ。その名の通り、『残忍』と『処刑』を司る2人の闇はいつでも血肉に飢えていて、受刑者の悲鳴を聞き、(なぶ)ることだけを考えている。傷つけることに胸など決して痛まない、むしろそれに快感を覚えているというかなり危険な闇達だ。現にご主人様と慕う者の首を何の躊躇(ためら)いも無く切り落としたのも2人なのだから。


「さぁて、アダムゥ、そこをどいてもらおうかなぁ? 私達にもご主人様の体をいじらせろよぉ」

「そうそう、ちなみに引くことをお勧めするぜぇ。お前だってご主人様と一緒に処刑されたくはねぇだろぉおん?」


 グーロズ=ハンゾェとペロロームはニタニタ笑いながら近づいて来る。その手には刃先の歪んだノコギリやぶっといペンチ、粘着力の強そうなテープなど数々の処刑道具や拷問器具が握られている。

 そしてアダムは何となく分かっていた。2人は自分の力を試しに来たのではないことに。ただひたすら肉を傷つける快楽に酔いしれたいだけということに。2人の力は自分やグロリッサほどでは無いがそれなりに強い。もしも2対1という状況になったら苦戦は免れないだろう。そうなったら2人は体をいつまでも(なぶ)り続け、体の完成に大きく影響を出すだろう。


「残念ですがあなた達も下がってもらいましょう。肉体の完成を邪魔されてはたまったものではありませんからね」

「ふぅん、アダムは偉いねぇ。憧れちゃうなぁ」

「ほんっとほんっと、その態度がどう変わるかゾクゾクするね」


 グーロズ=ハンゾェとペロロームは笑いながら戦闘態勢に入る。そんな2人を迎え撃つため、そして主人の体を守るために、アダムはビシッと構え、迎撃体制に入る。

次回の投稿もお楽しみに

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