最狂の不死身
おまたせしました
「…」
「…」
「おい、何見てんだ。つかお前ら死んだんじゃ無かったのか。ケッ、驚かせやがって」
俺達は生首状態と化した央力を唖然とした顔で見つめていた。ことの元凶かと思っていた央力がまさかこんな状態にされているとは。そもそもあの世の住人とて首を跳ね飛ばされれば『更なる死』、つまり魂は消滅するのに何で央力はこんなにピンピンしてるのか。しかも髪の毛が異常に伸びてる気がするし。
「あっ、別にお前らがいなくなったからって心配してたりとか、落ち込んでたわけじゃねぇからな! むしろいなくなって清々してたんだぞっ! 本当だぞ!」
「…?」
俺はチラッと横にいるロボに目を向けるが、ロボも状況を把握していないようで目をパチパチとさせている。そんな俺達に央力は生首のままバタバタと暴れて落ち込んでないとか、心配してないとかと必死に弁明をしている。そこに以前のような冷淡さや残酷さは無く、どちらかといえば子供がワガママ言っているみたいだ。
「と、とにかくお前は何してんだ。つか何でそんな見た目になっちまんだ」
そんな中、ロボはやっと央力にそう尋ねた。よく頭の中の混乱を打ち切って尋ねられたと俺は感心していると、
「ふっふっふっ、聞いて驚くなよ。俺は今、不死身不老不死、そして究極の力を手に入れて地獄から舞い戻って来たのだ。お前らには絶対に手に入れることの出来ない、究極の力をな」
とドヤッて踏ん反りかえった。しかし俺達から見れば今すぐにでも倒せそうな見た目だし、馬鹿でかい神気も感じられない。ましてや『魔神の力』さえも。にも関わらず央力はドヤ顔を絶やさず、俺達を見上げながら見下している。
「ふんっ、俺がどうやってこの力を手にしたか知りたいか? 知りたいだろ? 仕方ねぇから教えてやろう、ありがたく思え」
央力はガキの自慢のように尋ねてもない力をペラペラと喋り出した。その態度にかつての面影は無く、精神も別の方向に退行しているようだった。それにこんな無力に等しい央力がここまでドヤッてるのも不思議だった。だから俺達は瓦礫の上に座って央力の自慢話に耳を傾けた。
――
ブチッ…ズルッ…ズルッ…
時間は巻き戻り、処刑を司る闇と残忍を司る闇が俺の首を切り落とした時のことだった。2人は俺の体を引きずって影を司る闇の中へと運んでいく。
しかし首を切り落とされた俺の方にもちゃんと体の感覚は残っており、グローズ=ハンゾェとペロロームがアーピリルト・シャビィの中へ入っていってるのが分かる。だが頭の方はと言うとせいぜい瞬きや歯にこびり付いた肉片を舌で舐め取ることぐらいだった。そんな俺を置いて他の娘達は同じようにアーピリルト・シャビィの中へと行ってしまう。
「お、おい! お前らっ! ちょっと待てっ! 俺をほっとくのかよ! つか何も言わずに体持ってくなっ! おいっ!」
そんな娘達を俺は呼び止めて何をする気かと説明を求める。すると許可を司る闇が俺の側に近寄ってペコリと頭を下げた。
「ご主人様、わだち達にご主人様の体をいじらせる許可をくだちぃな。というよりぃ、ご主人様の体はまだ完全に究極にはなってにぃーの」
「どういうことだ? 許可を司る闇」
俺は許可を司る闇に尋ねると、たまたま近くにいた内臓を司る闇がズルズルヌメヌメと這いずってこちらに近寄って来た。ソビェバットは俺が初めて見た目をいじった闇でその体に蝸牛みたいな殻をくっ付けてやったのだ。
そうでもしないと裂けた腹から内臓かビヂャビヂャと溢れ落ちてしまう大変な娘なのだ。しかも体から粘液みたいなものを絶えず出しているから服を着せるわけにもいかない。そういうわけでソビェバットには蝸牛みたいな殻を上げて中身が落ちないようにしているわけだ。
「ごぉおおお主ぅぅうぅ人ぃぃぃんさぁぁああまぁあああ、なぁあああにぃいいいいかぁああ、よぉおおおでぇぇええすぅうぅかぁあああ?」
おかげで超スローモーに話すようになってしまったが。俺は内臓を司る闇に何が起きているのか尋ねると、
