037 (閑話)光の魂
見送る道化者の周りに光球がクルクルと漂い始めた。
「おやおや、覗き見とは良い趣向ではありませんね」
リト達を見送った方向を眺めながらの道化者が口を開く。
その言葉に、光球が発する。
「何を仰いますか。ここへ呼んだのは貴方様ではありませんか。相変わらず口が悪い」
「これはこれは、彼らとの会話を愉しんだ口調が残ってしまい失礼しました。なにせ言い交わす度に移りゆく仕草が小気味よくて、つい興がってしまいました」
「本当にお変わりありませんね貴方様は。活殺自在と申しますか、無碍と申しますか」
「自由で気儘と軽口で構いませんよ。それで彼らは如何でしょうか」
「彼の者達は貴方様が選んだのです。頼みを訴えた此の方がどうして異を唱えられましょう」
「頼まれたからこそ人となりを見定めて頂こうと思ったのですが、宜しいのでしょうか」
「此の方では手が出せぬ故、貴方様に信頼をもって一存させて頂いておりますゆね、全てをお任せ致します。ただ・・・」
クルクルと回っていた光球は、道化者の正面で止まった。
「・・・流石に子供を投げ飛ばすのはやり過ぎではありませんかな?」
「必要な演出と考えての事ですが、お気に召しませんでしたか」
「暴力の様な事を正当されるのは如何なモノかと存じます。此の方としましては慮る至大で御座います。別に方法は御座いませんでしょうか。例えば召し物を泥で汚すだけで良かったのではないでしょうか?」
「最初はその通りにしましたが、まぁ失敗しましてね。知っているでしょう」
道化者は、ヤレヤレといった仕草しながらそっぽを向いた。
「いいえ存じ上げておりませんが、そのような経緯が御座いましたか」
「おや、貴方は違う使いでしたか。彼はどうも必死さが足りないと感じておりました」
「そうでしょうか?相当、労苦に耐えていた様に思いますが」
「苦労を重ねたというのでは無くてですね、育った環境に馴染んでしまったと云った方が良いですか?治安や安全は当然の事、与えられるのも当然の事、そういう甘さを払拭する為にも威喝を入れる必要を感じたのです」
「申し訳ありませんが理解しかねます。ですが、今後の為に必要な処置とだったとしても、いきなり投げ飛ばすのはあんまりでは御座いませんか?せめて事前に説明してからでないと、虐待と罵られても致し方無いと思われます故」
「・・・虐待、ですか? 2回目は足の甲で力強く持ち上げたりしましたが・・・まあその時は悪魔の所業とでもお伝え下さい。ただ、たしかにその通りかもしれませんね。次回がありましたら注意するとしましょう」
リト達が城門横の守衛所に辿り着いたのを確認し
「どうやら無事に辿り着いた様です。わたくしの役目は一先ず終わりましたので去ると致しましょう。それでは機会がありましたら『此処』では無い『何処か』で」
そう言い残して、道化者は消えていった。
光球もまた、天高く上り去って行った。




