第69話 お手伝い
「よー、優希。なんかげっそりした?」
「……いや、大丈夫。気にしないで」
「そうか? まあ大丈夫ならいいけど」
教室に入るなり、石崎にそう聞かれる。朝に鏡を見たときも思ったが、徹夜と疲労感のせいで大分やつれているように感じた。
周りから見てもそう見えるならやっぱりそうなのだろう。
俺は石崎と瀬川には伝えるべきだと思い、姉ちゃんと莉子と那月と付き合ったことを話すことにする。
「……そういえば、俺姉ちゃんと莉子と那月と付き合うことになった」
「へぇー、そうなったのか」
「いいんじゃない? 楽しそうだし」
思ったより薄い反応に、俺は少し違和感を覚える。
「お前ら反応薄いな」
「そりゃあ、知ってたからな」
「は? 何を?」
「優希、これ見て」
瀬川に差し出されたスマホの画面を見て、俺は驚きと同時に恥ずかしさを感じる。
スマホの画面には、姉ちゃんから瀬川へと送られた、俺たち四人が同じベッドにぎゅうぎゅう詰めになって寝ている写真と、付き合ったという報告があった。
どうやら、疲れ切って動けないでいるときに撮られたらしい。変なものが写ってなかったから良かったものの、恥ずかしいのでやめてほしい。
「今日の朝に送られてきたの。初めは驚いたけど、納得する部分もあったから、今はもう受け入れてるよ」
「別に、いろんな形があると思うからな。俺はそういうのもいいと思うぜ」
「でも写真付きで送る必要はないだろ、写真付きで」
「嬉しかったんじゃない? ほら、めっちゃ笑顔だし」
そう言って瀬川が指さした部分を見る。確かに、自撮りをしている姉ちゃんは満面の笑みを浮かべていた。
そんなに嬉しかったのかと俺も嬉しくなる一方、やりすぎだとも思う自分がいた。
朝のHRまでの貴重な時間を睡眠にあてるために、俺は机にうつ伏せになり、寝る姿勢に入る。すると、何故か石崎に止められる。
「なんだよ、写真見たなら分かるだろ? 寝かせてくれ……」
「いやその、ちょっと聞きたいことというか頼みたいことがあるから、休み時間に時間取れない?」
「ん、分かった。じゃあ、続きはまた後で」
石崎がチラチラと瀬川を見ながら話すものだから、何かあったんだろうかと思い、とりあえず話を聞くことにして、俺は眠りについた。
☆
何とか一限目を乗り切り、寝たいのを我慢して石崎を連れて教室を出る。できるだけ人が少ないところを選び、石崎と話をする。
「それで? どうしたんだ」
「実はその、優希からアドバイスをもらいたいんだ」
「アドバイス?」
「その、告白の」
告白? 誰に告白するつもりなのか。瀬川とはまだ付き合っていないとでもいうのだろうか。
夏休みに見てしまったことは、どうやったって嘘にはならないし、あそこまで行った男女が付き合っていないというのもおかしな話ではないだろうか。
夏休みに石崎の別荘の風呂で見たことを思い浮かべながら、俺は石崎に質問する。
「誰に告白するつもり?」
「それは瀬川に、だ」
「いや、もう付き合ってるんじゃないのか? 傍から見たら付き合っているようにしか見えないというか。夏休みに見たのも忘れたとは言わせないぞ」
俺の言葉に少し顔を赤らめながら、石崎が喋りだす。
「なんか、進展が無かったんだよ。確かに距離は近くなったような気がするけど、付き合ってたわけじゃないし。……あと、風呂のことに関しては盛大にブーメラン突き刺さってるっだろ」
「まぁ、気にしない気にしない。取り敢えず、瀬川が石崎のこと好きなのは確定だろ。なにをビビってるんだ?」
「いやだって、振られたらどうしようとか考えるだろ? それに色々考えてたらわけわかんなくなって」
石崎の中では脈がないとでも思っているのか、少し不安そうな様子でそう話す。割とオタク気質だった分、恋愛関係のことは少なかったのだろうか。それともただチキンなだけかもしれない。
どちらにせよ、手伝わないと進展が無さそうだったので、一応は手伝うことにする。
「分かったから、少し考えさせて」
「マジ? やっぱ持つべきものは友か!」
「お前なぁ……」
出来れば当人同士で終わらせてほしいいものだが、「早くくっつけ!」という思いの方が大きいため、俺は石崎に協力することにした。
次話、保護者? です。
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