035 三度目の正直
・・・この世界で2度死んだ・・・。
そして今が3回目だとういうが、記憶が無いので全くもって実感が無い。
「おや?以外に冷静なのですね。てっきり「ふざけるな~!そういうことはもっとはやくいえ~!」とか荒立てるかと思いましたが」
私が言うと思った台詞を変な韻を踏んで語る。道化者の性格というか今までの事を思えば、単にからかっているだけだろう。流石に慣れてきた。
ソレよりも3回目というのが気になっているので、からかい口調の相手をしている場合では無いというのも有るのだが。
「冷静だって?そう見えるのかい。十分に驚愕仰天しているさ。ただ、驚きすぎて反応の仕方が分からないだけさ。それよりも・・・」
「それよりも?・・・もしかして、亡くなった原因を知りたい・・・とでも考えてますか」
「まさか?そんな訳ないだろ!」
そう言って簡単に手を振って否定した。
・・・おろそうとした振った手を見てから少し考える。
「いいや、違うな。・・・考えていない訳では無いけど、知りたく無いのが本音かもな。コレって余命宣告みたいなものだろ。死期が近づく恐怖が日毎に積って押しつぶされる不安に怯えながら生きる位なら、その日その時を精一杯生きてみるさ!」
「意外と神妙な心がけですね。殆どの人は何時まで生きられるのかを恐怖を感じながらも知りたがるモノなのですが」
「知りたくない、と言えば嘘になるが、癌と高僧の話しを思い出したから聞かない事にしているだけだ」
「つまり、知りたい、のですね。どうぞ聞いて下さい。隠し事や誤魔化したりしないで、キッパリと、ハッキリとお話ししようではありませんか」
道化者が意気揚々に話す準備をしている様だった。怖がらせて怯える姿を見たいという感じだ。
この仕草だけで、碌な死に方をしなかったのだろうというのは十分に予想できた。尚更聞きたく無いわ!!って心の中で叫んだ。
「それよりも・・・それよりも?・・・そ、そうだ。ふと、聞きたい事が思い浮かんだんだけど忘れてしまった。というか、イメージはあるんだが言葉にしようとすると形にならないんだ。少し考えさせてくれ」
「どの様に亡くなったかをお話ししたかったのですが残念です。まぁ気が向いたら聞いて下さい。それでは、ごゆっくり考えて下さいな。答えられる事なら何でもお話ししましょう」
・・・答えられる事なら・・・答えられる事なら何でも?・・・答えられない事があるとも受け取れる。答えられない事、直ぐに思いつくのは理の制限しかないし、少し前にも「答えられない」と言われた。
そうだ理の制限は死んだ回数に影響されるとか言われたな。死んだ回数・・・
「なぁ。ここで、この世界で3回やり直してるって事は、その分、理を知る権利が増えるよな。増えているならもう一度質問するが、私が集めなければならない魂っていったい何だ?」
「残念ならが、権利は増えていませんよ。これは『2つ目』でお話しをした続きになりますが、転生・転移した、あるいは生まれ変わった回数になりますので、この度の様に、『亡くなった所からやり直し』とか『亡くなる前に戻ってやり直し』という場合はカウントされないのです」
「・・・て言う事は何か?え~と・・・ゲームで言う所の、死んで直ぐに復活する『ゾンビアタック』とか『セーブポイントからリスタート』っていうのは駄目で、何度もオープニングから始める必要があるって事か?」
「わたくしはゲームの事は疎いので、どの様に納得されたのかは解りませんが、理解できたと受けとらせて頂きましょうか」
どうでもいい記憶だけども、昔のPCゲームで、ロマンという名のアクションRPGとか、クリアーするのにスタートから2~3時間かかるのにセーブ出来ないのがあった。クリアーする為には何周も失敗を重ね謎解きを繰り返すとか無茶としか思えない。今、そんなゲームのプレーヤーになった気がしていた。
「一応聞いておきたいけど、2度有る事は3度あるって言う様に、今回も同じく失敗したらどうするつもりだい?履行不能と見限りつけて契約終了にするのかい?」
「3度目の正直と言う様に、この度は期待しております。それに、わたくしは契約した者に対して大きな愛情を抱いております。この愛情は、例えばですが・・・」
道化者は一旦考え込んで、そして続ける。
「ペットへ贈る愛情よりも壮大だと自負しております。ええ、大事に大切に、愛おしく見放さず、常に心を向けましょう。飼育放棄、いいえ契約破棄など以ての外です。ですからどうぞ憂いなくお過ごし下さいませ」
ほほう、人を動物扱いとは流石に皮肉が効いている。と頬を引きつらせてしまった。
丁寧な言葉で愛情を注ぐとか言われても、これでは押し売りであり強制じゃないか。ここまでくれば嫌味を通り超えて脅迫に近い凄みがある。
「そういえばあの空間、メフィストの空間からずっとこの子供の姿で、そのままこの世界に現れたから違和感を感じなかったけど、何故子供という中途半端な年齢からスタートなんだ?生まれ変わりというか誕生からのスタートなら、もっと理を得られて有利に事が進められたんじゃないか?」
「そうですねぇ。前の世界でもそうでしたが、リトは生まれ変わりだと、それまでのやり取りをすっかり忘れてしまうのです。ガッツリと記憶を叩き込んだのに全然思い出さないのですから困った者でした。つまり生まれ変わりからのスタートは、逆に効率が悪かったのです」
どうも遠回しに『役立たず』って言われている気がしなくもないので、気分が悪くなる。
「どうしました、不機嫌な表情をして。もしかして、忘れっぽい、と言われて気にしているのですか。大丈夫ですよ。前世の記憶を持って生まれた人達だって、大人になれば『覚えていた事』でさえ忘れてしまうのです。普通の事ですよ」
言い訳じみて道化者は続けて話した。
前世の記憶を持つ子供、というドキュメンタリーなテレビ番組は結構あったし、その番組でも年と共に記憶が薄れるって言っていたから腑に落ちる話しだ。だけど・・・、
「なぁ、人生の途中で前世の記憶が蘇るっていうのは無いのか?」
という疑問が湧き上がる。
「そういう人も居ますけど、たいていは夢を見たと思って忘れてしまうのでしょう。それに、仮にそれが本当だとしても誰も口にはしないと思います。「私は○○の生まれ変わりだ」って言われたら近寄り難いではありませんか」
まったくその通りだと思った。
私が生まれた頃は、モヒカンがバイクに乗ってヒャッハーしている世紀末で、人類滅亡だとか騒いでいる時代だった。まぁ食べ物を奪い合いする世界で、どうしてバイクやバギーを走らせる燃料が簡単に手に入れられたのかを不思議に考えたのは・・・今更どうでもいいか。
そんな世情からか、○○の生まれ変わりと言って人心掌握しようとした輩が沢山出てきた、気がする。
もっとも、未来からキター、とか、いろんな人類滅亡説が流れているから、この手のネタは既にお腹いっぱいなんだ。




