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白龍は語らない

魔女の館を守る白龍がいる

白龍はフレイシャが建国されるより前から生きている

彼は気高き龍である

生まれ落ちたその時から絶対者である

他の生命は彼に抗うことは出来ない

白龍は自分より強い存在がいないことに退屈を感じる

名声のために彼を狩りに来た勇者

力はあるが器が力に振り回されていて話にならない

軍の増強のために彼を勧誘に来た魔王

白龍との力量差も図れる愚か者の言葉に耳を貸すものか

白龍は火山(寝床)で丸くなる

龍の住処には金銀財宝が眠っていると勇者はのたまっていたが白龍に金銀財宝など必要ない

寝床と食料以上に必要なものなどありはしない

懲りず住処を荒らしにくる人間を踏み潰し、代変わりする度、白龍を傘下にせんと寄ってくる魔王をあしらい適当に生きていた

怠け者の白龍はいつしか伝説の悪龍と語られるようになった


けれど、白龍は生に分岐点が訪れる

魔女が住処に現れた

魔女曰く、伝説の悪龍に興味があっただとか

いつものことだ

適当に追い払おうと吐息を一つ吐いてみる

白龍の吐息は村一つ焼き払う業火

ただの人間にはなす術もない

けれど、魔女は微動だせず吐息を紙の吹雪に変えて見せた

奇な術を使うと彼は驚いた

しかし、吐息を防がれる程度よくあることだ

白龍は爪を振るう

彼の爪は堅牢な城壁も易々と裂いた

魔王も勇者もこれを防ぐ術を待たなかった

けれど、魔女は欠伸を一つ

吐息から出来た紙の吹雪は白龍の爪を進ませない

そんな馬鹿なと白龍は驚愕した

これまで白龍は爪を止められたことがない

白龍は戦いなど行ったことはない

吐息一つ

爪を一度振るう

それだけで万事うまくいっていたのだから

白龍は困った


「これで終わり?伝説の悪龍ってつまらないものね」


いきなり襲われたにも関わらず、魔女は白龍から興味が失せたようで踵を返す

白龍は初めてプライドを傷付けられた

傷付けられて初めてプライドを持っていたことに気付いた

なるほど、今まで自分の前に立った者はこれを感じていたのだなと納得した

魔女は白龍にこれ以上関わることはない

自分もそうだったから

それは絶対で、平和で、退屈な生活の保障だ

魔女をこのまま見送れば何も変化は起こらない

別にいいことなのでは?

いやいや、暇すぎて死にそうなのだ

だから魔女に懇願しようした

けれど、白龍は言葉を持たない

必要がないから

唸り声を上げた

困った困ったと

そして魔女は振り返った


「伝説の悪竜って言葉を話せないの?おかしいったらないわ」


若き魔女は白龍の意図を察知できた

彼女は生まれながらの天才だ

並び立つ者などいやしない

魔王から聞いた伝説の悪竜なら或いはと思っていたが期待外れもいいところだ

けれど、けれど、この悪竜は自分と通ずるものがある

魔女は少し考えて白龍に告げる


「そうだ。貴方、ペットになりなさいな」


その日、白龍は主を得た

魔女に付いて世界を回る度は心が躍った

魔女や白龍に並び立つ猛者はいなかったが、勝負は力だけではないと知ることが出来た

楽しいという感情を得ることが出来た

白龍は魔女のペットになって大いに満足している

魔女が《本の魔女》と呼ばれるようになり、自分は夜肩を守る番犬ならぬ番龍になった

もっとも、魔女の張った結界を抜けられる人間などいはしない

いや、一人いた気がする

すぐ逃げたが大したものだ

人間捨てもんじゃない

ようやく館から外に出た魔女は何故か口調が変わっていた

まぁ、気分でよく変わるものだと気にしなかった

幾星霜、は言い過ぎだが、昔の魔女を知るのはいつしか白龍だけとなった

それだけの年月、魔女は本を読んでいた

古き友は魔女と白龍を残して皆逝ってしまった

魔女は一人ぼっちだ

白龍はペットだし、未だ言葉を話さないから除外された

酷いや

白龍は主を見て悟った

魔女も長くないと

なんかよくわからないが魔女は老いない死なない

けれど、魂がボロボロになっているのが分かる

魔女はそう遠くないうちに消えてしまうのだろう

白龍は何も語らない

魔女も自分の体がどんな状態か理解しているはずだ


理解して娘を作ったというのだから驚いた

弱い弱い娘だ

けれど、魔女に似ている

魔女がいなくなれば娘に仕えてやるのも悪くない

白龍はまだまだ長生きする


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