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第20話 坂本先輩の謝罪

 土下座した坂本先輩を見て少し固まったあと、急いで坂本先輩を立ち上がらせ、そこら辺の椅子に座らせた。


 俺も同じように椅子に座った。



「あの、とりあえず理由を話してください。出来ることなら手伝いますから」


「ホントか! ありがとう!」


「とりあえず、理由」


「あぁ、ごめん」


「あの、俺は那月・・・、いや、中野さんのことが好きなんだ」



 那月って呼ぶのやめてって言われたの守ってる。やっぱり、悪い人には見えない。



「だけど、いつも他の人を前にすると上手く喋れないんだ」


「でも俺には普通に喋れてますよね」


「まぁ、そうなんだけどさ」


「それで、この前あんなクソみたいな告白してたんですか」


「え? ・・・聞かれてたのか」



 喋るの苦手って言ってもあんな風になるか? なかなか酷いな。



「聞いてたなら、ごめん。君をどうこうするって言ってたのは咄嗟に出た脅しみたいなものと言うか・・・、思ってもないことが出ちゃうんだ、いつも」


「それは、大変ですね・・・」



 あんな感じで他の人にも絡んでるとしたら相当大変だ。しかも本人が言いたくないことまで言ってるとなると尚更。


 だとすると・・・。



「もしかして、悪い噂も大体違うんですか?」


「まぁ、なんと言うか、脅したとかそういうのは俺のせいだ。他のやつは大体違うか、間が悪かったやつだと思う」


「そうですか。で、結局何をしろと?」


「あ、そうだな。俺が普通に喋れるようになる手伝いをして欲しいんだ。出来れば噂の方もだけど」



 まぁ、話の流れで何となくは分かってたけど。なんで俺と話せてるのかホント不思議だ。



「分かりました。とりあえず、そうですね・・・。迷惑かけた人に謝りに行きましょう」


「う・・・、ちゃんと喋れると思うか?」


「できる出来ないじゃなくてやるんですよ、先輩。とりあえず俺がついて行きます」



 この人1人で行かせるとまた面倒なことになりそうなので、ついて行くしかないだろう。


 俺に話している感じでできるといいんだけど。



「まぁ、直ぐにとは言いません。とりあえず練習しましょう、練習」


「練習、か。その相手の人に迷惑かけそうな気がするんだ。申し訳ないよ」



 なんかもう良い人じゃない? 人とちゃんと喋れるようになればホントに良い人だと思う。


 イケメンで他の人のことを思いやれる。いいなぁ、鳳くんとは全然違う。


 どっちかと言うと石崎と似たタイプと言えるだろう。



「大丈夫ですよ。なんなら那月に謝れる機会を作りましょうか」


「ホントか・・・、お前良い奴だな」


「先輩もちゃんとしてればモテそうですよ。ちゃんとしてれば」


「・・・やっぱ前言撤回」



 何故だ。正しいこと言っただけじゃないか。



「まぁいいです。適当に人呼んできますから、練習しましょう」


「ありがとう。ごめんな、こんな事に付き合わせちゃって」


「・・・そうですねぇ、なにか報酬が欲しいかも」


「は? ・・・お前なぁ、せっかくいい感じだったのに。でも確かにそうだよな・・・、出来ることならやるぞ」



 俺は去年のテストの問題をコピーして各教科3枚貰うことにした。


 何故かって? 石崎と瀬川を無理にでも引っ張り出すためだ。アイツらも補習は嫌だろうしな。・・・ついでに俺も貰ってるのは俺も心配だからだ。



「じゃあ、これで契約成立です。頑張りましょうね」


「あぁ、よろしくな」



 ☆☆☆



 次の日から、先輩の特訓が始まった。


 案の定、石崎と瀬川を釣ることが出来た。瀬川に関しては石崎といる機会を作ることも出来た。瀬川は石崎に着いてきた感が凄い。


 初めはビビってた2人だったが、俺が間に入りながら話すうちに、ある程度普通に話せるようになっていた。先輩も慣れてきたようである。この調子なら大丈夫そうだ。





 途中テストを挟んで、1週間が経った。たまに姉ちゃんも来たのだが、さすがに「氷の玉砕姫」には強い口は聞けなかったようだ。


 ガチガチに固まって、ものすごく畏まっていた。


 姉ちゃんは姉ちゃんで、那月への告白の時聞いていたため、中々冷たい雰囲気を纏っていた。


 那月の事を大切に思ってるんだな! (本当は優希に対する扱いの方が怒っていたのだが、俺はその事には気付かなかった)



