〈忘れ物Street〉
しばらく歩くと道に光る物が落ちていた。アンナはそれを拾い上げるとそれをボクに渡した。光っていたのはビン。中には錠剤が入っていた。
「お薬ちゃんと持ってなきゃダメでしょアンヌ。大事な物なんだから」
「アンヌ」・・・一体誰なんだ。それにこれはボクのじゃない。
「アンナ、コレボクのじゃ・・・」
「あ!このカバン、アンヌのじゃんか!落としたの?しょうがないなー」
知らないカバン。ボクのじゃない。
「アンヌ、ちゃんとカバンにお薬入れてね」
「アンナまってよ!」
声を掛けてもどんどん進んでいく。アンナ。どこに行くのさ、手は握ってる放さない。けど・・・
また何か落ちている。今度は本だ。ボロボロになっている。
「二人で一緒に読んだからボロボロだねぇ」
知らない本。内容もボクは知らない・・・。ねぇ、アンナ。君の瞳は誰を映してるの?「アンヌ」って奴?それって誰?ボクは「アンリ」だよ・・・
先が見えない真っ暗な道。終わりはいつなのか。ボクはこれ以上アンナがおかしくなるんじゃないかと恐れながら進み続けた。それから落とし物を3つ。ぬいぐるみにヘアピン、スケッチブックを拾った。
「!見えてきた!」
ハートの城が見えた。やっと終わった・・・。そう安堵したのもつかの間。城の前に広がる広間に奴がいた。
「まだいたんだ」
「お前っ!!」
「アンヌ!」
ア、ン、ヌ・・・。こいつが「アンヌ」・・・?こいつは白ウサギ。そのはずだろ?
「アンナ!ダメだそいつは!君の夢をっ!!」
・・・ボクは何を言おうとした・・・?あいつは白ウサギ。でもそれ以上に・・・それ以前に・・・奴は・・・
「落ち着きなよ自称アンリくん」
チェシャネコ!なんでこいつが・・・
「ほら、これ、忘れ物」
いつの間にか荷物が消えてボクの手に画用紙が渡される。画用紙には黒い髪に青い目。ボクだ。間違いなくボクが描かれていた。
「君の忘れ物だよ」
「・・・チガウ・・・。ボクハ・・・「アンリ」・・・。コノ落書キジャナイ」
「・・・ふ~ん。アンナ、あいつ誰?」
白ウサギ・・・アンヌといったか?そいつがボクを指差す。アンナがボクを知らないはずないじゃないか。だって、ボクらずっと一緒だったじゃないか。ね?アンナ・・。
「あれ・・・誰だっけ・・・?」
・・・嘘、デショ?ズット一緒ダッタ。何度モ呼んでクレタジャン・・・!ネェ、アンナ、呼ンデヨ。ボクヲ呼ンデヨ!「アンリ、アンリ」!「アンリ」ッテ呼ンデヨ!!
「ごめんなさい・・・。あなた誰だっけ?」
―君ガ付ケテクレタ名前ジャナイカ・・・―
「なぜ、君はアンナに固執するか分かってる?」
―固執・・・。何ノコト・・・?―
「お前はアンナと違うだろ?」
―知ラナイ・・・―
「アンナが光ならお前は闇でしょ?」
―チガウ・・。ボクハ、―
「君はただの闇」
―チガウ―
「お前はただの幻」
―チガウ!―
「君はただのまやかし」
―チガウ!!ボクハココニ居ル!ココニ存在シテル!ボクハ、ボクハ ボクハ ボクハ ボクハ ボクハ ボクハ ボクハ ボクハ ボクハ ボクハッ!!!―
「お前は存在なんてしてない」
『だって君はただの夢なんだから』
こいつらの言葉に声が出ない。彼は怯えたような声を断続的に発し出した。
「ずっとアンナを閉じ込めていたね」
―ァ・・アァ・・・イヤダ・・・―
「アンナを返してもらうよ」
―イヤダ・・・イヤダ・・・―
ガタガタと震える。いやだ。消える。消える。消えてしまう。
―ァ・・・ン・・・ナ・・・―
「・・・ありがとう。そしてさようなら。わたしの夢」
―イヤダァァァアアアアアアアアア!!!―
ボクハ タダ 寂シカッタ ダケナノニ・・・。君ガ 見セテクレタ 夢ガ 好キダッタ ダケナノニ・・・。君ガ イテクレタラ ソレダケデ・・・。ボクハ 寂シク ナカッタ・・・。ボクニ 名前ヲ 付ケテクレタ時 スッゴク 嬉しくて、ズット呼んでてテホシカッタ・・・。
君を閉じ込めたのは悪いと思ったけど、君は嫌とは言わなかったから・・・。
ボクは・・・ボクは・・・ボクは・・・
君のことがただ大好きだっただけなんだ。
暗い闇。一人だとさみしい。さみしいよ。そう感じながらも闇に包まれて、彼は消えていった。




