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第一話 サンタに部屋を壊されました~原因は僕のビーフシチュー~

はじめまして、アニベルと申します。本作が初めての投稿となります。サンタに部屋を壊された主人公が、ビーフシチューをきっかけにどんな異世界ライフを繰り広げるのか、楽しんでいただければ幸いです!



 街にはクリスマスソングが流れ、ツリーやイルミネーションが煌めく。


 空高く9頭立てのソリが走る。「♪シャンシャンシャン」

 地上から立ち上る、暴力的なまでに美味しそうな匂い~~~。

 先頭のトナカイの赤い鼻が「ヒクヒクヒク」と小刻みに震える。

 次の瞬間、ソリは急激に舵を切った。


「どこへ行くのじゃ!? 待つのじゃっ!!」


 サンタの制止も虚しく、ソリは匂いの元へと急降下を開始した。


 ◇◇◇ 


 ――アパートの1室。小柄な男性がエプロン姿でキッチンに立っている。


「ふんふんふんふんふん♪ よし! もう少し煮込めば完成だ」


 ビーフシチューの鍋が「クツクツ」と音をたてている。

 今夜のメインは、奮発した和牛の『ビーフシチュー』だ。

 少し開けた窓からは美味しそうな匂いが雲の上まで漂っていた。


 シャンパンを片手にベランダに出ると、「♪シャンシャンシャン」次第に大きくなる鈴の音が聞こえた。

 視線を向けると目の前に突然サンタのソリが現れたっ!!


「「「「うわぁぁぁぁぁっっ」」」」「「「「キャァァァァァ」」」」


 ――――ドガシャアアアアン!!

 「ピカッ」と物凄い光とともに意識が遠のいた――。


 ◇◇◇◇◇ 


 再び目を開けると、そこもまた眩しくキラキラした世界だった……。


「ホーホーホー。気が付いたかの」

(……サンタクロース?)

「儂の名は『マナ・レクス 』。この世界の創造神じゃ。此度は迷惑を掛けたのぉ」

「ここはどこですか? 僕は死んだのでしょうか?」

「ここは天界、神々の住む世界じゃ。儂のソリがお主目掛けて暴走しての」

「やはり僕は死んだのですか……」

「先の世界ではそうなっておるな。じゃが流石にそれでは申し訳がないじゃろ? そこで慌てて転移した先がこの世界と言う訳じゃ」

(異世界ってことか? 転生は……してないな。僕のままだ)


「此度の事故は儂の責任じゃ。まだあやつに先頭を任せるのは早かった様じゃ。勘弁してくれるかの?」

「はい」と言うしかないですよね……。


 創造神『マナ・レクス 』様が言うには、先頭のトナカイの『ルドルフ』は今年が初めてのソリ引きで、下界から漂う美味しそうな匂いについ引き寄せられてしまった。


(……僕のビーフシチューが原因か。食いしん坊なんだな)


 サンタとトナカイは仮初の姿で、トナカイ達は創造神『マナ・レクス 』様に遣える神獣様らしい。

 僕の部屋は隕石が落下して木っ端微塵になったと処理をし、部屋にあったこの世界でも使えそうな物はアイテムボックスに保管されていて、アイテムボックスは念じれば使えるらしい。


「魔法も少しばかり使える様にしたぞい。後は色々と試してみるがよい」


 ――現実が受け入れられず説明も上の空。

 我に返って一番に思ったのは時間を掛けて作ったこん身のビーフシチューだ。

 次の瞬間、目の前に画面が広がり【ビーフシチュー】の文字が現れたっ!!


「ホーホー。アイテムボックスじゃよ。触れてみるがよい」


 恐る恐る空中の画面にタッチ。

 次に現れたのは【○人分】と【全部】の文字。


(分量が選べるのか。なるほど便利だ)


 タッチしようとしてフト思う。


「そうだ。マナ・レクス様も一緒に食べますか?」

「ホーホーホー。悪いのぉ。せっかくじゃ遠慮なく馳走になるぞよ。器もアイテムボックスにあるぞい」


 画面に現れた【食器】をポチ。

 アッチの世界で使っていた食器が画面に並ぶ。


「これはホントに便利ですね……」


 少し多めに用意していたクリスマスディナー。【2人分】を用意しようとしたら何やら熱い視線を感じて振り向くと、トナカイ達が涎を垂らしてガン見していた。


「っ? トナカイって草食ですよね?」

「仮初の姿じゃしの。ここ(天界)では空腹は感じないが食すことは出来るぞ。皆、美味いモノには目がないでの。下界では好きに食うておるしの。儂もじゃがの」

(なるほどね。それはともかく下界に何しに行くんだろう?)