 順調と言える訳ではなかったが、一応普通に話せるくらいにはなった。



「坂本先輩、そろそろ那月に謝ってみますか?」


「・・・分かった。やってみようと思う。これが終わったら、今まで迷惑掛けた人に謝りに行こうと思う。出来れば1人で。これ以上迷惑掛けたくないからな。残りの間、よろしく頼む」


「ええ、そうですね」



 先輩が随分積極的になってくれたようで、なんだかちょっと嬉しいぞ。




 次の日の放課後、俺と坂本先輩は例の教室で待っていた。


 那月を呼んだのである。


 坂本先輩は、なんだかとても怯えているように見える。きっと今までやってしまったことを、好きな人から色々言われるのが怖いのだろう。



「先輩、大丈夫ですよ。きっとちゃんと聞いてくれますから」


「あぁ、ありがとうな・・・」



 それでも先輩は震えていた。




 それから5分程して、那月がやってきた。


 ドアの外から声を掛けられた。



「優希、いる?」


「いるよ」


「ん、分かった」



 そう言って那月はドアを開け、俺と、坂本先輩の姿を見つけると、那月は固まり、そして怒り出した。



「ねぇ、あなた優希と何してるの? 優希になにかしたの?」


「い、いや、俺は何もーー」


「じゃあなんで優希に呼ばれた場所にあなたもいるの?! 優希は私が嫌がってたの知ってるもん!」


「俺はホントに・・・」


「嘘つかないで! ホントの事言ってよ」


「っ・・・」



 あちゃー、まぁ、こうなるか。きっと俺たちが見たやつ以外にも那月になにかしたんだろうな。


 そうでもなきゃここまで拒絶されないだろう。



 坂本先輩も何も言えなくなってる。まぁそりゃそうか。・・・さすがにフォロー入れないとな。



「那月、坂本先輩は俺に何もしてないぞ」


「え? ・・・いや、そう言うように言われてるの? 大丈夫だよ? 私の事はーー」


「那月、本当だ。もし今日坂本先輩が何かしたら俺が止めるから。・・・それに、坂本先輩は那月に謝りたいだけなんだ」


「え? 本当に・・・」



 ようやく少しは信じてくれたようで、その後何かブツブツ呟いていた。


 しばらくして、



「まぁ、優希の事は信じるよ。でも、こっちに近づかないで」


「そうか。ほら、坂本先輩、話したいこと話してください」



 那月は俺の後ろに隠れ、横から顔だけ覗かせている。


 坂本先輩はそう言われてようやく意識がこっちに戻ってきたようである。それまで、死んだ目をしていたので、多分今の話を聞いていなかったのだろう。



「あぁ、うん、ありがとう・・・。まず、中野さん、今まで本当にすいませんでした」


「・・・」


「俺は、人と話すのが苦手で、他の人と話す時に、いつも自分からしても別人のように感じました」


「思ってもいないことが自分の口から出てしまって、酷い事を沢山言ってしまったと思います」


「今回は、優希やその友達に手伝って貰って、ようやく喋れるようになりました。なので今日こうして呼んでもらいました」


「・・・別に許してもらおうと言う訳ではありません。ただ、今までやってしまったことは自分でも酷いと思っていて。・・・それに、いや、何でもないです」



 坂本先輩はゆっくりと、それでもしっかり伝えたいことを話した。


 一応那月は最後まで話を聞いていた。



「もう関わるなと言うなら近づきません。出来ることは何でもします。今まで、すいませんでした」


「・・・」



 那月はなにか考えているようで、ずっと俯いている。


 坂本先輩は頭を下げて止まっている。よく見ると、泣いているようである。


 それもそうだろう。好きな人に近づかない、関わらないと言うのは辛いだろう。それでもそう言ったのは、きっと1番嫌なことをしてしまったという自覚があるのだろう。



