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後

私は、ある日、庭で虫に驚いて転んでしまったわ。その時に、気を失い、前世と呼ばれる記憶が蘇ったの。40歳近い年齢まで過ごした女性の記憶。


起きたら、転んでから5日が経っていたわ。


私は、アリーナの記憶と前世の記憶、両方あるけれど、性格は前世の方が強く出てしまったの。アリーナの記憶によると気に入らないことがあると物を投げることは当たり前、食べ物の好き嫌いも激しく、使用人もそんな彼女の我儘に耐えられなく何人も世話をする人が変わっていた。兄との関係もあまり良くなかった。


前世の私が、その有様に耐えられなかった。社会人として働いていた記憶。だから、起きてから使用人にお礼を言って驚かれて、兄にも今までのことを謝った。


使用人とは少しずつ関係は改善していっているような気はする。でも、家族の方は……。兄からは胡散臭い人間を見る目で見られる。母は、いつも泣きそうな顔で私と会話をしてくれる。父は、まだよくわからない。


そんな関係が続くこと7年。私は、18歳になり、数年前に出来た婚約者の元に嫁ぐこととなる。私は、あの出来事から一年後に王宮に居が移された。父曰く、私の前世の知識を狙う者が出てくるかもしれなく危ないからだと。なぜ父にバレたのかは、そういう人が数百年前にいたそうだ。いきなり人格が変わってしまったからもしかしてと思ったそうだ。


王宮に居を移す時、母が泣きながら「どうして」と。兄は、その頃は、結婚していて領地にいた。奥さんが妊娠中ということもあり、その場にはいなかった。いや、兄とは、会話という会話をしていなかったからそれがなくても来なかったかもしれない。父は、「しっかり勉強してくるんだよ」と。


王宮で一人になると。


私だって好きでこんなことになってるわけではないのに。

どうして、お父様、お母様、我が家だって王弟殿下の屋敷であり公爵家でもあるから警備が厳重なのだから私は王宮に来なくても良かったのではないの。


両親を恋しく思う気持ちと今の状況への不満の両方を考えていた。


王宮の生活は、可もなく不可もなくだった。家族と離れて暮らすのは悲しかった。一緒に暮らしていたら、前みたいな関係に戻れたかも、と思ってしまう。


しばらくして、王妃様から婚約者となる令息を紹介された。騎士団長である侯爵様の子供らしい。父である騎士団長を尊敬していて将来は父と同じような立派な騎士になるのが目標ですと明るい笑顔でいった。とても明るい少年だった。


そして、私の説明は、王妃様がしてくれたようだけれど、どう説明したのかしらね。俺が守りますから大丈夫です、と宣言された。


王妃様が、娘がいないから是非お茶会しましょうと誘ってくれた。一ヶ月に一回とかだけれどお茶会で王妃様とお話ししている。従姉妹である王子二人は、兄より年上であまり交流がなかったので当たり障りのない会話をしている。二人とも結婚しており子供もいる。

父は、王城で仕事をしているようなので、たまに様子見として問題ないかの確認をされている。母は、年に一回ぐらいしか会っていない。





「お父様、お母様、今までありがとうございました」


7年の間に、私達家族の関係は余所余所しい間柄になっていた。王宮にきた初めの頃は週に一度は家族のところに帰っていたけれど、家族の態度を見て徐々に回数を減らしていった。最近では、夜会で顔を合わせるぐらいだった。その代わりに、婚約者の家族が私に親切にしてくれた。頻度高く通ってもいた。


「ごめんなさい、あなたの変化を受け入れられなかったせいでごめんなさい」


母は、泣きながら謝っていた。


私は、それになんて返せば正解なのだろう。


(私が変わってしまったからいけなかった)

でも、それは私のせいではない。私だってあのままの私で居たかった。


(リジル様とそのご家族が優しくしてくれたから大丈夫)

これは、言っては流石にダメだよね。両親のことを非難している風に聞こえる。


沈黙しているしか出来ない。


「私達は、お前に何もしてやれなかった。だから、これからも私達はアリーから接触がない限りは遠くから見守ることにする。リジル様と幸せに」


「…………はい」


そして、その言葉通りに、夜会で挨拶をするぐらいでしか交流はなかった。子供が産まれても、私は会いたい気持ちが出てこず手紙でのやり取りのみだった。


そして、子供達三人が大きくなった時に、夫に、当時のことを聞いてみた。


「え、リーナのことは、元々知っていたけど、あの時は、何も聞いていない。俺に婚約者ができて大事にしろとしか言われてない。リーナが泣きそうな顔をしていたから俺が守らなきゃって思って」


「そう、私、あなたと結婚できて幸せよ。ありがとう」

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