表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
微子の憂鬱外伝、召奭伝  作者: 日和見


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/6

同盟締結

召奭伝 第6話明朝、私は再び姜子牙を執務室へと呼び戻した。夜通し考え抜いた、我が召国の冷徹な結論を彼に告げるためだ。「姜子牙殿、昨日の提案だが……。悪いが、我らが反商連合の同盟に加わるわけにはいかぬ」私はあえて表情を崩さず、淡々と断りの言葉を口にした。「あまりにも、商という国は巨大すぎるのだ。動員される兵力、蓄えられた富、どれをとっても桁が違う。我が召国の民の命を、勝率の極めて低い『博打』に賭けることは、君主として到底できん」断られたというのに、姜子牙の表情はいささかも動かなかった。すべては彼の予想通りだったのか、むしろその口元には、静かで落ち着いた笑みすら浮かんでいる。「ふふ、召伯殿がそう仰ることは重々承知しております。ですが……」姜子牙は静かに前へ進み出ると、その双眸に底知れぬ光を宿らせた。「商がこのまま東方遠征を終え、さらに国力を増せば、最早我らが抗う術は完全に失われます。現にあの王朝は近年、あからさまに中央集権を進め、諸侯の力を削ぎ落としている。……東方の次が、どこになるかはお分かりのはずだ。西方か、南方か、はたまた北方か。いずれにせよ、諸侯の安泰など遠い過去の話にございますよ」「……ッ」私は内心で舌を巻いた。昨晩、私が重臣たちと深夜まで語り明かし、最も懸念していた「商の侵食」という未来の恐怖。この化け物は、まるで昨夜の軍議を特等席で見ていたかのように、的確に私の急所を突いてきたのだ。だが、いくら将来の危険性を説かれたところで、はいそうですかと首を縦に振るわけにはいかない。現時点での圧倒的な戦力差という現実が、私の足をすくませる。しかし、姜子牙の攻勢はそれだけでは終わらなかった。「……ならば、一つ。召伯殿のその慎重な天秤をひっくり返す『事実』をお教えいたしましょう」姜子牙は、さらに声を潜めた。その声は、まるで耳元で囁かれる甘美な毒のようであった。「商は、決して盤石ではございません。その巨大な巨体の内側から、すでに崩壊の種は蒔かれております。……現に、商の最高中枢にいる高官のひとりは、すでに私の掌の上。彼ら自身の手で、商の防衛網を丸裸にするための『仕掛け』は、すでに遅滞なく動き出しております」「何だと……!?」背筋に、凍り付くような戦慄が走った。商の最高幹部を、すでにこの男が操っているというのか。目の前の男が仕掛けている謀略の深さは、私の想像を遥かに超越していた。商は見た目ほど安泰ではない。もし商が内側から自壊を始めるのであれば、九万対二十万という絶望的な戦力差すら、一気にひっくり返る勝機が生まれる。だが同時に、もしここで周の誘いを断れば、商が滅び、周が新たな覇者となった新時代において、召国には破滅の未来しか残されていない。乗るべきか。いや、乗らざるを得ないのだ。私は深く、深く目を閉じ、激しく交錯する思惑の海に身を投じた。長い沈黙ののち、目を開けた私は、冷徹な覚悟とともに声を絞り出した。「……わかりました、姜子牙殿。この召国、その同盟に加わりましょう」姜子牙の口元が、満足げに歪む。「ただし――」私は人差し指を立て、彼を鋭く睨み据えた。「あくまでも『内密』に、だ。表立って商を刺激するような真似は一切せぬ。我が国が兵を動かすのは、商の命運が尽きるその瞬間のみ。万が一、この計画が商に露呈したとしても、我が国は一切関知せぬという『逃げ道』だけは残させてもらう」これ以上ない、ずる賢く、現実的な外交の条件。だが、姜子牙はそれすらも織り込み済みだったのか、深く深く一礼した。「ええ、それで結構にございます。……賢明なるご決断、感謝いたしますぞ、召伯殿」こうして、我が召国の進むべき方針は決定された。天下を揺るがす易姓革命の大渦へと、私たちは静かに足を踏み入れたのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