 疑問に思いつつも【全部】をポチるとポンッと目の前に見覚えのある鍋が飛び出した。ご丁寧に鍋敷きも一緒だ。


(煮込んでる途中だったからフタは外してあったけどしてあるな)


 そんなことを冷静に思いながら、いつの間にか現れた純白のテーブルの上にポンポンと料理を出していく。

 ビーフシチュー・チーズフォンデュ・フライドチキン・サラダ。バゲットをカットしたら今年のクリスマスディナーの完成だ。


 ちなみにシャンパングラスは握りしめたままこの世界に飛ばされていた。

 マナ・レクス様用のシャンパングラスも忘れずポン。


「後、ケーキもありますので」

「「「「うほっ」」」」


 しかし元はおひとり様用のディナーだ。多めと言ってもどう見ても少ない。


「何か追加で用意しますね」


 アイテムボックスの【冷蔵庫】を腕組みして見つめる。


(チーズの盛り合わせは出せるな。確かハンバーグが冷凍してあったはず)


 【冷凍庫】の『ハンバーグ』を選ぶと次に【レンジ】が現れた。

 ……驚きを通り越してもはや呆れる。


 【レンジ】で『冷凍ハンバーグ』をチンしてビーフシチューの鍋へポン。

 【カセットコンロ】を取り出して鍋を火にかける。


(チーズフォンデュも一口分にしかならないか……)


「マナ・レクス様、この【ホットプレート】は電源だけ残してこちら側で使えますか?」

「どうじゃろな? やってみるが良い。ホーホー」と言いながら指先をくるくるさせた。


 アイテムボックスから【ホットプレート】を取り出す。コードの先だけアイテムボックスの中に繋がっている。


(まぁ何でもありってことか)


~【ホットプレート】で作る簡単ラクレット風~

■材料(2人分)

・ピザ用チーズ:150g〜200g

・牛乳:大さじ1

・じゃがいも: 2個

・ウィンナー: 4〜6本

・ブロッコリー: 1/2株

・ミニトマト: 4〜6個

・粗挽き黒こしょう、クミン、パプリカパウダー、はちみつ:お好みで

■下準備

1.じゃがいもは洗って一口大に切り、600wのレンジで4~5分加熱。

2.ブロッコリーはよく洗って子房に分け、600wのレンジで3分加熱。

3.ウインナーは半分に切り、トマトは洗ってヘタを外す。

4.チーズと牛乳は混ぜておく。

■作り方

1.ホットプレートを中温(160~180℃)に熱し、油を薄く引いて具材を並べる。

2.空いたスペースに、チーズを広げる。

3.チーズがふつふつしてきたら、具材にたっぷりと絡めて完成!

※ チーズはすぐに焦げるので溶け始めたら低温(保温~弱火)に!


 【ホットプレート】が使えるならと【冷凍庫】から以前に作って冷凍してたパンを取り出し、一口大に切ったら【ホットプレート】の端に置く。



 そうして出来上がった今年のクリスマスディナーは、ビーフシチュー・煮込みハンバーグ・チーズフォンデュ・ラクレット風・フライドチキン・サラダ・チーズの盛り合わせと食後のケーキだ。


 チーズフォンデュの具材はラクレットと一緒だけどラクレットには粗挽き黒こしょう、クミン、パプリカパウダー、はちみつを添える。

 それにバゲットと色んなパンの盛り合わせとシャンパンになった。


 どれも一口ずつしか無いが、それでもみんな美味しそうに食べてくれて僕としては嬉しいことこの上ない。しかも本物サンタ(神様だけど)とトナカイ(神獣だけど)とのクリスマスなんて最高じゃないか♪


 追加で缶ビールとハイボール缶を空けても飲み足らない一部のトナカイにワインを渡したりで、お酒も入って和気あいあいと話しも弾みこの世界のこともある程度分かった。


 天界では空腹感も感じず過ごせるが下界に下りれば神獣と言えども腹は減る。

 下界の神々と会合がある時にはマナ・レクス様も下界へと赴く。

 その時に食事が振舞われるがこの世界の食事情はあまり良くなく、固い黒パンが主食で香辛料こそ使われているが誉め言葉にも調和の取れた味ではないとのこと。


「こんなに旨い食事は初めてじゃ。ありがとうの……ズズッ」

(え? マナ・レクス様、泣いてます?)


 ◇◇◇ 


 ――クリスマスパーティも終盤、酔いつぶれたトナカイ神獣も数頭。

 大人数での食事は楽しいがいつまでもここに居る訳にもいかないな……。


「そろそろ行きますね」


 すると『マナ・レクス 』様からキラキラと輝く【金色のカード】を差し出された。


「これは儂とお主を結ぶ、言うなれば【通信機】じゃ。【身分証】にもなるからの。必要になる時が来るじゃろうて持ってゆくがよい」

「あ、ありがとうございます」

「この世界でのお主の名は『アンセル』と記録しておいたでの」

「あ、、ありがとうございます」

「じゃが、1人でこの世界を生きるにはちと厳しいじゃろうの。……『ダッシャー』を連れて行くがよい」

「――え?」


 「ずるい」「俺も」「私も」「僕も行きたい」他のトナカイ神獣たちから文句が出る。

 みんな下界に行きたい様だけど大人数だと目立つからね。

 まぁもう大型トナカイの『ダッシャー』と一緒ってことで目立っちゃうだろうけど……。


 『ダッシャー』と2人で創造神『マナ・レクス』様の前に立つ。


「色々とありがとうございました」

「ホーホーホー。お主の部屋を壊したのに礼を言われるとはの。またの」


 ◇◇◇ 


 浮遊感と光に包まれて数秒後、下りたった場所は……。

 チチチチチ……ピピピピピ……。

 小鳥のさえずりが聞こえ爽やかな風が吹くどこまでも清爽な森の中だった。


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