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月不知のセレネー22

 下高井戸。そこはとてもレトロな街だった。昭和情緒なんて言葉があるけれどそれを体現したような街だと思う。。精肉店に八百屋、鮮魚店に至るまで昭和で時が止まってしまったような外観をしている。

 そんな街を抜けて冬木さんの家に向かう。京王線の踏切を渡り、商店街を抜け、裏路地を進んだ。

「本当にこんなとこに冬木紫苑が住んでんのかな? なんか信じらんないね」

 柏木くんは裏路地の家々を眺めながらそんなことを呟いた。

「そうね……。なんて言うか。冬木さんっぽくはないよね」

「そうそう! なんかさ、冬木紫苑ってめっちゃ金持ちそうじゃない? だからイメージが違うって言うか……」

 柏木くんの言いたいことはとてもよく分かる。確かに冬木さんクラスの作家の家がこの地区にあるのは違和感しかないのだ。私だって彼女の住まいはもっと高級住宅街にあるイメージを持っていたし、柏木くんがそう思うのは当然だろう。

「まぁ、そうよね。あ! でもね柏木くん……」

「はいはい、本人の前では言わないよ。俺だって長いこと営業やってきたんだ。てか陽子ちゃんより外回りしてきたと思うよ? 俺だってそこまで馬鹿じゃないから安心していいよ」

 私の言いたいことが分かったのか彼は私の懸念に全て答えてくれた。思ったより馬鹿じゃないかも……。と変に関心する。

「そう、ならいいけど」

「うん。安心してくだせぇ」

 柏木くんはおどけたように言うと「にゃは」っと笑った。気持ちが悪い。やっぱりこの人は馬鹿かも知れないと思った――。


 裏路地を抜けると大きな公団住宅の団地が見えた。どうやらあの団地が冬木さんの家らしい。

「へー。本当に普通なとこ住んでんだね」

「うん。私の実家みたい……」

「ハハハ、俺も同じこと思ったよ。つか陽子ちゃんも団地だったんだ?」

「そうだよ。ま、ウチの場合は公団住宅じゃなくて社宅だったけどね」

 そう言いながら改めてその団地を確認する。決してボロくはない。普通。本当に一般的な公団住宅のようだ。

「んじゃ。行きますか」

 柏木くんはそう言ってネクタイを強く締め直した。最初からきっちり結んでおけばいいのに。


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