6話 アベル達のその後
付け足ししました。
ロンダール伯爵家を追い出されたアベル達4人。
いくら叫んでも門は閉じられたままだ。
「おい!急に追い出しやがって!これからどうしろってんだ!」
アベルが門を守る兵に怒鳴った。
ガシャンと門を蹴る。
「そうよ!私のドレス、化粧道具を寄越してよ!宝石もよ!」
前ロンダール伯爵夫人も兵の袖を掴んで言った。
「こ、こんなにすぐに、何も持たせず追い出すことはないだろう?どうにかならんか」
前伯爵が門兵に言った。その兵は老兵で、長く仕えている人間だった。
しばらくすると、ロンダール家の騎士が出て来た。
「当主様と若奥様のご慈悲だ。受け取れ」
騎士は銀貨と銅貨がたくさん入った袋と、数枚の金貨の入った袋をロンダール前伯爵に渡した。
下働きの男が、トランクを4つ運んでアベル達の前に置いた。
「身の回りの品だ。これ以上騒ぐなら、捕縛だ。お慈悲の品を持って去れ」
騎士が剣を抜いた。
アベル達は慌ててトランクを持ち、引きずりながらロンダール伯爵家前から去った。
「くそっ!自分の家から追い出されるなんて。訴えてやる!」
アベルが悔しそうに言う。
「…無駄だ。わしらは王家からも、法律からも見捨てられたんだ。あの書類…。全て用意されていた。
サインしなければ、牢獄に繋がれ、その後は鉱山で死ぬまで働けと言われたんだ。
こうなっては仕方がない。親戚を頼るか…」
ロンダール前伯爵は肩を落とし、項垂れて言った。
貸し馬車屋へ行き、御者と馬車を借りた彼ら。
3人とも不平不満で罵る言葉を垂れ流していた。使用人達、メリッサとカイル達への文句だ。
ただ、リリィだけは無言で彼らについてきていた。
親戚の家を一軒ずつ回ったロンダール前伯爵達。全ての家から門前払いされた。
行く当てのない4人は、仕方なく街の高級ホテルに泊まった。
アベルとリリィで一部屋に。
ロンダール前伯爵夫妻と別れて部屋に入った。
部屋に入るなり、アベルはリリィの腕を掴んだ。
「おい、宝石を返せ」
「えっ、あなたが私にくれたんだから、私のよ!返せってなんでよ!」
「元は俺のだ。金が要るんだよ!」
アベルはリリィの腕を掴んだ手に力をこめた。リリィの腕をギりギりと締め上げた。
「痛い!わかったわよ。渡すから離して!」
リリィは渋々ネックレスやイヤリングを外し、アベルに渡した。
「指輪も寄越せ」
リリィは両手に指輪をしていた。結婚指輪の代わりに、とアベルから貰ったもの以外は渡した。
「全部だ!」
しかし、アベルは容赦なく全てリリィから奪い取った。
「ふん、風呂に入る。明日は質屋に行く。売れそうなものをトランクから出しておけ。
イライラするから今日は思い切り可愛がってやるよ」
アベルが風呂に入ると、リリィは急いでトランクを開けた。
自分のトランクから、金目の物を取り出して手提げカバン2つに入れた。手当たり次第に詰め込んだ。
高級レースのハンカチ。手袋、髪留め。下着に衣類。リリィの持ち物の中では質素な部類だが、高級品だ。売れる。身に付けれるものは身に付けた。帽子をかぶる。
音を立てないようにドアを開けて、部屋から逃げ出した。
ロンダール伯爵家の門前で、アベル達が屋敷に向かって叫んでいる間、リリィは身に付けていた宝飾品を少し外した。大きな目立つものはつけたまま。小さいものを外した。
全て外せば、バレる。
ブローチも素早く下着に付け替えた。指輪も2つ、見つけられる前に胸の谷間に滑り込ませた。
リリィのドレスの下には、ネックレスがあと2本ある。ブレスレットもポケットの中だ。
「あいつら、もうおしまいだわ。一緒にいたらお先真っ暗。トンズラに限るわ」
リリィは呟いて、夜の街に消えた。
風呂から出たらリリィがおらず、アベルは激怒した。
「くそっ!逃げやがった!娼館に売るのもいいし、召使いに使えたのに!」
翌日、アベル達は貸し屋敷を借りることにした。
「貸し部屋にしたらどうです?」
紹介屋はそう勧めた。
「はぁ?俺達に狭いアパートに住めと言うのか?
