第13話 勉強会とは?
土曜日。9時50分。
俺は玄関の前でウロウロしていた。
姉ちゃんにはバカにされた。姉ちゃんだって最近人呼んでなくて緊張してるくせに。
しょうがないだろ? 俺、元幼馴染以外のひと家に呼んだことないんだから。
ピーンポーン。
あ、誰か来たみたい。姉ちゃんもこっそり後ろから覗いている。
ドアを開けると石崎と瀬川が立っていた。
「よっ。おはよ」
「今日はよろしくねー」
2人揃って「「お邪魔します」」と言って入ってきた。凄い動きがカクカクしてる。どうした?
「二人共、今日はよろしくね。いつも優希と仲良くしてくれてありがと」
姉ちゃんが那月と一緒に居る時の感じで話すと、スっと2人から力が抜けた。なるほどね。学校のままの姉ちゃんだと怖いよな。
「「よろしくお願いします」」
まだちょっと硬いけど大丈夫そうだ。
二人をリビングに案内し、飲み物を出して那月を待っていた。
ところが、約束の10時を過ぎても全然来る気配がない。10時半を過ぎたところで、さすがにおかしいなと思い、那月にメールを送った。
すると、
『ごめん・・・、ちょっと迷っちゃって・・・。迎えに来てもらってもいい? 場所送るから』
え? 那月の家ってあの公園の近くだよな? あの公園から家まで10分も掛からないぞ?
どうやったら迷子になるのだろうか。学校どうやって行ってんの?
☆☆☆
言われた場所は、うちから15分ほど歩いた所だった。
そこに行くと、しょぼんとした感じの那月が座っていた。
「あ、優希くん・・・。ごめんね、みんなもう来てるよね・・・」
「まぁ、来てはいるけど、多分那月が考えてるような感じにはならないぞ。なんか意気投合したらしくてな。めちゃめちゃ楽しそうだったぞ」
「そう・・・。怒ってないといいんだけど・・・」
「はぁ・・・。こんなこと言っててもしかたないでしょ。行くよ」
「ふぇ?! あ、あぁ、うん」
暗い方に考えても始まらない。・・・かと言って開き直られるのも嫌だが。
いつまでも那月が立とうとしないので、腕を引き上げて立ち上がらせる。そのまま手を掴んで家に向かった。
しばらく歩いていると、那月が所謂「恋人繋ぎ」と言うやつをしてきた。
驚いてそっちを見ると、那月はなんともなさそうな顔をしていた。
「どうしたの? 優希くん。ただ手を繋いでるだけだよ?」
それはそうだが。なんか恥ずかしいじゃん。
「ふふっ。顔真っ赤だよ? 優希くん」
「うるさい。もう行きますよ」
からかわれた事への恥ずかしさと、赤くなった顔を見られたことの恥ずかしさで、俺は顔を逸らした。
この時の俺はすぐ歩き始めてしまって、那月の耳が赤くなっていたのに気付かなかった。
☆☆☆
なんだかんだ手を繋いだまま帰ってきた。
家に入ると、リビングから楽しそうな声が聞こえてきた。
さすがに手を離してリビングに向かった。
中を見ると、3人でスマホゲームをしていた。
おい、一応勉強会だろうに。しかもFPSで、1試合が長いやつ。
「戻ったぞ」
「「「・・・」」」
反応無いんですけど。どんだけ集中してるんだ。
「おい! 戻ったぞ!」
できる限り声を張り上げて言う。さすがに今回は反応があって、姉ちゃんと瀬川がこっちを見た。まあすぐにゲームに戻ったのだが。
石崎の奴は全く反応しなかった。その集中力を勉強に向ければいいのに。いや、ゲームに集中しすぎて勉強忘れてるのかもな。
どうやらゲームを続けるつもりのようなので、しばらく那月と世間話をして待った。
20分ほどたっただろうか。時間は11時半前。もう昼だ。
3人ともゲームが終わったようだ。何となく様子を見るに、惜しい所まで行ったらしい。
「ようやく終わったか。・・・二人はまだだったな。2年の中野那月先輩だ」
「よろしくねー、二人共」
「「よろしくお願いします!」」
姉ちゃんの時と違って元気そうである。だいぶ緊張が解れたようである。
「どうする? もう11時半だぞ。昼飯にするか?」
「いいんじゃない? 私、優希の作った昼ごはん食べたーい」
「えっ! それいいですね! いつもお弁当凄い美味しいですし」
「へー、優希料理できたんだな」
「いいねー、料理出来て・・・」
姉ちゃんの一言で、なんか俺が昼飯を作る雰囲気になってしまった。
瀬川はなんか別の感情混じってないか?
「分かった。とりあえず材料買って来るわ。石崎、付いてきて」
「まさか荷物持ちにするわけじゃないだろうな?」
「その通りだが?」
「はぁ・・・。別に正直に言わなくてもいいものを。・・・俺もなんか買うついでに付いてくからいいよ」
「サンキュ」
まあ、別に全部持たせるつもりではなく、全員分となるとちょっと重くなるかもと思っただけなのだが。
なんか申し訳ないし、何かひとつくらい奢ってやるか。
「じゃあ、行ってくるわ。なんか食べたい物のリクエストとかある?」
「なんでもいいよー、優希に任せる」
出た、困るやつ。ただ、姉ちゃんの場合少し違って、料理そのものではなく、「俺が作った」という点が重要なのだ。
昔、俺が作ったクソ不味いケーキ食べてお腹壊してたっけな。見るからに禍々しいオーラ出てたのだが、「優希が作ったから」という理由で食べたらしい。
他の二人も、特になんでもいいようなので、俺と石崎は近所のスーパーへ向かった。
私は勉強会をやったことがないのですが、ゲームとかしたくなることがあるのでしょうか? 次話、家にいる3人の会話です。
誤字脱字、アドバイスなどよろしくお願いします。