「すぉおおおおりぇえええわぁああああ、ごぉおお主ぅうう人ぃぃぃんさぁあああまぁあああんのぉおおおおかぁあああらぁあああだぁぁああはぁぁあ、まぁぁぁあだぁあああみぃいいいかぁぁああんんせぇぇえなぁあああんんんでぇえええすぅうううよぉおおお」
なるほど、俺の体はまだ未完成…ってどういうこった。俺は『究極の闇』とやらに完全に目覚めたわけじゃなかったのか? と俺は無い首を傾げていると、
「あーん、わだち、わだちが話すのぉ」
と許可を司る闇はゴネてグィグイと内臓を司る闇の体を揺すった。
「んんんんん? いぃぃぃぃよぉぉぉおお」
内臓を司る闇はゆらゆらと揺れながらいいよと言うと、もぞもぞと体を捻じ曲げてゆっくり自分の殻の中へと戻って行く。本当に蝸牛みたいになっちゃったなぁと思いつつ俺は許可を司る闇の方を振り返る。
「それじゃ、わだちが説明すりゅね。ご主人様の体はまだ完全に『究極の闇』に馴染んで無いんだよっ、だからああやって自分の闇の中に浸して完全なものにするだぞっ」
「ふぅん、てことは俺の頭も同じみたいにしなくていいのか?」
「その必要ゥは無いんだね。『究極の闇』の力は主に髪の毛っ、そこに力が集中してるから頭はもう完全なものなんだよぅ」
許可を司る闇が言うに、『究極の闇』と呼ばれる力は主に髪の毛にあるという。つまりそれに近い頭の部分はもう究極の闇になっているということか。
「なるほど、つまりあの体が出来上がったら俺は完全にその力を使えるようになるのか」
「そゆこと、じゃあわだちはもう行くね。結構大掛かりな作業になるらしいからにぇ」
そう言うと許可を司る闇はテトテトと駆けて行ってしまった、俺を置いて。
「おっ、おいっ! どこ行くんだ! 帰って来ーい!」
しかし声は届かず許可を司る闇はもういなくなってしまった。いつの間にか内臓を司る闇も消えてるし。
「はぁ…まぁでもあの体が完成したら俺は無敵になるんだし、いっか…」
そうして俺は『究極の闇』を手に入れた自分を想像しながら待つことに決めたのだ。
――
「…ってなわけだ。どうだ、ビビったか」
「ふ、ふぅん」
央力の力を手に入れた経緯もとい自慢話は終わり、当人はふんっとさらにドヤ顔を浮かべる。新しい力に目覚めたにしても随分妙なものを手に入れたようだ。それに央力が娘達と呼ぶ存在も気になるし、ソイツらの力がどれくらいかも分からない。俺は隣にいるロボに目配せしながら対応を互いに考えた。
(どうする…ロボ)
(どうするもこうするも…央力の言う力がどんくらい凄いのかも分からないんだ。しかも自分のことを不死身不老不死とまで言ってんだぜ)
(だよなぁ、ぶちのめすなら今か?)
(だな。叩くなら今だ)
俺達は互いにコクッと頷き、スックと立ち上がる。そしてグッと拳を固めて力を入れ、首だけになった央力を殴る準備を進める。
「おうおうなんだ? 今の俺は不死身だぜ?」
「死んでるやつが不死身だと? 面白いこと言うじゃねぇか」
「じゃあ俺達でその不死身を試してみるか」
「へぇ、やってみなよ。不死身になった俺にお前ら程度の力が通じるとは思えないけどな」
まずは俺から央力に向かって拳を振るい、
バガッ!!
と思い切り殴り飛ばす。
「らぁっ!!」
「ゴバァッ!!」
すると央力の頭は勢いよく遥か彼方へと飛んで行く。その先を俺達は足早に追うと、央力は瓦礫の隙間に挟まって止まっていた。
「……ッガァアッ! いっっっっでぇええ!! 痛えじゃねぇかこの野郎っ!!」
央力はギロッとこちらを睨みながらそう叫ぶ。殴った箇所は青紫色になっているものの、少しずつ色は元に戻っているようだ。たしかにこの光景を見るに央力は不死身になったと言えそうだが、それだけだ。全然強くなってない。むしろ弱体化までしているとさえ思えて来てしまう。
「ぐっ…くっそぉ、全然強くなってないっ!」
「じゃあ今度は俺かな、俺にも不死身の力を体験させてもらおうか」
ロボはニヤッと悪い顔をしながらバキバキと指を鳴らして央力に近づく。そしていざロボの拳が振り下ろされた瞬間、
「んんんぐぅっ!!? ……っ!! ……っ!!」
突然央力は脂汗を吹き出しながら悶絶し始めた。
次回の投稿もお楽しみに