それより使用人も紹介しろ」
大きな屋敷に住み始めたアベル親子。
アベルは夜になると、いつものように賭博場に出掛けた。
しかし、入り口で止められた。
「それなりの方でなくては、お入れすることは出来ません。…お客様のためでございます」
「はぁ?俺は常連だ。通せよ!」
「おっ、アベルじゃん。いいよ、コイツ通してやって」
顔馴染みの友人がアベルを賭博場に入れた。
その後アベルはしこたま飲んだ。酔っ払った。
賭けては負けを繰り返し、多額の借金を作った。
「へへっ、アベルー、払えんのか?もうロンダール伯爵嫡子じゃなくなったんだろ?
…リリィをくれたら払ってやるよ?」
アペルを賭博場に入れた友人がアベルの肩に手を置いてニヤニヤしながら聞いた。
「わかったよ。リリィを譲る」
「よし!俺が払ってやる!約束だからなー」
賭博場を友人と出るアベル。
「どこに住んでるんだ?」
アベルは友人を貸し屋敷に案内した。
「とりあえず、しばらく俺と他のやつらで、リリィを楽しむぜ。その後は娼館に売っぱらう。へへっ。今晩は俺もここに泊まる。早くリリィを呼べ」
アベルの友人は上機嫌だ。
「すまん。リリィは逃げた。
さっきの借金はツケといてくれ。勝ったら返す」
アベルがヘラヘラ笑って言った。
「……は?…なに言ってんの?…お前、俺を騙したんだな?ふーん。
まぁいい。じゃあ、コレにサインしろ」
アベルは友人の出した借用書にサインした。
友人は帰り、アベルは使用人に酒を持ってこさせ、さらに飲んで寝た。
翌日の夜、友人が来宅した。人相の悪い武装した集団を連れて。
「アベルー、ここんちの全財産、俺のだから。この屋敷、借りてるだけらしいな?
取れるもんないなあ。まけてやるよ。トモダチだからな。ほら、何も持たず、出てけや」
アベル、ロンダール前伯爵夫妻は武装集団に着の身着のまま追い出された。
「アベル!お前、何てことをしたんだ!この阿呆が!」
「何なの?なんで、全部取られるのよ!どうして私のアクセサリーまで取り上げられるのよ?」
アベルは真っ青になった。言葉も出ない。
ロンダール伯爵家を追い出されてから、彼らは数日で一文無しになった。
その後、王都の片隅で乞食になったアベル達。
ある日、ロンダール伯爵家の紋章付きの馬車から、美男美女の夫婦が下りてきたのをアベルは見た。
高級レストランへ仲良く入っていった。
「ようこそロンダール伯爵夫妻様」
店員が恭しく2人を案内する。
「メリッサ、足元に気をつけて。お腹に子供がいるんだから」
「心配症ね、カイルは」
美女が言った。
仲良さげな麗しい夫婦。
アベルは夫妻を見つめた。
カイルは見違えるほど立派になっている。
しかし、この美女は誰だ?メリッサだと?別人だ。
アベルは虚ろな目で2人を眺めていた。
「おい、そこの!ここは高級レストランなんだ。迷惑だからどっか行ってくれ」
店を護る護衛がアベルを追い払おうとする。
「すいやせん。あの、さっきの貴族様は、ロンダール伯爵様ですか?奥方、すごい美人でしたね」
「目の保養だろ。お前には一生手の届かない方だよ、メリッサ様は。旦那が交代して良かったよなぁ。バカで有名な男で廃嫡されたんだってな、前の旦那さん。
おっと、無駄話だ。ほら、どっか行け」
あれが、メリッサだと??
……魔法だ!魔道具で姿を変えていたんだ!
アベルは呆然としながら、ヨロヨロと裏道に入っていった。
アベルに相応しい道をアベルは歩く。
その先の、暗くじめじめし、ネズミや害虫のいる寝床へと帰るために。
ご要望を受け、書いてみました。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。