 那月はようやく顔を上げ、坂本先輩を見つめ、こう言った。



「分かったよ。私と直接関わらなければもういいから。その代わり、ちょっと手伝ってもらうよ」



 坂本先輩は言われたことがよく分かっていないのか、少し固まっていたが、10秒程して、



「あ、ありがとうございます」



 と言った。


 その後何を手伝ってもらうように言ったのかは分からないが、那月は満足したようだ。



 放課後に那月を呼んでいたので、俺と那月は帰ることにし、坂本先輩に一言だけ言って、坂本先輩をおいて教室を出た。



 ☆☆☆



 坂本先輩side



 許してもらったとは思わない。でも、これでよかったんだと思う。



 でも、中野さんもなかなか酷い人だ。


 俺に、好きな人・・・、優希の事で相談に乗って欲しいなんて。


 まだ俺は中野さんのことが好きなのだ。文句の言える立場では無いが、結構キツい。



 そして、もう1つの方は、これから頑張らなければいけないだろう。


 他の迷惑を掛けた人に謝ること。


 優希たちにはもう手伝ってもらうことは出来ない。というか、全て頼っていても意味が無いと思った。自分で頑張っていくしかない。


 今日優希にフォローされてそう感じた。


 今日のこれが1歩目なのだ。今までの分をしっかり償わなければいけない。



 それに、優希も良い奴だった。最後に、


「またなんかあったら聞きますよ。友達と思ってますから」


 と言ってくれるなんて。


 そうだとしたら、俺はこんないい友達を持って幸せだろう。



 そんな事を考え、俺は優希たちが居なくなった教室を出た。


 今後、二度とこんな事にならないように。そう誓って。



 ☆☆☆



 優希side



 那月と帰っていると、突然こんなことを聞かれた。



「あの、私が坂本くんに言ったこと聞いてて、私の事嫌いになった?」



 何故そんな事を聞いてくるかは分からないが、別に特にそういうことはない。


 坂本先輩を手伝ったのは、自分がした事をしっかり反省し、償おうとしていたから。


 さっき口を挟んだのは、一方的に否定されることはとても辛いから。


 それを知っていたから。ただそれだけである。



 それに、元はと言えば坂本先輩が悪いのだ。



「別に、そんなことは無いぞ」


「ホント? ・・・でもやっぱりちょっとは失望したり?」


「いや別に。多分坂本先輩もなんか他に色々やっちゃったんだろうなと思ったくらいだ。ホントに嫌いな奴に話しかけられたら、俺だって同じようにする・・・かもしれない。元々、坂本先輩が原因だしな」


「そっか! ・・・これで、あの人は変に関わっては来ないよね」



 と言ったあと、俺を見て、



「後ちょっとで夏休みだね! みんなで楽しもうね!」



 と言った。

そろそろ夏休み編です。


誤字脱字、アドバイスなどよろしくお願いします。


R6.3.7追記 皆様、いつも誤字脱字の報告ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] rtタグから来ました(*´ω`*) まだ途中までなのですが、一度感想を失礼します(*^^*) 優希くん今のところ感情の起伏があまりなく、それ故冒頭のショックが大きかったのだろうなと感じ…
[良い点] 先輩が変わろうと努力しているところ、優希君が先輩をフォローすることに心を砕いているところ、那月ちゃんが優希君のフォローを汲んで話を聞いてあげたところとその流れが良かったです。
[一言] 修正後の話での主人公の行動はおせっかいではあってもなんとかギリギリ常識の範囲内には収まってると思う...が、これ普通なら那月から主人公への好感度は下がる気がする 読者視点なら主人公は頼まれた…
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