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月不知のセレネー37

 事務所のテーブルが満席になった。元々の空席が埋まるとようやく部署としての体裁が整ったように感じる。

「じゃあ、始めます」

 京極さんは学生が始業前に起立・礼・着席するみたいに言った。その言い方が妙に真面目ったらしくて少しおかしかった。退学明けの不良少女。そんなイメージだ。

「今回はお忙しい中、私たちのために時間を割いていただきありがとうございます。まずは今から配る資料をご覧ください」

 京極さんはそう言ってからジュン君に資料を配るように促した。本当の会議みたいだな……。そんな捻くれたことを思った。行われていること自体はごく普通なのに京極さんが仕切っているだけでだいぶ異様に感じる。

「どうぞ」

「ありがと」

 私はジュンくんから資料を受け取ると彼に笑顔でお礼を伝えた。小間使いお疲れ様。そんな笑顔。

「えーとですね。まずは……」

 京極さんはそう言いながら説明を始めた――。


 それから京極さんは自分たちのスケジュールと鍵山さん、冬木さんのスケジュールについてどうしたいか具体的に説明してくれた。簡単に言えば彼女たちのバンド『バービナ』のツアー日程と鍵山さんとの打ち合わせ日の調整だ。

「――というわけで。今回私たちの大阪公演の三日前にあちらのローカル局で収録があるんですよ。そしてこの日が鍵山さんとの約束の日と被ってしまったんですよね。だから鍵山さんとの最終打ち合わせだけは日にちをずらしたいんです。一応、鍵山さんたちには打診しておきました。返答はまだですがおそらく問題ないと思います」

 京極さんは駆け足気味に説明すると「どうでしょう?」と言って私たちの顔を見渡した。お伺いを立てるみたいに。『これで問題ないっしょ』って確認するみたいに。

 でも私にはこの日程に少なからず穴があるように感じていた。穴というには大きすぎる。致命的欠陥が彼女の立てた予定にはあるのだ。

 だから私は「そうね。もしそれで締め切りに間に合うならいいと思う。でも京極さん、本当に大丈夫なの? 鍵山さんからの了解はまだ完全には得られてないのよね?」と京極さんに聞き返した。我ながら性格の悪い詰め方だと思う。

「そうですね……。鍵山さんの予定は大丈夫なんですが遠藤さんがまだはっきりしないんです。だから最悪の場合はツアー前日に私が甲府に行くことになると思います。……かなりギリギリになるのでそれは避けたいですが」

 京極さんはそう言うと眉間に皺を寄せた。

「あのね京極さん。ツアーの前日は調整日なの。心身を整える日よ。そのためにリハだって二日前にやることにしてるでしょ? だから鍵山さんたちの予定が崩れたからって甲府行くのはどうかと思うよ?」

「そう……ですね」

 京極さんは私のド正論に参ったのか「うーん」と唸った。やれやれ。やはり京極さんはこの手の事務的な作業は苦手のようだ。


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